
野鳥などにエサをあげることで糞害につながり、周辺の住民が被害を訴えるという事例がいま、静岡市で相次いでいる。注意されてもなおエサやりを止めない理由は何なのか?本人を直撃した。
静岡市葵区の中心市街地からほど近い場所で、周辺の住民が長年にわたって頭を悩ませているのが野鳥による糞害だ。
記者が確認すると、夜が明けた午前6時頃にはカラスやハトが電線に集まり始め、問題となっている家の目の前を走る道路の脇には、数十メートル先まで糞が散らばっている様子を確認することができた。
近隣住民によれば、当該の住人はドッグフードを大量に購入した上でカラスにエサとしてあげているといい、5月には市から野鳥へのエサやりを止めるよう命令を受けていたにもかかわらず、命令に背いた疑いで書類送検されている。
迷惑なエサやりをめぐって、動物愛護管理法違反容疑で警察が検挙に踏み切ったのは県内では初めてで、全国でも2例目のことだ。
野鳥への迷惑なエサやり行為は10年以上に及び、市はこれまで指導を6回、勧告を2回、そして中止命令を1回出していた。
周辺の被害は深刻で、駐車場に止められた車の持ち主はカバーをかけて野鳥の糞尿で車体が汚れないよう対策しているが、ネズミが住み着くなど衛生面での不安は尽きない。
なぜ、エサやり行為を続けるのか?
件の家を訪ねたが、電気はついていて人影はあるものの反応はなく、インターフォンも押せない状態で話を聞くことはできなかった。
静岡市によると、野生動物や野鳥へのエサやり行為をめぐるトラブルは後を絶たず、現在も20カ所あまりについて近隣住民から苦情が寄せられていて、同市環境共生課の鈴木勇海さんは「エサやり行為自体は法律で禁止されていないので、それ自体の禁止はできないが、過度なエサやり行為によって近隣の環境に影響を及ぼすおそれがある場合は条例や法律に抵触する可能性があると考えている」と話す。
このため、市は住民から指摘のあった場所を中心に定期的なパトロールを行っている。
ただ、理解を得られるケースばかりではなく、エサやり行為を止めるよう強制できない 歯がゆさも感じていて、鈴木さんは「衛生的な問題や付随する野鳥の死骸処理などは行政に苦情や相談という形で来るので、そういう部分への対応や説明に苦慮している」と打ち明ける。
この日は倉庫でハトに餌付けしている人がいるとの通報を受け、現場を確認。
倉庫は扉が開けっ放しになっていることからハトが頻繁に出入りし、近寄った鈴木さんは思わず「くさっ」と声をあげた。
近隣住民は「自分ではかわいがっているつもりだろうが、私たちからすると迷惑。ただ、それをはっきり言ってもわからないと思う。自分の敷地内でエサを撒いているのに何で文句を言うのかという感じ」とあきらめ気味だ。
そこで、倉庫を所有する男性に電話をかけてみると「ケガをしたハトや飛べないハトがいる。そのハトが小屋(倉庫)に居ついてしまっているからエサを与えているが、他のハトが飛んできて奪いに来るという感じ。自分がケガをしたハトの治療していたら、それを見つけてエサを求めて来るようになった。もともと公園にいたハトだ」との持論を展開。
そして、悪びれることなく「弱った動物がいたら見過ごせないというのが、生まれ持った性分」と言い切った。
とはいえ、男性によるエサやり行為は10年以上も続いているといい、別の近隣住民は「『ハトにエサをあげないで』と言うんだけれど、聞く人ではないから『へへへ』で終わってしまう」と肩を落とす。
このため、前出の鈴木さんは「エサやりをしたくなる気持ちもわかる」としながらも「近隣とのトラブルや衛生的な面での被害につながることも事実なので、そういった部分も踏まえて、まずは『やめてほしい』と伝えたい」と述べた。
動物愛護管理法は人と動物が共生する社会の実現を図ることを目的としていて、ただ動物がかわいい、可哀想というだけでは許されない、周囲にも配慮した自覚ある行動が求められている。
