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みなさんは嫌な記憶や失敗した出来事を忘れられずにいませんか。「人生の8割は忘れていい」と話すのは長年地域医療に携わってきた医師です。人生をもっと気楽に、もっと面白くする「忘れる力」をご紹介します。
テレビ静岡で5月14日に放送された「テレビ寺子屋」では、医師で作家の鎌田實さんが、人生を楽にする「忘れる力」について語りました。
忘れてもいい失敗談が60個も
医師・鎌田實さん:
僕は74歳なのですが、74年生きてくると失敗談もありますし、恥ずかしいことをしてしまったこともあります。忘れていいことが結構あるなと思い書き出してみたら、60個もありました。
嫌な人間関係とか他人の評価なども、忘れちゃっていいんじゃないかと思います。
生きる自信がわいてきて、もっと楽しく人生が送れるのではないでしょうか。
「忘れる力」、言い換えると「忘却力」についてお話しします。
年を取ると忘れやすくなっていくというのは確かですが、僕たちは「忘れていいもの」を「忘れる力」が無意識に働いています。
もっと上手に意識的に忘れていったら、人生はすごく楽になる。生きることにもっと積極的になり、面白くなっていくのだと思います。
記憶しなくいいものは自然と忘れる
記憶するためには①覚える(記銘)=脳の中にたたきこむ、②覚えている(記憶を保持する)、③ときどき思い出す(想起する)。
記銘して、保持して、ときどき思い出すことによって、僕たちの記憶は成り立っていくわけです。ときどき思い出さないということは、結局あまり大事なことでないから、忘れていくんです。
みな「忘れる」ことばかり気にかけて、認知症になりかかっているのではないかと心配しますが、自然な私たちの取捨選択が、「記憶しなくていいもの」を「忘れて」いるのです。
つらい現実を忘れるには
つらい現実があったときにどうやって忘れるかと言うと、「ちょいホ」「ちょいニヤ」「ちょいウマ」が大切だと僕は言っています。
「ちょいホ」とは、少しだけ現実を忘れてホッとする時間。「ちょいニヤ」は、大笑いはできないけれどニヤッとする時間。そして「ちょいウマ」は心が弾むような食事。心を回復するための時間です。
東日本大震災が起きたあと、福島県の南相馬に救援に入りました。震災後、一度も温かいものを食べていないという話でしたので、温かいレトルトのおでんを食べてもらいました。
そして避難所で出すかどうかけっこう議論はしたのですが、「コップ一杯だけ」という約束でビールを用意しました。すると漁師さんたちが、「いやあ、生きてるなって、やっと感じた」と言うんです。
被災地だけでなく、失恋をしたり嫌なことがあったりしたときに、「おいしいものをちょっと食べに行くか」と、家族で行くのはとても大事なことです。
つらい現実はなかなか忘れられません。本当に解決するには何年もかかるかもしれないけれど、「みんなでおいしいものを食べてみようか」という気持ちが大切だということです。
大事なのは2割だけ「ニッパチの法則」
パレートというイタリアの経済学者が提唱した、大事なことは2割なのだという「2・8(ニッパチ)の法則」があります。
人生の8割はうまくいかなくても、場合によっては忘却力で忘れても、2割に集中して一生懸命生きれば、面白い人生が待っているのではないかと思います。
鎌田實:1948年東京生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業。諏訪中央病院名誉院長。地域医療に携わる傍ら、イラクや東日本の被災地支援にも取り組む。「がんばらない」「大・大往生」など著書多数。
※この記事は5月14日にテレビ静岡で放送された「テレビ寺子屋」をもとにしています。