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全国各地で語り継がれる水辺の妖怪カッパの伝説。静岡市清水区の巴川周辺にも、カッパにまつわる伝説が残っていますが、その真相は“カッパではなかった”という意外な説が。地元の人たちの心優しい物語に迫りました。
【画像】記事中に掲載していない画像も! この記事のギャラリーページへ巴川で水辺の妖怪カッパを追え!

静岡市清水区の街中を流れ、駿河湾に注ぐ巴川(ともえがわ)。
まずは、なんとなくカッパがいそうな雰囲気の漂う川辺を歩いて、手がかりを探します。
巴川沿いを歩いていると、柱の上にちょこんと座り、川の方をぼんやりと眺める小さなカッパの像を見つけました。

そのすぐそばの橋の親柱にもカッパの像が。
こちらは先ほどの倍以上の大きさで、手にキュウリを握り、四つんばいで遠くを見つめています。

その橋を渡ると、中央の欄干にはカッパが描かれた円形のレリーフが飾られています。
雨の中、葉っぱの傘をさしながら歩くカッパたちの姿でした。

さらによく見ると、橋の四隅の親柱には、それぞれカッパがいました。
何かを叫んでいるように見えるカッパ、頭にハスの葉を乗せたカッパなど、それぞれ表情の異なるカッパの像が設置されています。
いたるところにカッパの姿がある橋だったのです。

橋の名前を確認すると「稚児橋」とありました。
子供のような体型のカッパなので「稚児」っぽいと言えるかもしれません。この橋、巴川のカッパ伝説と関係が深そうです。

■スポット名 稚児橋
■住所 静岡市清水区江尻町・入江
カッパグッズがあふれるお店
調査を続けると、稚児橋のすぐ北側にあるお店の壁に、カッパが踊るイラストが描かれた看板を発見しました。
「創業天明元年 甘静舎」と書かれた店は、どうやら和菓子店のようです。

このお店なら、きっと巴川のカッパ伝説について詳しいはず!
そう思って店内をのぞくと、和菓子店にもかかわらず、なんとカッパグッズであふれていました。

店内の端から端まで、カッパの風鈴にカッパの巾着、さまざまな種類のカッパの置物、そしてカッパのお面まであります。
驚くほどのカッパグッズが所狭しと並んでいました。

和菓子店「甘静舎(かんせいしゃ)」は、創業が江戸時代という老舗。地元の人からカッパの店と呼ばれています。
江戸時代創業の老舗が語るカッパ伝説
このお店の人なら巴川のカッパ伝説を知っているに違いありません。
甘静舎の佐々木温恵さんによると、巴川に架かった最初の橋は、1600年頃に完成した「稚児橋」だったそうです。

その橋が架けられた時に「渡り初め」が行われました。
渡り初めとは橋の完成を祝う式典のこと。かつては高齢の夫婦が最初に橋を渡ると縁起が良いとされていました。
甘静舎・佐々木温恵さん:
渡り初めで(高齢の夫婦が)さあ、渡りましょうという時に下から子供がちょこちょこって出て最初に渡ってしまったんですね。そんな大切な時に子供が先に渡ってしまったんです

その子供はカッパだったのではないか、という伝説なのですが、佐々木さんは真相について何年か前に裏の説を耳にしたそうです。
甘静舎・佐々木温恵さん:
実際は近隣に住む子供だったと思われます。そんな大切な時に子供が先に渡ってしまった。子供が罰せられることを避けるために村の人が集まって「カッパの話にしよう」ということになったと
徳川家康公の命で架けられた橋だけに、厳しいお咎めがあるかもしれません。

元々、巴川周辺では数多くの河童の目撃情報があったそうです。
渡り初めの儀式の邪魔をしてしまった子供を守るために、橋の近くに住む人々がカッパの仕業に仕立てた。それが伝説の真相だったというのです。
甘静舎・佐々木温恵さん:
この辺りの人たちの温かい心を感じますよね

このことで、元々「江尻橋(えじりばし)」という名前だった橋が「稚児橋(ちごばし)」に改められたそうです。
江戸時代から続く「河童まんじゅう」の味
甘静舎の店内は入口からさまざまなカッパグッズであふれていますが、もちろん、お店自慢のお菓子にもカッパが登場します。
それが、看板商品の「河童まんじゅう(こしあん・170円)」です。

江戸時代から続くものですが、今の店主がリニューアルした人気商品です。
種類は、つぶあん・お茶・みかん・ごま・こしあん・しろあんと豊富です。

思わず「食べるのがもったいない」と感じるほど、かわいらしいおまんじゅう。
練り切りでカッパの皿やくちばしを作っています。
しかし、ここは思い切って、頭からガブっと食べちゃいます。

テレビ静岡・大森万梨乃アナウンサー:
控えめな甘さのあんこがおいしい。見た目はかわいいけれど味は上品です
カッパがあふれた甘静舎ですが、佐々木さんはカッパのどこに魅力を感じるのでしょうか。
甘静舎・佐々木温恵さん:
カッパが能天気なところ。 遊び好きなところが、すごく魅力的だと思います

チャーミングなカッパに引かれているのですね。
子供を守った優しいウソ
巴川のカッパ伝説は、単なる妖怪の話ではなく、地域の人々の温かい心から生まれた物語だったのかもしれません。

橋の渡り初めで失敗してしまった子供を守るため、大人たちが知恵を絞って作り上げた「カッパの仕業」という説明。
その優しいウソは、清水の人たちの人柄を表す新しい伝説になるかもしれません。

清水を訪れた際には、四隅にカッパの像が立つ「稚児橋」と、たくさんのカッパグッズとおいしい「河童まんじゅう」の甘静舎に足を運んでみてはいかがでしょうか。
能天気で遊び好きなカッパの魅力とともに、地域の人々の温かい心に触れる旅になるはずです。
■店名 甘静舎
■住所 静岡市清水区江尻町4-26
■営業時間 10:00~18:00
■定休 水
■問合せ 054-366-5235
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