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「ショッピングモールの建設は制限したい」 どうなる?東名・スマートIC周辺の整備 出店規制条例緩和へ

難波市長の定例記者会見(10月11日)

静岡市は6年前に供用が始まった東名高速・日本平久能山スマートIC周辺の整備をめぐり、市独自の出店規制条例を緩和する考えを示している。ただ、難波喬司 市長によれば「ショッピングモールは作らない」という。

静岡市に存在する“独自”の条例

静岡市には2013年に施行された「静岡市良好な商業環境の形成に関する条例」なる条例が存在する。

これは事実上、郊外への大型商業施設の出店を規制するもので、条例の目的は「市民の意見を反映する機会を設けるとともに、良好な商業環境の形成に資するよう誘導する手続きを定めることにより、市民にとって安心して豊かな生活を送ることができる、市が目指すまちの姿にふさわしい良好な商業環境の形成を図り、もって市民生活の向上及び地域社会の持続的発展に寄与すること」とされている。

この条例では、売り場面積が1000平方メートルを超える商業施設の建設を計画する事業者に出店の構想段階から届け出の提出を義務化。

これに対し、市民は事業者に意見を提出することができるほか、市も指針に基づき指導や助言を行う。

また、事業者は出店構想を周知するための説明会を開催しなければならず、市民から寄せられた意見書に関しては見解書を市長宛に提出する必要がある。

さらに、市内が5つの区分にゾーニングされ、それぞれ売り場面積の上限を設定。

上限値は最大でも8000平方メートルとなっていて、これが郊外型大型商業施設の“出店規制条例”と言われるゆえんだ。

罰則規定はないものの、出店構想が“明らかに”指針に適合しないと判断された場合、市長は事業者に必要な措置を講じるよう勧告することができ、勧告にも従わない時には「その旨を公表することができる」と定められている。

条例には当時から疑問・反発の声も

このため、11年前に市が条例案を市議会に提出する前には、市内にスーパーを出店していた事業者10社が「自由競争が阻害され、商業が衰退していく」と猛反発。

加えて、条例案が審議された市議会・経済消防委員会(当時)でも、委員から「この条例が出来て、清水地域が活性化されると思っているのか」「“良好な商業環境”というのはどういうものなのか、市がしっかりと示さなければいけない」などと効果を疑問視する声があがり、本会議での採決にあたっても議員から「市民が安心して買い物できる環境づくりに努め、出店規制の範囲や制限については適宜見直してほしい」という意見が出されたが、最終的には全会一致で可決され現在に至る。

自ら定めた規制が“足かせ”に

こうした中、静岡市は10月9日に開かれた学識経験者や経済団体などで構成する市の商業振興審議会で、売り場面積の上限を現在の1.5倍にあたる1万2000平方メートルに緩和する考えを示した。

背景にあるのは東名高速・日本平久能山スマートIC周辺に位置する宮川・水上地区の約32万平方メートルにも及ぶ土地の存在だ。

市ではこの場所を“市内に残された最後の平坦地”として、大規模な集客施設の誘致を進めている。

日本の大動脈のスマートICすぐそばという立地を活かし、市内のみならず、市外、もっと言えば県外からも買い物客を誘致し、中心市街地への回遊を促すのが狙いだが、一方で実現に向けては皮肉なことに自らが決めた規制が“足かせ”となっていて、これを緩める必要がある。

審議会の委員からは、交通問題を懸念する意見も出たが、売り場面積の上限については一定の柔軟性も必要との見解も示された。

市長の発言の真意は?

では、静岡市は実際どのような集客施設をイメージしているのだろうか?

この点について難波喬司 市長は10月11日の定例記者会見で「ショッピングセンターまたはショッピングモールは作らない。制限したい」と述べた。

「大規模な建物の中に小さな店がいくつも並ぶのは、事実上“商店街”ができることになる」との理由からで、中心市街地にある商店街との客の“奪い合い”を避けたいとの考えがあるようだ。

市民の間では難波市長の発言を“深読み”し、コストコに代表されるように倉庫型量販店の進出に期待を寄せる声がある。

とはいえ、こうした業態の出店は静岡市の一存だけで決まるわけはなく、一にも二にも営利企業としての事業者の考えや意向が優先されるのは言うまでもない。

静岡市は2020年には人口が70万人を割り込み、全国に20ある政令指定都市の中でも最下位に沈んでいる。

故に人口減少対策、殊に若者の流出をいかに食い止めるのかは喫緊の課題だ。

だからこそ、意中の事業者に“フラれる”可能性も考慮して、事前に二の矢、三の矢を用意しておかなければならないし、間違っても理想を追い求めるあまり当該の土地が塩漬けにされ、市の衰退につながるようなことはあってはならない。

同時に、中心市街地の商店街を守るために制定した出店規制条例が本当に市の発展に寄与していたのか議論する必要があるだろう。

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