チベット声楽家・バイマーヤンジンさん
健やか

「助けてください」チベット青年の涙 必要なのは金銭的支援だけではない【テレビ寺子屋】

日本に住むチベット出身の女性声楽家は、故郷で30年近く学校建設を続けて来ました。ある日、「助けてください」と泣きながらやってきた青年は、貧困で卒業間近の医学部の学費を滞納。そのとき女性がかけた言葉が、その後の彼の人生を左右しました。

左)テレビ静岡・北村花絵アナウンサー 右)チベット声楽家・バイマーヤンジンさん

テレビ静岡で2026年3月1日に放送されたテレビ寺子屋では、チベット声楽家のバイマーヤンジンさんが、故郷チベットでの学校建設と学生支援を通じて出会った、ひとりの青年の心の成長について語りました。

貧しくて学費滞納 青年の涙ながらの訴え

チベット声楽家・バイマーヤンジンさん:
故郷チベットで学校建設を30年近く続けてきました。これまでに小学校と中学校、合わせて10校を建設しましたが、教師不足にずっと悩まされてきました。

チベット声楽家・バイマーヤンジンさん

そこで、将来の先生が育つようにチベットの3つの大学で奨学金制度を立ち上げ、今までに支援した人は数百人にのぼります。その中でも特に心に残っている学生のお話です。

私は支援する学生を決めるとき、大学側が選出した生徒の資料を読み、直接会って話をして決めます。

ところが、ある時ひとりの青年が私を探して突然訪ねてきたのです。私がチベットに来ていると知り、街中のホテルを探し回った彼は、会うなり涙を流しながら訴えてきました。

イメージ画像 涙

「最後の希望だと思ってヤンジンさんのところに来ました。助けてください」。彼はチベット医学大学を卒業間近でしたが、家庭がとても貧しかったため学費を滞納してしまい、卒業証書と学位をもらえずにいたのです。

「人を恨んではいけない」母の言葉を伝え続けて

私が支援することで卒業証書と学位をもらいましたが、私は彼に深い心の闇を感じていました。

「貧しいがために周囲から差別を受けてきた。大学も社会も信用できない」と彼は言いました。私自身も故郷を離れ大学で学んでいた時に貧しさから差別を受けてきたので、彼がもつ劣等感がよくわかりました。

イメージ画像:不信感

私は、自分が学生の頃に母から言われた言葉を彼に伝え続けました。

「人を恨んではいけない。人を恨んでいる時、自分の顔は不細工になっているよ」。何度も会って話をするうちに、だんだんと彼に笑顔が見られるようになりました。

チベット声楽家・バイマーヤンジンさん

「本当に辛かったでしょう。それを力にして頑張って、将来自分が誰かの心を温められるようになってください。」と私は伝えました。

20年ぶりの再会で見た笑顔と成長

その後、彼は大学院に進み、卒業後は故郷に帰って医者になりました。20年ぶりに会ったら、なんと大学の教授になっていました。結婚して子供にも恵まれ、とてもいい笑顔をするようになっていました。

イメージ画像 笑顔

「ヤンジンさんに言われたことを私は忘れていません。今は時間があれば近くの診療所でボランティアをしています。あなたのおかげで、私は幸せになりました」。この言葉を聞いて、私は嬉しくて涙が出ました。

金銭的な支援をするだけではなくて、愛情を持ち、「頑張って支援するから、あなたも頑張ってほしい」と伝える。そういう気持ちが通じ合っていることが大事だと思います。

支援を受けた子供たちが、その気持ちも一緒に受け取って、「また次の世代の子供たちのために」と思えるような、温かい世の中になってほしい。故郷チベットのために、これからも頑張っていきたいと思います。

チベット声楽家・バイマーヤンジンさん

バイマーヤンジン:チベット・アムド地方出身。中国国立四川音楽大学卒業。名前はチベット語で「蓮の花にのった音楽の神様」の意味。1994年来日後、全国でコンサートや講演を行い、故郷チベットの学校建設や学生支援にも力を注いでいる。

※この記事は2026年3月1日にテレビ静岡で放送された「テレビ寺子屋」をもとにしています。

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