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環境省によると全国の保健所などに引き取られ殺処分されるネコは年間9000匹あまり。こうしたネコを保健所から譲り受け、養育してから里親につなげる活動をしている中学生がいる。5年間で403匹を保護した彼は、このほどNPO法人を立ち上げ理事長に就任した。その狙いは?
殺処分9472匹…子ネコは5878匹
環境省によると、2022年度に全国の保健所などに引き取られたネコは3万401匹(飼い主から9559匹・所有者不明2万842匹)で、このうち希望者などに譲渡されたネコは2万匹あまり。残りの9472匹が殺処分になった。殺処分となったネコのうち子ネコは5878匹だ。
殺処分は10年ほど前の10万匹前後に比べ大幅に減ってはいるが、それでも多くの命が失われていることに変わりはない。
静岡県富士市の中学3年生・赤石朔(さく)さんは、子ネコを保健所から引き取り自宅で育てながら里親につなげる活動を、2020年から母親と一緒に続けてきた。5年間で保護した子ネコは403匹だ。
ネコと一緒に設立総会
その赤石さんたちが2024年1月、NPO特定非営利活動法人「子猫園ベルソーデシャトンズ」を立ち上げた。ベルソーデシャトンズはフランス語で「子ネコのゆりかご」の意味だ。
これまで母親が代表を務める任意団体で取り組んでいたが、さらに多くの命をつなごうとNPO特定非営利活動法人を設立した。赤石さんが理事長を務める。
2024年2月、赤石さんの自宅で設立総会が行われた。2023年度だけでも116匹を養育したとあって、会場となった部屋にはたくさんのケージが置かれ、保護ネコが自由気ままに行き来していた。
赤石さんは「小さな命が取りこぼされないように、さらに活動していきたい。より多くのネコを保護することはもちろん、NPOになったことを最大限に生かせるようになりたい」と抱負を語った。
殺処分の多さに驚き
赤石さんが子ネコの保護活動を始めたのは2020年 小学5年生の頃。2匹の子ネコの里親になったことがきっかけだ。年間約2万匹が殺処分されている当時の状況を知り(環境省調べ:2020年度1万9705匹、2022年度9472匹)、自分たちに少しでもできることはないかと考えた。
保健所から子ネコを引き取って活動を始めた。生後間もない子ネコには2~3時間おきにミルクを与えて養育し、里親を希望する人たちにつなげてきた。一般の人からは引き取っていない。
1匹1匹に家族の証としての名前をつけて、里親に引き渡す際には成長の記録をまとめたアルバムも一緒に手渡してきた。
保護活動をまとめた写真展も2022年3月と2023年3月の2回、地元のショッピングセンターで開いてきた。
「ネコたちも丈夫な体ではないので、ひどい扱いをされているのを見ると許せない。もうちょっと考えて行動して、当たり前の避妊去勢など当たり前の責任を果たしてほしい」
写真展を取材した時、赤石さんはこうした思いを語っていた。
多くのネコが殺処分される状況やネコの正しい飼い方を紹介するコーナーを設け、来場者に命の大切さを呼びかけた。
来場者も「かわいそうな思いをするネコが減って、みんな幸せな生活を送れるネコが増えればと思う」と、赤石さんの活動に共感していた。
NPO化で期待ふくらむ
今回、赤石さんたちはNPO法人となることで支援者を増やすとともに社会的な信用を高めて行政や企業からの協力も期待できると考えている。
子ネコの養育には食事代、医療費、避妊去勢手術などで高額な費用がかかり、これまでは家族や支援者で負担してきた。それがNPO化で会員から年会費(正会員5000円、賛助会員1000円以上)をいただくことで運営費に充てることができる。
また、行政からの補助金や企業からの物資支援や寄付金を受けられる環境がより整う。
さらに活動を広く知ってもらうことで里親希望者が増え、幸せになれる子ネコが増える可能性もある。写真展や講演会を増やすこともできる。
NPO子猫園ベルソーデシャトンズ
赤石朔 理事長:
より多くの方の理解をえるため会員を全国的に募集して、一人一人が命とどうむきあうのか考えるきっかけになってくれたらと思います。思いがあれば誰でもできることなので、ぜひ同じ世代の人たちにも感じてほしい。
ネコの里親になりたいけど不安がある人や家のネコの心配事を持つ人、また、地域ネコで困っている人の相談にも取り組んでいくという。
さらに能登半島など被災地で命をつなぐことが困難なネコがいるのなら、その地域の人たちとも連絡をとりあって受け入れ態勢を整えていきたいと話す。
赤石さんの最終的な目標は、このNPO法人の解散だ。
「保護するネコがいなくなって すべての命が幸せになるまで、一緒に駆け抜けてください」と呼びかけている。
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