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アフリカで野球を教えていた日本人指導者が「3時に集合」と声をかけると、みんなが集まったのは4時。でもそれは現地の文化、考え方なのです。では、どうやって選手たちに時間を守らせることができるようになったのでしょうか。
12月17日にテレビ静岡で放送されたテレビ寺子屋では、野球指導者の友成晋也さんが、将来日本の大切なビジネスパートナーとなるアフリカの若者たちに、野球を通して行った人づくりについて話しました。
アフリカで野球を教える
野球指導者・友成晋也:
いまから25年ほど前、私はJICAの職員としてアフリカに赴任しました。3カ国で合計8年半。その際に現地で野球を教えたことをきっかけに、現在も野球の普及活動や野球を通じた人材育成に取り組み続けています。
日本と違い野球を知らない地域で普及活動をするとき、「なぜこれをするのか?」一つ一つ説明しないと納得してもらえませんでした。どう伝えるのか。しっかり言語化して行動してもらうために考え続けた25年でした。
その中で得た気づきを「ベースボーラーシップ教育」としてまとめました。「ベースボーラーシップ」とは、「ベースボール」と「スポーツマンシップ」を掛け合わせた造語です。野球、ソフトボールの指導を通じて「自立・尊重・正義の心」を育む教育のことで、テキストブックに55の項目をまとめました。
「3時に練習開始」選手たちが集まったのは
最初の項目は「なぜ選手たちは時間通りに集まらなければならないのか」です。
日本では「時間を守る」という概念は、もはや文化のようになっています。しかしアフリカではなかなか人が時間通りに集まりません。例えば「3時に練習開始」と伝えても、3時の時点では全ての選手は集まりません。40分ぐらい経つと大体8割ぐらいが来て練習を開始。
その後パラパラと選手が加わり、4時にようやく全員が集まる。これを「アフリカンタイム」と言ったりします。ここだけ見ると「なんてルーズなんだ」と思いがちですが、これはアフリカの文化なのです。
乗り合いバスに時刻表はなく、乗車したとしても渋滞だ雨だと遅れてしまう。まったく予測できません。日本だったら「3時」と言ったら「3時00分」を意味しますが、アフリカでは「3時00分から59分までが3時」という共通概念があるそうです。だから4時に全員集まっているということは、みんな時間を守っているのです。「そういうことか」と最初はびっくりしました。
「時間を守る」理由を教えると
嘘の集合時間を伝えたり、罰を与えたりせずに、選手たちが時間通りに集まるためにはどうしたらいいのでしょう。
まず私は「なぜ時間を守るのか?」、その理由を説明します。そして次に時間を守るために自分は何をすべきか考えさせます。大切なのは「予測して準備して確認する力」。
その結果、私の教えてきた野球チームはみんな、きちんと時間を守るようになりました。時間を守ることは野球がうまくなる練習でもあるのです。野球は「人づくり」の力を持っています。
将来アフリカは日本のビジネスパートナー
いまから30年後、日本の人口は9000万人ほどになり、一方でアフリカは急成長して現在の13億人から25億人になると言われています。現在の13億人のうちの半分が未成年で、30年後には彼らが社会を動かしていることになります。
将来、アフリカ社会を動かす彼らが日本に投資をしたり、観光旅行に来たりする時代が来ます。ビジネスパートナーとして何が必要か、それは「信頼」ですよね。その信頼できる人づくりを、私は野球を通じた教育で行っているのです。そのことがアフリカのためのみならず、日本のためにもなる時代がきっとやってきます。
友成晋也:慶応義塾大学卒業後、民間企業勤務を経て1992年JICAに入職。8年半アフリカで勤務。野球経験を生かし各国の野球代表監督を歴任。2019年、アフリカ野球・ソフト振興機構 代表理事に。
※この記事は12月17日にテレビ静岡で放送された「テレビ寺子屋」をもとにしています。
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