目次
子供が安心して挑戦できるためには、まわりの大人が“安全基地”になってあげることが必要だと乳幼児教育学が専門の大豆生田(おおまめうだ)啓友教授は指摘します。すると子供は“幸せ”を感じ、その幸せは社会の幸せにつながっていくのです。
テレビ静岡で8月11日に放送されたテレビ寺子屋では、玉川大学教授の大豆生田啓友さんが、子供の幸せのために必要な「安心」と「挑戦」について語りました。
生まれる前からの100カ月
玉川大学教授・大豆生田啓友さん:
子供が「幸せな状態(ウェルビーイング)」でいるために、子供が生まれる前(妊娠期)から小学校に入る前までの100カ月間の育ちがとても大切です。乳幼児期に幸せ感を感じていることが、その先大人になった時にもつながっていく、つまり未来のこの国や社会の幸せにもつながっていくのです。
では、どうしていけばよいのでしょうか。「こども家庭庁」は5つのビジョンを示していて、その中の一つが「安心と挑戦の循環を通してこどものウェルビーイングを高める」です。
乳幼児期の育ちにとって「安心」と「挑戦」の2つがすごく重要な働きをします。
安全基地があるからできる「挑戦」
「安心」とは、言い換えれば「心の安全基地」です。「自分が自分らしくここにいて大丈夫なんだ」と思えること。子供たちはいろんなことが初めてで、好奇心とともに不安もいっぱいです。
でも、自分が本当に安心できる特定の大人に不安なときにいつでもしがみつける関係があることで、「自分は大丈夫」と思える。そういう関係性を「アタッチメント(愛着)」と言い、人が育つときに最も大事な根幹になります。
アタッチメントを担える人は「親」だと言われてきました。確かに家でお母さんお父さんやそれに代わる人たちが安全基地を作ることは大切ですが、例えば園に行ったら、そこに社会があるわけです。
大好きな保育士さんが「大丈夫、安心するまで抱っこしてあげようか」などと安全基地ができれば、「もう大丈夫だ」と、自分から他のところに行こうということも出てきます。
特に以前はお母さんが強調されがちでしたが、お父さん、おじいちゃんおばあちゃん、そして保育者や友達、社会のいろんなところに安全基地ができることが、子供が次の「挑戦」に向かうことにつながるのです。
その「挑戦」とは、「豊かな遊びと体験」だと説明しています。
「遊び」というと学びとは別だと思われがちですが、自分の興味関心、やりたいと思うこと、夢中になることを通して世界を広げていく。
まさにこれが挑戦で、実は人生で大事なことの多くをこの遊びの中で経験する、それくらい重要なことなのです。
持続可能な幸せのサイクル
そして、豊かな遊びと体験には環境も重要で、どの環境に出会うかによってやりたいことは変わってきます。いろんな環境を与えてあげるためには、大人の役割も大切です。
家庭だけではなくいろんな人たちが関わり、社会全体で子供や子育てしている人を応援する。
子供時代に大事にされたことで、自分も成長したら子供たちを大事にするサイクルが生まれますし、子供が幸せだということ、周りの人たちがみんなその子供を見てワクワクすることが、みんなが支え合うような社会、持続可能な社会を作っていくのではないかと思います。
大豆生田啓友:1965年生まれ。青山学院大学大学院を修了後、青山学院幼稚園教諭などを経て現職。専門は乳幼児教育学、保育学、子育て支援。2男1女の父。子育て本を中心に著書多数。
※この記事は8月11日にテレビ静岡で放送された「テレビ寺子屋」をもとにしています。
【もっと見る! テレビ寺子屋「子育て」の記事】