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新型コロナが5類に移行して間もなく10カ月。海外からの訪日観光客も徐々に回復してきているようです。
こうした中、インバウンド需要を取り込み農村や漁村を活性化しようと、国も推進する体験型の農家民宿「農泊」が注目を集めているようです。果たしてどんな体験ができるのか、お伝えします。
”日本”を感じる宿泊体験を
自然豊かな環境で、地元の人との交流や食文化などの体験をする「農泊」。海外からの研修なども受け入れ新型コロナの影響から回復しつつあるようです。そこで静岡県御殿場市の農家民宿で、記者がその魅力を体験してきました。
雨宮帆風記者:
御殿場市の民宿に来ています。体験しているのは薪割りです。難しいですが、初めての体験。楽しいです
御殿場市二子にある農家民宿 松の葉(まつのは)。元蕎麦屋の女将・高橋暁子さんと夫の利典さんが夫婦で営んでいます。
高橋暁子さん:
ここを分けてみるととうが立っている、花が咲く前の。このとうをポきっと折れるところで摘みます。ちょっと分けてみるとよくわかると思う。こんな風にとうが立っているので、個々の根元をポキっと折ってください。これが水かけ菜です
水かけ菜は御殿場市の特産品です。
雨宮帆風記者:
水かけ菜の収穫時期は?
高橋暁子さん:
1月の終わりから3月中旬くらい
雨宮帆風記者:
今来る宿泊客が体験できる季節のイベントなんですね
食事はほとんどが自家製で、宿泊者自身が女将や大将と一緒に作ります。
自分で収穫した水かけ菜はお浸しに、自然薯はとろろに、アジやチーズは燻製にします。
さらに自分で割った薪を使ってかまどでご飯を炊く体験も!
雨宮帆風記者:
いま火がつきました
高橋利典さん:
ついたので吹竹で酸素を送ってもらう。火に向かって空気を入れる。上手!そんな感じ
雨宮帆風記者:
かまどで初めて炊きました。おいしそう
高橋暁子さん:
きれいに炊けました。ごてんばこしひかりです
コロナ禍の休業からインバウンド取り込みへ
農村や漁村に泊まって豊かな自然を活用した食事や伝統的な生活を体験する「農泊」。
御殿場市の二子地区では「ごてんば農家民宿村」として2018年から地域全体で取り組んできました。
新型コロナの影響で約3年間、休業を余儀なくされましたが、2024年から少しずつ宿泊客の受け入れを再開しました。
高橋利典さん:
予約を受けるとすべて埋まってしまうくらいの問い合わせがあります。コロナ前は日本人が多かったけど、再開してからは外国の方が9割
日本の農村ならではの体験を求めて、台湾やオランダなど海外からの宿泊客が増えているといいます。
御殿場市産業スポーツ部 農政課・勝間田嘉美さん
来てすぐに帰ってしまうのではなく、長い時間 御殿場を体験していただく。昔からある御殿場ならではの暮らしを体験していただける。台湾学生の受け入れから始まって、徐々に数が伸びてきているので、これからも利用者が増えてくれるかなと思っています
地域の文化やその土地の魅力を肌で感じられる「農泊」。これまでに訪れることのなかった観光客を新たに呼び込むきっかけになっていました。
高橋利典さん:
いろいろな国からきていただけている日本の魅力を世界に発信できる。御殿場の魅力を世界に発信できる、地域貢献もできていると思っています
国も推進する「農泊」農山漁村の活性化へ
「農泊」とは農山漁村に宿泊し、滞在中に地域資源を活用した食事や体験を楽しむことです。
農作業や共同調理、その農家が作った作物を食べることでより深く、その土地の文化や歴史、暮らしに触れることができます。
取材した雨宮記者は、御殿場市の「松の葉」で水かけ菜の収穫、湧水地までの散歩、夕食づくりを体験しましたが、それぞれの民宿で宿泊者限定の体験プログラムがありそうです。
御殿場市では「ごてんば農家民宿村」として2018年から市や観光協会などが取り組んできました。現在は二子地区を中心に7棟の農家民宿があるそうです。
宿泊客の推移をみてみると2020~2022年度は新型コロナの感染拡大で休業を余儀なくされ、宿泊者数も減少してしまいました。
2023年度は10月末までで146人となっており、3月末までに94人分の予約が入っているそうです。
御殿場市ではインバウンド対応として学生の研修旅行を始め、交流プログラムなど外国からの旅行者の受け入れも積極的に行っています。
2月22日~23日もフランスからの旅行者30名が農泊体験。海外10カ国から利用者が訪れているそうです。
また、松の葉の高橋さんは「心の交流ができた。日本の文化、御殿場の魅力を世界へ発信できる」と話してくれました。
農林水産省も農泊推進実行計画を策定していて、農山漁村への長時間の滞在と消費を促すことで、持続的な収益を確保して地域に雇用を生み出す狙いがあるそうです。
農泊地域数は2022年度末時点で全国621地域です。
農泊地域への宿泊者数はコロナの影響で大きく減少していましたが、現在はインバウンドの取り込みも積極的に行い、2025年度までに700万人という目標を掲げています。
「農泊」の盛り上がりにより地域の持続的な発展の可能性も広がりそうで、今後に期待したいと思います。
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