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静岡市の山間部・オクシズに、海外からも注目されているウイスキーの蒸留所があります。ガイアフロー静岡蒸溜所です。この夏訪れてみたいのが見学ツアー、押さえておきたい見どころを紹介します!
ウイスキーが世界的なブームに
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いま、世界じゅうでウイスキーがブームになっているのをご存じでしょうか。メイド・イン・ジャパンのジャパニーズウイスキーも大人気です。
日本のウイスキー輸出額は17年連続で増加しており、2020年には清酒を抜いてトップに躍り出ています。
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世界的なウイスキー人気を追い風に、蒸留所も増えています。
2001年頃、稼動している国内のウイスキー蒸留所は5カ所ほどでした。それから21年経った2022年時点で、国内のウイスキー蒸留所は80を超えました(計画段階のものも含めると、2023年7月時点で100を超えたともいわれています)。
静岡県にも現在5つの蒸留所があり、そのうちのひとつが、今回ご紹介するガイアフロー静岡蒸溜所(以下、静岡蒸溜所)です。
静岡市初のクラフト蒸留所
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静岡蒸溜所は、清水区出身の中村大航さんが2016年に設立した、静岡市初のクラフト蒸留所です。
静岡駅から安倍川沿いに車で40分ほど走った、オクシズエリアにあります。ちなみに、クラフト蒸留所とは一般的に、サントリー、ニッカ、キリンのような大手メーカー以外の小規模蒸留所を指します。
オクシズは、アクセスが良いとはいえない立地です。それにもかかわらず、見学ツアーの参加者には、県外はもとより海外からの観光客も少なくなく、国内外のウイスキー関係者からも関心を集めています。
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静岡蒸溜所のなにがそんなにすごいのか? 厳選に厳選を重ね、見どころを3つご紹介します!
見どころ~1~ 静岡愛があちこちに!
地元農家の大麦使用がすごい
ウイスキーは、大麦麦芽(モルト・大麦を発芽させたもの)を100%使用してつくるモルトウイスキーと、とうもろこしやライ麦などを使用してつくるグレーンウイスキーに大別できます。静岡蒸溜所がつくっているのはモルトウイスキーです。
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原料であるモルトは、おもにヨーロッパで生産・製造されていることもあり、国内外問わず、多くの蒸留所がヨーロッパから輸入しています。
けれど近年は、自国産、地元産原料にこだわる蒸留所も増えつつあり、静岡蒸溜所もそのひとつ。日本産モルト100%のウイスキーをリリースしているほか、地元の提携農家が栽培した大麦を使ったウイスキーづくりにも取り組んでいます。
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実はこれ、けっこうすごいことなんです。そもそも日本では大麦の収穫量が少なく、価格も海外産に比べるとお高くなっています。
国産モルト100%にこだわる=コストがかかることを意味し、それが静岡産となればなおさらです。蒸溜所としては、ゆくゆくは100%静岡産のウイスキーをリリースしたいとのことでした。
世界初スギの発酵槽がすごい
またウイスキー製造には、モルトに水や酵母を加えて発酵させる工程があります。発酵槽、あるいはウォッシュバックと呼ばれる発酵のための容器は、ステンレス製かオレゴンパインという木材を用いた木製が一般的です。
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ところが静岡蒸溜所では、地元のスギを使った発酵槽を一部導入しています。スギの発酵槽、世界初の試みです。よその蒸留所ではお目にかかれません。
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ほかにも、蒸溜所の建物に地元産のヒノキが使われていたり、後述する蒸留工程でも地元の間伐材を利用した薪が使われていたりと、まさに静岡愛にあふれた蒸留所となっています。
見どころ~2~ 世界唯一!薪の直火蒸留
お酒はその製造法によって醸造酒、蒸留酒、混成酒に分類できます。
●醸造酒…穀物や果実に含まれる糖分を、酵母によってアルコール発酵させたもの。清酒、ビール、ワインなど。
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●蒸留酒…原料をアルコール発酵させて醸造酒にしたあと、蒸留したもの。ウイスキー、ブランデー、ウォッカ、ジンなど。
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●混成酒…醸造酒や蒸留酒に果実や香料などを加えてつくったもの。梅酒、リキュール、みりんなど。
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ウイスキーは蒸留酒なので蒸留する工程があり、このとき活躍するのがポットスチルです。スチル、蒸留釜、蒸留器などとも呼ばれます。
ウイスキー製造で使われるポットスチルは銅製が基本で、蒸留方法は加熱方法によって間接蒸留と直火蒸留に分類できます。
間接蒸留は、ポットスチル内部に設置されたパイプ等にスチーム(蒸気)を通して加熱して蒸留します。直火蒸留はその名のとおり、ポットスチルの底を直火で加熱して蒸留します。やかんをガスコンロにかけるようなイメージです。
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現在の主流は間接蒸留で、伝統的な直火蒸留を採用している蒸留所は世界的にみても少なくなっています。
そんななか静岡蒸溜所は、3基あるポットスチルのうち1基で直火蒸留を採用しているのです。しかも! 直火蒸留の熱源はガスが一般的ですが、静岡蒸溜所はなんと薪を使用しています。
薪による直火蒸留を行っているのは、世界唯一、静岡蒸溜所だけといわれています。さらに、燃料として使われる薪は地元で伐採された間伐材。ここにも、静岡愛が感じられます。
直火蒸留は毎日行われているわけではありませんが、タイミングがよければ、見学ツアーで見ることができます。
世界でもとても貴重な光景です! 遭遇したら、忘れずに写真&動画を撮ることをおすすめします。
見どころ~3~ 伝説の蒸留所のレガシーに会える
ウイスキーはアルコール度数が高いため、通常2回に分けて蒸留します。(ごくまれに3回行う蒸留所も)。1回目の蒸留(初留)と2回目の蒸留(再留)は、別のポットスチルで行うのがスタンダード。そのため多くの蒸留所は、ポットスチルは2基1セットが基準となっています。
けれど、静岡蒸溜所のポットスチルの数は3基。そのうち1基は前述の直火蒸留対応のスチルで、スコットランドのフォーサイスというメーカーのものです。もう1基は再留用で、こちらもフォーサイス社製です。
残る1基は静岡蒸溜所では「ポットスチルK」と呼ばれており、こちら、往年のウイスキーファンにとっては拝みたくなるようなシロモノなのです。
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長野県の軽井沢エリアにかつて、軽井沢ウイスキー蒸留所がありました。同蒸留所がつくるシングルモルトウイスキーは海外でも高い評価を得ていましたが、2012年に完全に閉鎖。軽井沢ウイスキー蒸留所の製品はファンの間では垂涎のアイテムとなっています。そんな伝説の蒸留所で使われていたスチルが、ポットスチルKなのです。
直火蒸留の様子とともに、軽井沢ウイスキー蒸留所のレガシーであるポットスチルKも、ぜひぜひ激写しておくことを推奨いたします。
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見学ツアーに参加しよう!
静岡蒸溜所では定期的に見学ツアーを実施しています。料金は1人1100円(20歳以上)。
製造過程から、できあがったウイスキーをたるに詰めて熟成する熟成庫まで、約60分かけてたっぷり見て回れます。また、試飲室ではテイスティングも可能です(別途有料)。
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参加すれば、静岡蒸溜所の見どころをくまなく見られて、ウイスキー製造の基本工程もまるっと理解できることうけあいです。
記事を読んで3つのポイントを頭に入れたら、この夏、見学ツアーに参加してみてはいかがでしょうか。
■施設名 ガイアフロー静岡蒸溜所
■住所 静岡市葵区落合555
■問い合わせ 054-292-2555
文/小川結子