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刺身に添えるだけではもったいない、ワサビのおいしい使い方を生産者に教えてもらいました。取材したのは静岡市清水区の、台風でワサビ田が崩壊し復旧に向けがんばっている老舗農家。ワサビ農家を応援するためにも、おいしくワサビを食べる方法を覚えてみませんか。
ワサビの意外な楽しみ方!おすすめレシピ3選
静岡市の市街地から車で約40分。いわゆる「オクシズ」と呼ばれる静かな山あいに、銘茶の隠れ里、両河内(りょうごうち)はあります。
この地で長く続く「お茶のやまよ」は、お茶とワサビの兼業農家です。店主の山崎貴正さんに“目からウロコ”のワサビレシピを教えてもらいました。
※山崎さんに教わったレシピに、筆者が少々手を加えています。
レシピ1 「塩&ワサビ」はマルチププレーヤー
わさびの相棒といえば「しょうゆ」というイメージですが、実は「塩」もとてもよく合います。
例えば冷ややっこは、しょうゆのかわりに「藻塩&ワサビ」とオリーブオイルを。茹でたパスタにも、「岩塩&ワサビ」とたっぷりのオリーブオイルでシンプルに。ステーキや豚トロも、ソースではなく「ハーブソルト&ワサビ」としょうゆで爽やかに。
中でもざるそばは、つゆを使う前に「お好みの塩&ワサビ」で食べてみてください。そばとワサビの香りが鼻に抜けて、そばの味わいもダイレクトに楽しめます。
<ざるそばで、もっとワサビを楽しむ方法>
香りをそこなわないワサビのおろし方のコツを聞きました。皮はむかずに、茎を手でむしります。
先端ではなく、茎の方からおろしましょう。力を入れ過ぎず、やさしく「の」の字を書くようにゆっくりおろすと、きめ細かなねっとりとしたねばりが出ます。
レシピ2 ワサビ漬けがオシャレなパーティーメニューに
意外に思うかもしれませんが、ワサビ漬けはクリームチーズとよく合います。クリームチーズとワサビ漬けの比率は1:1か、ワサビ漬けをそれ以上に。ワサビ好きの筆者は1:2で作りました。
<ワサビ漬けとクリームチーズのカナッペ>
■材料(2人前)
・クラッカー 8枚
・ワサビ漬け 40g
・クリームチーズ 40~80g
・お好みでトッピング(生ハム、スモークサーモン、パプリカ、レモン、セルフィーユなど)
■手順
1)ワサビ漬けと、クリームチーズをよく混ぜる
2)クラッカーに 1)とスモークサーモンなどお好みのトッピングをのせて完成
レシピ3 割烹料理人からヒントを得た絶妙な箸休め
サンマなど脂ののった焼き魚の箸休めにピッタリ。いろんな食感が楽しめて、付け合わせというよりも、立派な一品です。
ダイコンおろしの代わりにご飯にのせれば、ワサビ好きに大人気の「ワサビ飯」になります
<ダイコンおろしのワサビツマのせ>
■材料(2人前)
・ダイコン 10cm程度(葉に近い部分だと辛すぎない)
・ワサビ(すりおろし用)適量
・ワサビ(ツマ用)適量
・カツオ節 適量
・しょうゆ 適量
■手順
1)ダイコンをおろし金ですりおろし、軽く水気を切る
2)ワサビの根茎部分をかつら剥きして(ピーラーで削ってもよい)細切りにする
3)2)の残りの根茎部分をすり下ろす
4)ダイコンおろし、ワサビ細切り、おろしたワサビ、カツオ節の順に盛り付ける
5)食べる時には、しょうゆを適量かけて
台風でワサビ田に大被害
お茶のやまよは2022年の台風15号で甚大な被害を受け、いまも復旧作業に追われています。
お茶のやまよが被災前に開催していた「わさび満喫ツアー」では、茶園までの農道をハイキングしたり、手摘み茶などの飲み比べをしたり、ワサビを使ったお茶うけを食べたり、両河内の豊かな自然と名産品を堪能できたそうです。
そしてツアーのシメは、ワサビ尽くしのコース料理を味わうぜいたくな内容でした。
今回紹介したレシピは、このコース料理からヒントを得たものもあります。
被災から1年 やっと2割復旧
しかしその自慢のワサビ田も、2022年の台風15号に襲われ、収穫予定のワサビの9割以上が流されました。ワサビ田自体も大規模な打撃をうけ、今もなお復旧作業が続いています。
お茶とワサビの兼業農家である山崎さんは、茶畑の仕事をしながらワサビ田の復旧作業も進めています。
お茶のやまよ 代表・山崎貴正さん:
これまでも台風の被害はありましたが、これほどのダメージは初めてです。100段を超えるワサビ棚(階段状のワサビ田)は大小の石を積み上げた構造で、誰でも修繕できるものではないので人手が足りません。まだまだ崩れる危険が残る中での作業なので難航しています
間もなく被災から1年、ようやく2割程度が復旧できました。
お茶のやまよ 代表・山崎貴正さん
さすがに100%の復旧は無理ということで、全体の6割の復旧を目標にしています。被災直後は「直す気もおきない」というほど、気持ちが落ち込みました。ここまでこれたのは、ご近所のみなさんや、地元の友人たち、そしてファンの皆さんからのお力添えがあったからこそです。感謝しかありません
復活を待ち望むファンの声
山崎さんの代から本格的に始めたワサビの小売りや、「満喫ツアー」などの新しい取り組みの効果として、購入客の顔が直接見られるようになったのは、新しい変化だといいます。
被災後に友人が特別販売用のサイトを開いてくれた際には、反響もありました。
お茶のやまよ 代表・山崎貴正さん
ありがたいことに「インスタ見ました」と、ツアーの問い合わせをもらったりします。小さくてもいいので、できる範囲でやっていけたらと思います
静岡が世界に誇るワサビ。いろいろな楽しみ方があることを知り、本物のおいしさを堪能することが、ワサビ農家を応援することにもつながるのではないでしょうか。
■店名 お茶のやまよ
■住所 静岡市清水区河内470
■営業時間 9:00~17:00
■定休 不定休
■問い合わせ 電話(054-395-2217)もしくはインスタグラムから
取材/髙良綾乃