物価高やイラン情勢の悪化に伴う原油高など、この数年間で食料品や様々な資材を取り巻く環境は大きく変わりました。さらに社会の変化も相まって、町の弁当店はいま、かつてない苦境に立たされています。
静岡市葵区馬場町の地で地域から20年以上にわたって愛されている「たんぽぽ」。
こだわりは手作りかつ無添加の弁当で、保存料や着色料は一切使っていません。
常連客:
添加物が入っておらずおいしいのでよく来る
常連客:
ひとつひとつが丁寧に作られていておいしい
しかし、こうした町の弁当店はいま、かつてない苦境に立たされています。
帝国データバンクによると、仕出しやテイクアウトを中心とした弁当店の倒産は2025年、1年間で55件。
2年連続で過去最多を更新しました。
背景にあるのは、リモートワークの一般化に加え、会議や法要などの大口発注の減少、さらにはスーパーやコンビニとの熾烈な価格競争も影響しています。
たんぽぽの店長・鈴木信也さん(46)。
前のオーナーから3年半前に店を引継ぎ、現在は妻の綾子さん(41)と二人三脚で店を切り盛りしています。
たんぽぽ・鈴木綾子さん:
3年半前から現在に至るまで、いろいろなものが予想を超える値上がりをしている。特に去年は米がなく(価格が)倍以上になって、いまは少し落ち着いてきて値段が下がっているがそれでも高止まりが続いている状況。さらにここにきて資材不足で資材も高くなっている
原材料費の高騰に伴い、から揚げは鶏のもも肉の使用をやめ、むね肉へと変えました。
それでも…
たんぽぽ・鈴木信也 店長:
から揚げもやめるかもしれない。それも考えている。油も業者からは(値段が)上がると言われていて、上がり幅が尋常ではない
たんぽぽ・鈴木綾子さん:
手袋も同じ型は入ってこないと言われている。違う型になると言われている。値段は上がるらしい。まだ業者自体が大元から言われていないと。あまりにもパニック状態で
衛生管理の観点から必要不可欠な手袋や弁当容器などの石油由来の製品は軒並み3~4割の値上げを伝えられているため、やむを得ず5月から弁当の販売価格も引き上げました。
たんぽぽ・鈴木綾子さん:
(値上げを)しなくていいならしたくない。お客さんにも負担がかかるので、踏ん張りたいところではあるが、私たちもいろいろと何個も(工夫を)してきた上で、ここまで想定を超えた値上げをされてしまうと、もう太刀打ちできないという感じ
早朝から5時間にわたる仕込みを終えると、休む間もなく配達や販売会に向かう綾子さん。
人件費を削るためスタッフの人数を最盛期の3分の2へと減らしたことで、夫婦の負担も以前より増しています。
たんぽぽ・鈴木綾子さん:
本当は辞めてほしくないスタッフもたくさんいたが、「本当に申し訳ない」と言いながら辞めてもらった。スタッフが自分の意思でいなくなったとしても、補充をせず私と店長でどうにか踏ん張っている
ただ、どんなに厳しい状況であっても無添加・手作りというこだわりを捨てることはありません。
常連客:
なかなか無添加の店はないのでそれがいい
それが、長年にわたって多くの人から支持されるたんぽぽのアイデンティティだからです。
たんぽぽ・鈴木綾子さん:
お客さんが温かく、「お互い頑張っていこう」と言ってくれるので、それを励みにしてお客さんを裏切ってはダメだといつも力にしている。こういう時だからこそ、みんなで手をつないで情報を共有しながら頑張って、お客さんとも一緒に乗り越えていけたらなと思う
特に個人経営の弁当店にとっては冬の時代とも言える昨今。
先が見えない中ではありますが、“たんぽぽ”の名に込められた“地域に深く根差す”という願いを体現するためにも、夫婦はきょうも店に立ち続けています。
