静岡大学と浜松医科大学は2019年に統合再編することで合意しましたが、その後も協議が続けられています。こうした中、長期化の影響と大学の今後について不安を口にする関係者がいます。何が起きているのでしょうか?
2019年3月、静岡大学と浜松医科大学の当時の学長のもとで、統合に向けた合意書が交わされました。
静岡大学・石井潔 学長(当時):
両大学の独立的な運営で小回りの利く迅速な意思決定と活動ができる
浜松医科大学・今野弘之 学長(当時):
想像できないような分野が開拓される
当初目指したのは2021年度までの「統合完了」、2022年度からの「新大学・学生募集の開始」でした。
ところが、合意から7年以上が経過しても議論はいまも平行線の状態。
2021年4月に就任した静岡大学の日詰一幸 学長は、当初から再編に慎重な姿勢を見せています。
こうした中、大学の将来を心配する声が…。
大学関係者が明かします。
大学関係者:
手遅れなくらい。大学間のお金、財務に関して格差ができて。この状況が続くと、静岡大学の教育・研究力の向上が遅れるだけでなく、地域社会の発展や学生1人1人の将来にも影響しかねない
一体どういうことなのでしょうか。
浜松医科大学との統合再編の協議が停滞している静岡大学。
斉藤力公 記者:
静岡大学は、他大学との競争によって国などから獲得する公的外部資金について、ここ数年、数十億円規模の資金を獲得できていないのではないか、そうした指摘が聞かれます
大学のおもな収入源には「国や自治体からの交付金や補助金」「病院や資産活用の事業収入」「学生の授業料」「外部資金」などがあります。
外部資金は大学に研究・事業を依頼した人から提供されるお金。
研究活動の推進、教育環境の充実など、大学運営を支える財源の一つです。
そして、こちらは静岡大学と周辺の大学の公的外部資金の獲得状況です。
2023年度「地域中核 特色ある研究大学の連携による産官学連携・共同研究の施設整備事業」最大20億円程度は「不採択」。
これにより「特色ある研究 大学強化の促進事業」は、応募が見送りに。
2024年度の「同事業」最大55億円も「不採択」でした。
近隣の大学とは差があるように見えます。
大学関係者が、テレビ静岡の取材に応じて胸の内を明かします。
大学関係者:
静岡県内の学生がそういった優れた県外の大学を選んで、卒業後も県外に定着することになれば、静岡県にとっても地域社会や産業を支える人材を失う大きな損失になる
統合再編協議の長期化と、公的外部資金の獲得に関係はあるのか?
静岡大学の日詰学長に取材を依頼しましたが「学内外の公務が立て込んでいて応じられない」との回答でした。
そこで質問状を送り、見解を尋ねました。
静岡大学の回答:
協議の長期化が公的外部資金の獲得に影響しているとは考えておりません。本学では近年においても様々な外部資金を獲得しており、教育研究の推進に活用しています。個別の事業については、それぞれの事業目的や審査基準に基づき採択の可否が判断されるものであり、不採択となる事例もあります。その要因について一概に申し上げることはできませんが、結果を真摯に受け止め、今後の申請内容の改善や研究力向上につなげていきたいと考えております
一方、こちらの資料は2019年、両大学の統合再編が合意されたあと文部科学省から届いた文書です。
3年間で最大3億円を獲得できる、国の補助金事業に採択されたことを通知しています。
当時、両大学は統合再編の取り組みを通じ、補助金獲得を目指していました。
資料には…。
国の評価:
「他大学のモデルとなることが大いに期待される」「経営改革の実現に向けて全学体制で臨む姿勢が強く感じられるものとなっている」
などと記され、取り組みへの高い期待が示されていました。
しかし、事業期間が終わる2022年3月には…。
国の評価:
当初の構想に沿った取り組みが行われておらず、十分な成果が得られているとは言えない
などと評価は一変。
「S・A・B・C」と4段階ある中、最も低い「C」の評価を受けたのは採択された21事業のうち、静岡大学・浜松医科大学だけでした。
当時、事業への申請を主導した石井潔 前学長です。
統合再編に向けた協議について…。
静岡大学・石井潔 前学長:
よく分からないメンツというか、私から見ると非常に非合理な反対論とかあるという風に思う
そして、統合再編を進めなかった経緯が「国の評価・その後の資金獲得に影響した可能性がある」と大学側の見解を否定します。
静岡大学・石井潔 前学長:
やるって言ってやらなかったというのは、実績として非常にマイナスになる。その後の補助金(外部資金)に大きく響いてくるのは、ある意味当然のことじゃないかと
大学側は「過去、採択に至らなかった事業がある一方、令和7年度の世界展開力強化事業や、産学連携リスキニング事業などで外部資金を獲得している」としています。
静岡大学の回答:
公的外部資金は教育研究環境の充実や研究活動の推進を支える重要な財源の1つであり、その獲得は大学の発展にとって重要であると考えています。引き続き、未来創生ビジョンの実現に向けて本学の強みや特色を生かしながら、より多くの外部資金を獲得できるよう戦略的に取り組んでいきたいと考えています
ただ、2026年度「先端研究」「新人材の事業」はいずれも不採択でした。
石井前学長は、こうした現状が続くと「大学の信頼に関わる」「将来を長期的な視点で考える必要がある」と訴えます。
静岡大学・石井潔 前学長:
長期的には評判が下がっていって、そうすると集まる学生の質も落ちてくるとか、あるいは教員も集まらなくなるとか、そういう負のスパイラルに繋がっていく可能性もあるわけだから、もう少し長い目で見て、何が静岡大学にとって一番いいのかということを考えて、これから大学の行く末を考えていく必要があるのではないか
大学側はその可能性を否定します。
静岡大学の回答:
学生や受験生にとって重要なのは大学でどのような学びや経験ができるか、そして卒業後にどのような成長や進路につながるかという点であり、公的外部資金の獲得状況が直ちに志願者数や学生数に影響するものではないと考えています。教育の質保証や計画的な施設整備、教育環境の充実に継続的に取り組んでいます。今後も学生にとって魅力ある大学づくりを進めてまいります
統合再編の協議に向けては…。
静岡大学の回答:
本学は総合大学として県全域へ貢献していく方針であり、その方針について理解を得られるよう、引き続き話し合いを続けてまいります
統合再編をめぐる議論が続く一方、大学間の競争は激しさを増しています。
学生に選ばれ続ける大学であるために、静岡大学は今後どのような将来像を描くのか。
統合再編の行方とともに、スピード感を持った対応「これから」が問われています。
