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静岡・富士市で見つけた「駿府大御所刀工館」という珍しい美術館。刀を間近で楽しめると、全国各地から刀剣ファンが訪れる、知る人ぞ知る人気スポットです。
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いつも見慣れた街並みも裏道を巡れば、そこはまるで別世界。静岡県民も必見の裏スポットをお散歩します。今回は富士山のお膝もと・富士市。都市開発が進みながらも、どこか昔懐かしさを感じるJR富士駅周辺を散策しています。
日本刀・美人画・掛け軸を展示する小さな美術館
JR富士駅周辺を散策していると、「刀の展示会開催中」という看板を見つけました。
立ち寄ったのは、JR富士駅北口から西へ徒歩5分ほどの場所にある「駿府大御所刀工館(すんぷおおごしょとうこうかん)」です。
ここは、日本刀・美人画・掛け軸の展示を行う私立美術館です。

館内へ入ると、日本刀の展示室と美人画の展示室に分かれていました。
日本刀の展示室には美しく輝く刀身がずらりと並んでいて、ファンにとって夢のような空間が広がっています。

全国から刀剣ファンが訪れる人気スポット
「駿府大御所刀工館」では、古墳時代の刀から現代の刀まで、館長の吉田知己さんが20年かけて集めた刀剣や資料が多数展示されているんです。
刀を間近で楽しめると全国各地から刀剣ファンが訪れる、知る人ぞ知る人気スポットです。

吉田さんが、特におすすめの展示を紹介してくれました。
現在の刀と古墳時代中期の直刀
まずは現代の刀。内田義基(よしもと)刀匠の短刀で、2012年に作られたものです。
研ぎ澄まされ、首を落とすこともできるほどの切れ味だと言います。

続いて、熊本県の江田船山古墳で出土したと言われる古墳時代中期の直刀(ちょくとう)が展示されていました。サビで覆われていて、歴史の重みを感じます。
駿府大御所刀工館・吉田知己さん:
これは5世紀の出土品です。約1550年前のものです。サビていますが、黒サビで安定しています

1500年以上前の刀が今もこうして残っていることに驚きました。黒サビで安定しているので、研げば輝くそうです。
平安時代の刀は馬上で使うもの
展示ケースには平安時代・室町時代・江戸時代など、それぞれの時代に生み出された刀身(とうしん)が、丁寧に展示されています。
駿府大御所刀工館・吉田知己さん:
これは平安時代末期の刀、源平合戦の頃ですね。片手で馬上で持つ刀なので、女性でも片手で持てます

平安時代の刀は、馬上で扱うため細身で軽く作られているんです。
また源平合戦の頃、武士たちは大きなよろいを着けて戦っていました。そのため、急所が限られていて、刀で喉を突くことが主な攻撃方法だったそうです。
シーズンごとに変わる展示内容
さらに驚いたのが、季節ごとに展示内容が変わることです。
駿府大御所刀工館・吉田知己さん:
秋冬の展示が始まりました。シーズンごとに企画を変えていて、今回は京都の刀なんです
秋冬展示は「京都の刀」がテーマ。鎌倉時代から幕末までに栄えた主要流派の名工作品が展示されています。

吉田さんが所有する刀は、なんと約200本。展示されていない刀も多数あるそうです。豊富なコレクションがあるからこそ、春夏秋冬シーズンごとにさまざまなテーマで展示ができるんです。
珍しい刀を発見! 刀に込められた和歌
展示ケースをよく見ると、刀身に和歌が刻まれているものもありました。
「やきたちは さやにおさめてますらおの こころますます とくべかりけり」という文字が書かれています。

意味は「太刀を鞘(さや)に納めるように、激しい心を抑えて、さらに尊い心を身につけよ」。
刀に和歌を添えるという、日本ならではの美意識が感じられます。
徳川家康ゆかりの刀
展示されている刀の中には、徳川家康にゆかりのあるものもありました。
江戸時代初期の刀「以南蛮鉄於武州江戸越前康継」は、徳川家康お抱えの刀工・越前康継の作品です。
ナカゴ(柄に隠れている部分)には、葵の御紋が記されています。

なぜ柄を外して展示するのか
館内を見て回ると、柄(つか)が外された状態で展示されている刀が多いことに気付きました。
駿府大御所刀工館・吉田知己さん:
普段は全部ついていますが、展示場は大抵全部見えるように裸にするんです

柄を外して展示するのは、美しい全体像を見せることのほかに、ナカゴ(柄に隠れている部分)のサビ具合でどの時代の刀なのかを判断するからなのだそうです。
刀を鑑賞する際は、ナカゴのサビも必見です。

「駿府大御所刀工館」は、長い年月を経て残ってきた刀剣の数々を、間近で見ることができる夢のような場所でした。
春夏秋冬シーズンごとのテーマ展示で、何度訪れても新たな発見があるのも魅力。日本刀の持つ美しさと歴史の重みを、ぜひその目で確かめてみてはいかがでしょうか。
■店名 駿府大御所刀工館
■住所 静岡県富士市元町9-5
■開館時間 11:00〜17:00
■入館料 刀工館・美人画館それぞれ一般500円・高大専門生300円・小中学生200円 ※両館入館する場合は合計から100円割引
■定休 月・火・水
■問合せ 0545-60-6300
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