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コロナ禍で圧倒的に減った直接的なコミュニケーション。中でも他人とのスキンシップは避けられてきました。しかしスキンシップは、絆を深めるためにとても重要な役割を果たすのです。
テレビ静岡で6月4日に放送された「テレビ寺子屋」では、京都外国語大学教授のジェフ・バーグランドさんが、「タッチコミュニケーション」について語りました。
赤ちゃんに言葉を聞かせなかったら
大学教授 ジェフ・バーグランドさん:
私は子供のころから、人と人が通じ合うのが不思議だなと「コミュニケーション」に興味がありました。
13世紀にやはりコミュニケーションに興味を持つ、フリードリヒ2世という皇帝がいました。
人間は生まれ育った環境で言語を習得する。つまり生まれた国の言葉が話せるようになるのですが、「赤ちゃんが小さい時から言葉を聞かなかったらどんな言語を使うようになるのか」と疑問を抱き、ある実験を考えました。
生まれたばかりの赤ちゃんに、おっぱいを与え、おむつを取り替える以外の触れ合いや言葉かけをしないと、10カ月ぐらいしてどの言語が出てくるのかというのです。
しかし実験は失敗に終わりました。ほとんどの赤ちゃんが、幼いころに命を落としてしまったのです。人間は触れ合いや言葉かけが、いかに大事かがわかる実験になりました。
特に体で物を感じるのが、非常に大切なのです。私たちと環境をつないでいるのは皮膚です。「言葉かけ」と「スキンシップ」は、命を育むということが分かりました。
様々な種類の「タッチ」
「非言語(言葉ではない)コミュニケーション」において、「タッチ」は大きなテーマです。「タッチ」を理解するとき、まずは3つの側面を考えます。
◆「セルフ」と「アザー」
自分が自分を、自分が相手をなど、誰が誰に触れるのか。
◆「Intentionality(インテンショナリティ)=意図的、志向性」
触る意識があるのかないのか。
◆「直接」と「間接」
直接触るのか間接的か。
次に「タッチ」の種類です。
◆「プロフェッショナルタッチ」
専門的(職業的)なタッチ。美容室や接骨院など。
◆「ソーシャルタッチ」
社会が認めているタッチ。握手やハグなど。
◆「フレンドリータッチ」
友達関係のタッチ。よくやったね、と背中を叩くなど。
◆「インティメイトタッチ」
恋人や家族同士のタッチ。手をつなぐ、キスなど。
スキンシップで出てくるラブホルモン
タッチをすると「絆ホルモン」と呼ばれる「オキシトシン」が出てきます。英語では「ラブホルモン」とも呼んでいます。
特に「フレンドリータッチ」や「インティメイトタッチ」をすると、脳の中でオキシトシンが増えていく。すると非常に気持ち良くいられるのです。
タッチコミュニケーションで絆を深めていくためには、お互いの「気持ち」がとても大切です。
私は日本に来て、日本人のタッチに驚きました。あまり公の場所ではしませんが、家族の中で子供が一定の年齢になるまで、しっかりスキンシップを取っているように感じます。
例えば一緒にお風呂に入ったり、一緒に寝たり。アメリカではこれはダメなのですが、日本では社会として認めていて、とても気持ち良くスキンシップが取れていると思います。
「タッチ」で深める絆
いま私たちは、どんどんタッチが少なくなる社会の中にいるように感じます。
いつ、どこで、誰に、などは十分に意識しながらですが、絆を深めるためのコミュニケーションとして、「タッチ」はとても大切です。
みなさんも「タッチコミュニケーション」を考えるきっかけにして、もっとオキシトシンが多い生活を送ってほしいと思います。
ジェフ・バーグランド:1949年米国生まれ。高校教師歴22年と、大学の指導では20年以上のキャリアを誇る。50年以上京都に住み、京都国際観光大使も務める。専門は観光と異文化コミュニケーション。
※この記事はテレビ静岡で2023年6月4日に放送された「テレビ寺子屋」をもとに作成しています。