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20年間情報番組「とくダネ!」を担当し、フリー転身直後にがんと診断された笠井信輔アナウンサー。コロナ禍真っただ中の入院生活で、“オンラインお見舞い”など新しいコミュニケーションの形を知り、シニアこそデジタルライフをと考えるようになりました。
テレビ静岡で5月12日に放送されたテレビ寺子屋では、フリーアナウンサーの笠井信輔さんが、闘病生活で感じた、新しいコミュニケーションの形を語りました。
令和の医療
フリーアナウンサー・笠井信輔さん:
フジテレビに33年間勤め、56歳の時にフリーアナウンサーに転身した直後、2019年のことです。「悪性リンパ腫」ステージ4と診断され、入院生活に入りました。
4カ月半後、体からがんがすべて消えた「完全寛解」という状態になり4年が経ちますが、3カ月に一度病院に行き経過観察を続けています。
がんを経験し、いろんなことに気づかされました。平成の医療は「インフォームドコンセント」。患者に対して医師が治療法や薬、手術などの情報をきちんと説明して了解を取ったうえで治療が進む。それは今も続いていますが、令和の医療はさらにそこから一つステージが上がっています。
“QOL”を上げる治療
患者は「今どういう状況で、どうしたいのか」ということを、自分からもしっかりと細かく医師や看護師に伝える必要があります。「QOL(クオリティ・オブ・ライフ)=生活の質」を上げるためです。
例えば、痛いと当然生活の質は下がってきます。しかし医師が「痛みはどうですか?」と聞くと、昭和世代の患者は大概「おかげさまで」と言うのです。「治療して薬ももらっている、本当に我慢できなくなったら伝えよう」と。
医師はそれが困ると言います。今は痛みを緩和する薬もバラエティに富んでいて、患者がどういう痛みなのかによって処方する薬も全然違うからです。
自分のことを素直に医師に伝えるというこのコミュニケーションが、とても大切です。「迷惑になるから」はダメ。自分のためにならないし病気が良くなりません。自分もその意識の変革に少し時間がかかりました。
高齢者ほどデジタルが必要
もう一つのコミュニケーションの問題は「孤独」でした。私はコロナ第1波で入院したため、面会はほぼ禁止。この孤独というのは入院した人にしかわからない。力になったのは病室のインターネット環境でした。外の人ともつながれるし、いろんなニュースなどを見ることができ、とっても気分が上がりました。
さらに、もっと大切なのは「オンラインお見舞い」でした。友達が全国から私のスマホとつないで集まってくれ、顔を見ながら話す。これが本当に力づけになったのです。
実は、これは病を抱えた人だけの話ではありません。コロナ時代は、高齢者ほどデジタル機器の操作を身につけないと楽しい老後は送れないという時代になってきています。
デジタルライフを怖がらないでほしい。やってみようと思う気持ちが大切です。人とオンラインでつながることが豊かな人生を築いていく。そして、自分が危機になった時に周りとつながって元気づけてもらうのです。
元気な時の“やってみる”が大事
大病した人は、病気が分かった瞬間から考えなければいけないことや悩みが山ほどあるので、そんな時にデジタル機器の操作を覚えようなんて思えません。だから元気な時にやる、平時にやる、やってみることが大事なんです。
顔が見えるということは、また一つコミュニケーションをグッと近づけます。「デジタル化が進み、追いつけない」ではなく、「こんな時代に生きていてよかった」と思えるのが、コロナ禍を経た今の時代なのです。
笠井信輔:1963年生まれ。1987年フジテレビ入社。朝の情報番組「とくダネ!」を20年間担当。2019年、フリー転身直後に血液のがんである悪性リンパ腫と判明。現在は完全寛解の状態。
※この記事は5月12日にテレビ静岡で放送された「テレビ寺子屋」をもとにしています。
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