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オリンピックに3回出場した元陸上選手で、東京大学先端科学技術研究センター・教授の為末大さん。
テレビ静岡で10月11日に放送されたテレビ寺子屋では、体育を「体の扱い方を学ぶ場」として捉え直す視点と今後の理想について語りました。
体育が秘める大きな可能性
私は陸上競技の選手としてオリンピックに3度出場しました。
2012年に引退した後は、身体を通して人間が学びを得るプロセスを探求し、社会に貢献する活動をしてきました。
2026年からは東京大学先端科学技術研究センターの教授に就任し、身体と心のつながりについて研究しています。
ある時、私は世の中には体育嫌いの人が意外と多いと知り、驚きました。
一方で、年齢を重ねるにつれて増えていく「痩せたい」「姿勢を良くしたい」「体の不調を改善したい」といった悩みは、体育の分野に通じています。
「体育」は単に運動能力を高めるためのものではなく、大きな可能性を秘めていると私は思います。

そもそも「体育」の目的とは何でしょうか?
「スポーツ」の語源が「遊ぶ・気晴らしをする」といった娯楽的なものであるのに対し、「体育」は教育的な側面を持っています。
体について理解し、育むことで、「体の扱い方を学ぶこと」が体育の目的だと私は思います。
「体の扱い方」を学ぶことで健康と心の安定につながる
人間が生きていく上で「体の扱い方を学ぶ」ことはとても重要で、そこには2つの理由があります。
1つ目は「健康を保つこと」。
例えば、私の友人が仕事のことで悩んでいましたが、睡眠や食事、適度な運動など、生活のリズムを整えたところ、悩みがなくなったと言います。
つまり、体が不調だったがために、物事を必要以上に深刻に感じていたということです。自分の体のコンディショニングを整えるということも「体を扱う技術」に含まれます。
2つ目は「心の安定を保つこと」。
人間の心と体はつながっているので、体から心にアプローチすることができます。気持ちを落ち着かせる時に、頭の中だけで対処するのではなく、深呼吸をしてストレッチをするなど、自分なりの方法を学ぶことが大切です。
スポーツ界でルーティンと言われる行動も、自分の心の状態を一定に保つための方法です。
【為末大さんの過去の講話はこちら】
体育の理想的な役割は“土台づくり”
また、体育で得られる「できた」という身体的な経験は大きな自信として心に残りますが、一方で、みんなの前で「できなかった」という経験も強く残ることがあります。
オランダの体育では、子供たちが壁に向かってさまざまな運動を行い、周囲の視線を気にせず体を動かすことを楽しめる工夫が見られます。日本の体育にも、こうした視点を取り入れることで、より多くの子どもたちが体育を好きになれるのではないでしょうか。
「体の扱い方を学ぶ」という視点で考えると、体育は奥が深いものです。
逆上がりができなくても人生で困ることはないでしょう。大事なのは、自分の体を思い通りに動かせる、楽しいと思う気持ちです。
「体育」の理想的な役割は、自分の体と心を理解し、扱えるようになっていくための「ファンダメンタル=土台」となることだと私は思います。それが大人になってからの健康や心の安定にもつながっていく。体育が子供たちにとって体を通して学び、実践していけるような存在になると良いなと思います。
≪講師プロフィール≫
為末大:1978年生まれ。世界陸上の男子400メートルハードルで銅メダルを2度獲得。五輪には3度出場。スポーツと社会貢献に尽力し、2026年4月からは東京大学先端科学技術研究センターの教授に就任。
※この記事は10月11日にテレビ静岡で放送された「テレビ寺子屋」をもとにしています。
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