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“グリーンキャビア”ともよばれる海ぶどう。温かい海に生息する海藻で、沖縄県の特産品だ。その海ぶどうを、富士山を望む静岡県沼津市で養殖する取り組みが始まった。廃校となった小学校のプールを活用する。商品名は“ふじ山 海ぶどう”だ。
◆沖縄の特産品をなぜ沼津で?
緑色に輝く「海ぶどう」。沖縄など温かい海に生息する海藻で、正式な名前は「クビレズタ」という。
プチプチとした食感が特徴で、「グリーンキャビア」とも呼ばれている。そのままいただくのが一般的だ。
2021年に廃校となった沼津市の旧内浦小学校。
施設を有効に活用しようと始まったのが、プールを使った海ぶどうの養殖だ。市が活用のアイデアを募集していた。
Rカンパニー・永井良太社長:
将来的には、モヤシくらい一般的な食材になったらいい
沼津市に隣接する長泉町出身の永井良太さん。5年ほど前から沖縄県の宮古島で海ぶどうを養殖している。
事業の拡大と、地元の活性化につながればと、沼津市での養殖を決めた。
Rカンパニー・永井良太社長:
こういうモデルをそのまま、他の漁業者にも二毛作じゃないけど、漁獲量が減っている時にこういうの(海ぶどう養殖)があったら、助かる人も多いのでは
養殖のノウハウを他の漁業者に伝えることも考えている。
◆水槽準備に1カ月 まずは宮古島産で
養殖に向けた準備が始まったのは2022年6月。
沼津市の養殖場を任されたのは、隣の三島市出身の庄司昌弘さんだ。永井さんのもと、宮古島で海ぶどうの養殖を学んだ。
この日、トラックを使ってプールに海水を運び込む作業が行われていた。
プールに設置された水槽は10個。必要な海水は約70トンで、地元の漁協から買ってくる。
1回に運べる量は1トンなので、70往復することになる。1カ月近くかけて、ようやく水槽10個が海水で満たされた。
しずおか海ぶどうLABO・庄司昌弘さん:
「やっとやれる」という感じですね。まあ、早く沼津産を作りたいですね、本当に
まずは宮古島で養殖された海ぶどうが水槽に入れられた。
輸送中に劣化してしまった海ぶどうを、一旦休ませてから出荷する「養生」という作業だ。
しずおか海ぶどうLABO・庄司昌弘さん:
傷が修復されて弾力もかなり戻ってくる。養生したほうが絶対においしいです
◆「ふじ山 海ぶどう」に人気寿司店も期待
2022年9月、宮古島産を養生した海ぶどうの販売が始まった。商品名は「ふじ山 海ぶどう」。
養殖場での直売とあわせて地元のJAに出荷し、県東部全域で販売する。
JAふじ伊豆・外岡賢大さん:
まだまだこの静岡県内で認知度は低いと感じている。食べ方の提案などに力を入れていきたい
匠 鮨おわな・小穴健司さん:
修行先で突き出しとして、ワカメと海ぶどうを20年ぐらい前から出していて
この日 養殖場を訪れたのは、東京ですし店「匠 鮨おわな」を営む小穴健司さん。店はミシュランひとつ星の名店だ。
匠 鮨おわな・小穴健司さん:
静岡で海ぶどうという発想がないので、インパクトがある
沼津市出身の小穴さんも、地元産の海ぶどうに期待している。
匠 鮨おわな・小穴健司さん:
なるべく地元との関わりは残しておきたい。いろんなところにいい食材があるが、東京にいると、東京で売っているものしか買わなくなる。いい食材が地元にあるならどんどん使っていきたい
◆養殖は難航 認知度は徐々に向上
2022年10月、初めての植え付け作業だ。いよいよ沼津産の養殖が始まる。
しずおか海ぶどうLABO・庄司昌弘さん:
いよいよですね、やっとです。育ってくれるといいですね。(収穫まで)だいたい1カ月かもうちょっとくらいですかね。ちょっと寒いので少し時間かかりそうですけど
3週間後。
しずおか海ぶどうLABO・庄司昌弘さん:
伸びてはきてはいるのですけど、少しずつ。ただゆっくりなんですよね
海ぶどうは、思ったほど育っていない。
その後も寒さに加えて設備の不具合なども重なり、残念ながら収穫はできなかった。1年目の挑戦はここまでだ。
一方、宮古島産を養生したものは継続して販売されている。商品紹介のポップも添えられていて、評判は上々だ。
買い物客:
おいしいです、プチプチして。塩気がちょうどよくて、おいしいです
少しずつ認知度も高まってきた。
◆2回目の挑戦 膨らむ期待と海ぶどう
2023年5月、養殖場では前回の失敗をいかして、育てる水の深さや、日当たりなどを工夫した。水温管理も今度はうまくいったようだ。
4月に植え付けた海ブドウは1カ月で順調に育っていた。
しずおか海ぶどうLABO・庄司昌弘さん:
6月あたまくらいにはとれると思います。本当に苦労したので、早く収穫して出荷したいです
しずおか海ぶどうLABO・庄司昌弘さん:
この施設は沼津のものと沖縄のもの、両方の取扱いができる。最近いろんな人に食べていただく機会も多くなってきたので、その期待にそえるようにいいものを作っていきたい
沼津産の海ぶどう養殖に向けた2年目の挑戦。間もなく迎える初めての収穫に向けて、海ぶどうも期待も膨らんでいる。