目次
浜松市中央区、2025年にオープンしたばかりの「つぎのば」は、割れてしまった陶磁器をつないで美しく再生する「金継ぎ(きんつぎ)」の教室です。あなたも職人の技にチャレンジできる! 日本の伝統技法「金継ぎ」を体験してきました。
【画像】記事中に掲載していない画像も! この記事のギャラリーページへ2025年9月にオープンした金継ぎ教室
やってきたのは、浜松市中央区富塚町にある「つぎのば」。
木造で趣のあるオシャレな住居兼工房です。

迎えてくれたのは、圖子愛子さんです。
「圖子(ずし)」という苗字は、全国に30世帯くらいしかないそうです。「圖」が「図」の旧字体。愛子さんの夫の出身地、香川県にある名字なのだそうです。

さっそく中へ案内してもらいました。広い土間の空間が広がっていました。
金継ぎ教室は2025年9月、この自宅を兼ねた場所でオープンしたばかりです。
圖子さんは、ここで金継ぎ教室を開きながら、金継ぎの依頼を受けて修理の仕事もこなしています。

金継ぎとは? 割れた器を再生する職人技
みなさんは「金継ぎ」を知っていますか?
金継ぎとは、割れた陶磁器を修理する古くからある日本独自の技法です。室町時代、茶の湯文化とともに発達したといわれています。

圖子さんが見せてくれたのは、一度バラバラに壊れてしまったという器。
金継ぎ師・圖子愛子さん:
漆でつないで、最後に金でお化粧をしています
小さな破片まで丁寧につなぎ合わせ、きれいによみがえっています。
割れたことでかえっておしゃれな雰囲気が生まれ、アートと呼ぶにふさわしい仕上がりです。

実は、金継ぎで接着剤として使われているのは、金ではなく「漆(うるし)」。
漆に小麦粉を混ぜ、よく練り合わせると、徐々に粘りが出てきます。
材料は漆と小麦粉なので、食器の修理に使われるんです。

上に引いた時に、糸のように伸びれば強力な接着剤の完成。これを使って陶磁器をつなぎ合わせていきます。
ただし、接着剤といってもすぐにくっ付くわけではありません。
断面に接着剤を丁寧に塗ったら、そのまま1時間ほど乾燥させます。

しっかり乾燥させたら、ようやく器と破片をつなぎ合わせていきます。
漆はゆっくり固まるので、完全につくまでには約2カ月かかるといいます。
金継ぎ師・圖子愛子さん:
今の季節だと2カ月くらいは待ちたいですね。お客様にお返しするまでに、ちょっとでも不安があってはいけないからです

きっかけは母からもらったティーポット
芸術学の大学院を修了した圖子さん。
芸術の研究のなかで金継ぎと出会い、現在は認定金継ぎ師・認定講師の資格をもつ職人として活躍しています。
圖子さんの手にかかれば、割れてしまったものが魔法のように美しくよみがえるのです。

圖子さんが金継ぎを始めたきっかけは、母からもらったプレゼントでした。
金継ぎ師・圖子愛子さん:
母がプレゼントしてくれたティーポットのふたを割ってしまって、それをどうしても直したいという思いから始まりました

思い出の詰まったプレゼントをなんとか復活させたいという願いが、金継ぎ職人になるきっかけだったのです。
金継ぎ師・圖子愛子さん:
思い出のものが自分のところにお化粧して帰ってくるのは、気持ちが豊かになり、あかりが灯ったような温かさがありました

いよいよ金継ぎ体験 “無の心”で挑む
ではいよいよ金継ぎ体験です。
圖子さんがすでに直しておいてくれた器に、最後の仕上げ“金で加飾”をする工程に、にむらリポーターが挑戦します。

“無の心”で漆を塗る
まずは漆を割れ目をなぞるように丁寧に塗っていきます。金をのせるための接着剤です。

「うわ、難しい」と思わず声が出るほど繊細な作業。
思い切って“無の心”になって向き合うのがコツだといいます。かなり集中力を求められる作業でした。
くしゃみ厳禁! 金粉をそっとのせる
漆を塗り終えたら、いよいよ金粉の出番です。
金粉はわずか0.1g。高価で非常に軽いので細心の注意を払って扱いましょう。
くしゃみでもしたら大変なので、窓を閉め切り無風状態で行います。

特殊な筆に金粉をたっぷりつけ、先ほど塗った漆の上にやさしくのせていきます。
美しさのコツは薄く均一にのせることだそう。
金粉をのせ終えたら、優しく丁寧に磨きます。

金継ぎ師・圖子愛子さん:
生まれたての赤ちゃんのほっぺを優しくなでるように、こすってみてください
すると、継ぎ目が黄金色に輝き、器が見違えるように美しくよみがえりました。
にむらあつとリポーター:
めちゃくちゃすてきになりました。さりげない豪華さですよね

最後は金継ぎの器でお茶を一服
圖子さんが金継ぎの器でお茶を点ててくれました。
自分で金継ぎした器を、実際に使用できるのもまた魅力です。
金継ぎ師・圖子愛子さん:
器をただ飾って見るだけじゃなくて、使えることを知ってもらえたらと思います

世界へ金継ぎを広める活動
割れた器を美しくよみがえらせる金継ぎ。
「この感動を多くの人に知ってもらいたい」という思いから、圖子さんは今、イタリアを中心に漆を使った金継ぎの技術や文化を世界へ広める活動もしています。

金継ぎ師・圖子愛子さん:
世界の大事なものを直したい人の傍らに金継ぎがあるように、小さい種をまきながら活動を続けていきたいと思います
「壊れたから捨てる」ではなく「壊れたからこそ、より美しく」という発想の転換が、日本古来の金継ぎ技法です。

大切な器が割れてしまったときは、「金継ぎ つぎのば」に相談してみてはいかがでしょうか。
金継ぎ教室も行っているので、気になる人はサイトをチェックしてみてください。
【もっと見る! 伝統工芸の記事】
