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井上尚弥や村田諒太を超えろ! 世界選手権王者はパリ五輪めざす ダブル“金”なるか 静岡

ボクシング界のヒーロー・井上尚弥 選手や村田諒太さんが成しえなかった偉業を達成できるだろうか。2021年に日本人で初めて世界選手権を制したボクサーが、パリ五輪出場をめざす。狙うのは世界選手権と五輪の両方での金メダル獲得だ。27歳、最後のチャンスだ。

五輪代表を2回連続で逃す

自衛隊体育学校(2024年1月)

2024年1月、五輪イヤーを迎えて静かに闘志を燃やすボクサーがいる。

パリ五輪ボクシング世界最終予選の日本代表で、浜松市出身の坪井智也 選手(27)だ。新年を迎え、坪井選手は「パリ五輪で金メダルをとるためにまずは出場枠をとりたい。パリで金メダルをとり有終の美を飾る」と抱負を語る。

ボクシングを始めた時の目標は「世界選手権で金、五輪で金」だ。2021年に世界選手権を制し、残るは五輪の金メダル。成し遂げれば日本人で初めての偉業だ。

日本大学では国内公式戦48連勝

村田諒太さんは2012年のロンドン五輪で金だったが、2011年の世界選手権は銀だった。井上尚弥選手は世界選手権に出場したものの敗退、五輪には出場していない。

坪井選手は小学6年生でボクシングを始め、浜松工業高校では国体で準優勝に輝いた。

日本大学に進んでからは国内公式戦48連勝と圧倒的な記録を打ち立てた。大学卒業後は自衛隊体育学校に所属している。

当然、五輪出場も有力視されたが、リオ五輪、東京五輪と2大会続けてあと一歩で出場権を逃し、「ここが引き際」と引退も頭をよぎったそうだ。

世界選手権を制覇したのに…

2021年世界選手権 優勝(バンタム級)

それでも2021年には世界選手権で日本人初の金メダル(バンタム級54kg)を獲得し、パワーにテクニックを融合させたスタイルで鮮やかな復活を果たす。

しかし、またも試練が見舞う。

世界を制した坪井選手はパリ五輪を見据え、これまでより3kgほど軽い彼本来の階級(フライ級51kg)に戻したが、この階級の変化で感覚に違和感が生じ、五輪出場枠をかけた2023年10月のアジア大会でまさかの敗戦。またも五輪出場枠を逃した。

坪井選手「減量は低い位置からの動きに影響」

坪井智也選手:
(2021年世界選手権を制した)あの動きは減量をしていない今はできる。体重を落とすとバネがなくなるので、きつくなる。(今後 減量しても)横の動きは足の感覚としては2021年より良くなると思う。ただ縦の動きや全体的な緩急、それに低い位置から入る動きは、できるけど(2021年に比べ)動かなくなっている

全日本選手権フライ級で優勝(2023年11月)

一度は動きに狂いが生じたが、フットワークなど基本練習を行い細やかな感覚を養った。

その地道なトレーニングで持ち前の力強さがよみがえり、2023年11月の全日本選手権では圧勝、フライ級で6年ぶり5度目の優勝を飾った。

「日本一」の称号を得て、再び五輪に挑む権利を手にした。

チャンピオンは“街の人気者”

親族のキッチンカーを手伝う(浜松市)

2023年の年の瀬、坪井さんの姿は地元・浜松にあった。束の間の休息に親族の飲食店を手伝う。

引き出しの多いボクシングスタイルとは違い、「他のスポーツは何もできない。ボクシングだけ」と妻・茉里子さんは言う。

義理の姉・弘中南香さん

不器用だけど飾らない。そんな彼の姿は、自然と周囲を引き付けていた。

義理の姉・弘中南香さんは「真面目で、まっすぐな子。試合を全部見ているので応援したい」と活躍を期待する。

妻・茉里奈さんと

坪井さんの普段の生活の様子を「普通」と言う妻・茉里奈さんは「心配はありますね。『パンチだけはもらわないでね』と話しています」と夫を気遣う。

妻の言葉を隣で聞いていた坪井さんは「もうちょっと頑張って、安心して見てもらえるよう頑張ります」と笑った。

記念撮影を求められることも

繁華街の賑わう年末、チャンピオンベルトを手にした坪井さんの周りには人が集まり、期待の声をかけていた。

そんな応援や支えに応えたい。ひた向きな姿勢が強さにつながっているのかもしれない。

もうひとつの金メダルめざし

世界最終予選ベスト4入りで出場権獲得

最高の恩返しとなるパリ五輪での金メダルへ。まずは出場枠をかけた戦いが目前に迫っている。

パリ五輪出場権がかかる世界最終予選は、第1次のイタリア大会が2月29日から3月12日まで、第2次のタイ大会が5月23日から6月3日まで開かれる。どちらかの大会でベスト4以上に入れば出場権が獲得できる。

世界選手権を制覇し 残るは五輪の金

五輪出場へ3度目の挑戦・坪井智也 選手:
第1次予選で必ず決め切りたい。ボクシングを始めた目標が「世界選手権で金、オリンピックで金」だったので、目標をしっかりかなえて区切りをつけたい

世界選手権に続き、夢の五輪でも目指すはチャンピオン。

その先は栄冠に続いているはずだ。

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