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傷ついた心を健康な状態に戻す「リカバリー」。子供たちが自分自身で立ち直る力を育むために、親としてできることとは何か、育児漫画家の高野優さんが、自らの子供がサッカーで味わった苦しい経験を元に語ります。

テレビ静岡で2025年7月13日に放送されたテレビ寺子屋では、育児漫画家の高野優さんが「心を元に戻す リカバリーストーリー」というテーマで講演しました。
けがに泣かされたサッカー一筋の娘
育児漫画家・高野優さん:
心が傷ついた時に、その心を元の健康な状態に戻すことを「リカバリー」と言います。今の時代、子供に限らず、逆境に置かれたときに自分自身で耐えて立ち直っていくことがとても大切だと思います。
私には3人の娘がいて、これは小学1年生から大学1年生までサッカーひと筋だった三女の話です。
娘は運動神経が特別に優れていたわけでもなく、ただ負けず嫌いな性格で、何とかして周りに追いつこうと毎日練習を重ねていましたが、ベンチ要員のままでした。

大学に入り、ようやくスタメンでの出場が決まって親子で喜んだのも束の間、試合中に大けがをして、入院と手術を繰り返すことに。
そして結局、完治しないまま引退を迎えました。娘はどれだけ無念だったか。その後も悩んで、もがいて、荒れた時期もありました。

でも、しばらく経ったある日、「お母さん、新しい道を見つけたから、そっちで頑張りたい」と言われたんです。それはもう、晴れ晴れとした顔でした。
私は涼しい顔で「うんうん、良かったね」と返しましたが、内心では嬉しくてキャーキャー叫んでいました。時間はかかったけれど、本人なりに考えて立ち直ったんです。
子供が立ち直るため 親の三つの約束
子供の前に大きな壁が立ちはだかった時、自分自身でリカバリーできるようになってほしい。そのために私は自分に三つの約束をして子育てをしてきました。それは、「認める」「比べない」「寄り添う」です。
「認める」子供は“同じ哺乳類”

まずは「認める」。子供は生きている年数が少ないだけで、決して大人より劣っているわけではないと思います。だから、子供のことを対等だと認める。
とはいえ、親と子の立場では難しいこともありますよね。そんなとき私はざっくりと「子供は同じ哺乳類」くらいで考えていました。子供が何を言っても、頭ごなしに否定をせず、まずはどんな会話のボールもキャッチする。これが「認める」ということにつながると思います。
「比べない」たいていは落胆する
次に「比べない」。私は親や周りの大人から、兄弟と比べられて窮屈な思いをしてきました。
悔しさをバネにして進める性格であれば良いですが、たいていは比べられると落胆します。比べるなら、その子の一年前と比べて、成長していることに目を向けられたらいいと思います。
「寄り添う」“横から目線”がちょうどいい
最後に「寄り添う」。気持ちに寄り添っているかどうかは子供に伝わります。「上から目線」という言葉がありますが、子育て中は「横から目線」くらいがちょうどいいと思います。

共感して、同じ目線で喜んだり悲しんだりする。「親は自分をわかってくれている」という気持ちは、子供にとって安心できて、親への信頼につながります。
この三つの約束には「ジャッジをしない」という共通点があります。親はつい、「これはこうだ」とか「誰が悪い」とジャッジをしがちです。それをやめると、子供自身が考える力を持てるようになります。
挫折は挑戦の証 回復する力を信じる

平坦な道をゆっくりのんびり歩いていたら、挫折を味わうことはありません。挫折を経験したということは挑戦した証です。
人は誰しも回復する力を持っているはずなので、たった一人でも本気で寄り添い、応援してくれる人がいたら、自分自身で立ち上がっていけると思います。どうか寄り添い続けてあげてください。

高野優:育児漫画家・イラストレーターであり、三姉妹の母。2015年に、ベストマザー賞文芸部門受賞。漫画を描きながら話をする独特なスタイルで子育てに関する講演を行っている。
※この記事は2025年7月13日にテレビ静岡で放送された「テレビ寺子屋」をもとにしています。
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