お弁当を入れる弁当箱として、静岡県静岡市の山間部で作られているのが、「井川メンパ」です。ご飯を入れればおいしくなるという郷土の逸品を未来へつなごうと挑戦する職人に思いを聞きました。
天然のヒノキ材に、漆の光沢が美しい弁当箱。
静岡県静岡市葵区の山間地・井川の郷土工芸品「井川メンパ」です。
その歴史は古く、起源は室町時代にさかのぼります。
江戸時代末期には農村の副業として、井川地区の住民の生活を支えたと伝わっています。
大井川めんぱ大井屋・前田佳則さん:
新しいことと古いことを両方合わせてやっていきたい。それが生き延びる戦略
受け継がれてきた伝統を守り、後世へ紡いでいこうとメンパ作りに向き合い続ける1人の職人がいます。
新たな挑戦にかける思いとは。
大井川めんぱ大井屋・前田佳則さん(48)。
川根本町でメンパの製造を行っています。
前職は大都市・横浜で中古車のバイヤーをしていましたが、「自然豊かな場所で暮らしたい」と30代半ばで移住を決めました。
大井川めんぱ大井屋・前田佳則さん:
当時リモートワークなんてものはなかった。どうしようかと思った時「井川メンパがある」と思い出した
実は井川にルーツを持つ前田さん。
1年の修業を経て、2016年自然が豊かで観光地でもある川根本町に移住し、店を構えました。
メンパ1つを作り上げるのにかかる期間は約2カ月。
材料となるヒノキやサクラは、大井川流域で育ったものを使っています。
大井川めんぱ大井屋・前田佳則さん:
昔から、この辺りのヒノキは揺れても中で割れないような粘り強さを持っている。剛性さ・硬さ。そういうものを兼ね備えたヒノキ。山のことを知っているおじいちゃんが大勢いる。「今年もあれを切ったらどうだ」と言ってきてくれる
この地に身を置いて10年。
地域との関わりの中で、伝統が繋がっていると手応えを感じています。
前田さんがメンパの魅力の一つと胸を張るのが、詰めたご飯がおいしくなること。
漆とご飯が触媒反応を起こして酵素が増えることで、ご飯が柔らかく旨味が増すと太鼓判を押します。
ご飯やおかずを詰めるのは一見難しそうですが、オススメの詰め方を教えてもらいました。
大井川めんぱ大井屋・前田佳則さん:
まずご飯を底の方にぐっと詰めて層を作る。そうすると下の方で熱がこもり、酵素反応が起きやすい。ご飯の上におかずを並べていく、のっけ飯みたいなスタイル
そして最も価値があると自信を見せるのが「長く使い続けられること」です。
15年から20年に1度漆を塗り直すことで何十年も使用できるため、塗り直し修理も行っています。
新しいものがすぐに手に入るこの時代に、一つのものを長く使い続けることの良さが漆器にはあると考えています。
大井川めんぱ大井屋・前田佳則さん:
その人にとって父・祖父が使っていたメンパは大切。値段ではかれない、大事なストーリーがある
前田さんは3年ほど前「大井川漆器」という新たなブランドを立ち上げました。
弁当箱だけではなく、メンパ作りの技術がより多くの人の生活に浸透できるよう、お椀やお皿など展開する商品は様々です。
大井川めんぱ大井屋・前田佳則さん:
どんなことがあっても100年、200年先に、皆さんが井川メンパを使い続けられる世界を作るのが私のテーマ。おいしいご飯を食べるということが一番の世界平和だと思う。「100年先メンパを使って」と言う以上、100年先を作っていくのが今の仕事
受け継がれてきた伝統を、さらなる進化へ。
前田さんの挑戦は始まったばかりです。
