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静岡・沼津市、海辺の一角にたたずむ数寄屋造りの建物は築110年を超え、国指定の文化財に登録されている「茶亭」です。水と緑と静けさに包まれた、ラグジュアリーホテル「沼津倶楽部」で過ごす時間は、ゆっくりと流れていました。
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沼津港から北へ歩いて約10分。松林が美しい千本浜にある隠れ家的な宿、「沼津倶楽部」。若山牧水記念館の向かいにあります。

駐車場に車を止め歩き出すと、大正2年に造られた「長屋門」が見えてきます。2015年に国の有形文化財に登録されたこの門は結界のような存在で、門をくぐると日常からかけ離れた別世界が広がっていました。

長屋門を抜けると、古松2本がその体を大きくくねらせ互いに寄り添う「夫婦松」が、客の到着を歓迎してくれているようです。
夫婦松をくぐり抜けると3000坪の庭園「松石園」が広がっています。黒松をはじめとする81本の樹木が美しく配置され、季節や時間によって異なる表情を見せてくれるため、夕暮れや早朝に何度も足を運びたくなります。

築110年を超える数寄屋造りの建造物は「茶亭」です。国の登録有形文化財で希望すればスタッフの方が案内してくれます。
茶亭は大阪の企業「ミツワ石鹸」の創業家2代目、三輪善兵衛が1913年(大正2年)に建てた別邸です。
ここは将棋のタイトル戦「棋聖戦」の対局会場として有名です。長年にわたり多くの名勝負の舞台となりました。将棋ファンには聖地とも言えます。

宿泊者のラウンジとして使用されている部屋は「昭和の間」と呼ばれ、戦後に復興会議や政治活動の拠点となったそうです。
部屋の窓から正面に見える長い年月を刻んだ古松が、この地の歴史を見守ってきたかのような風格をたたえています。
わずか8室の客室

2008年、宿泊棟の増築により沼津倶楽部は宿泊施設となりました。全室から眺めることのできる静けさをたたえた水盤と、庭園の緑が最高の癒し空間を創り出しています。
建築家・渡辺明さんによって設計され、駿河湾の波音と千本松原の風景に寄り添うよう設計されたそうです。

客室の玄関は全面がガラス張りでかなりオープンです。
扉を開けると外の空間と室内が一体化し、耳を澄ますと駿河湾の波音が聞こえてきます。

今回宿泊したのはデラックス畳ルームです。広々としたリビングの奥には和室の空間があり、いつでもゴロリと横になってくつろぐ事ができます。和と洋が融合し、落ち着いたモダン空間となっています。
他にもベッドタイプの部屋もあり、布団よりもベッド派という方にはおすすめです。

沼津スイートはバルコニーも広く、なんと露天風呂付です。天気が良ければ満点の星を見ながらのんびりと入浴できます。
デラックス畳ルームの内風呂は、木のぬくもりに包まれたやすらぎの空間となっています。

ヒノキ造りの内風呂で、富士山の伏流水が浴槽を満たします。
バスローブやアメニティーもバッチリ完備です。
歯ブラシやヘアブラシもこだわりを感じます。かわいい布巾着に入れて持ち帰りも可能です。旅のいい思い出になりそうです。

客室の冷蔵庫にはジュースやアルコールが充実しており、すべて無料で飲むことができます。
飲み物は季節によって内容が変わります。来訪時は伊豆のニューサマーオレンジや、地元西浦のミカン「寿太郎」の柑橘ジュースがありました。

ウエルカムドリンクには地元が誇るクラフトビール「ベアードビール」と、シャンパンをもらいました。そして、おやつは地元、西浦のレモンフィナンシェです。丁寧な心づかいを感じます。

おしゃれなミニキッチンには鉄瓶でお湯を沸かすお茶セットに加え、松の香りがするクラフトジン「盆栽」と炭酸水が。松林が広がる土地柄にぴったりのチョイスです。

茶亭でモダンチャイニーズのディナー
夕食の会場は登録有形文化財の茶亭で。
ぜひ「窓ガラス」に注目してください。現代のガラスとは異なり、わずかな揺らぎを含んだ質感の「吹きガラス」が使用されています。

その微細な不均一さが差し込む光をやさしく拡散させ、室内にほのかな陰影を生み出します。外の景色もまた、くっきりと切り取られるのではなく、どこかにじむように映るのが特徴です。
夜のディナータイムと朝食時では別の雰囲気を味わう事ができます。

ディナーはモダンチャイニーズのコース料理です。中華と言っても和食のテイストを感じ、なおかつ洋食の技法も加わったグローバルで気取らない料理。季節ごとに内容も変化します。

コース料理の特徴でもある「テーブルで完成する料理」がフカヒレです。肉厚なフカヒレが盛り付けられた鉄板に、目の前でスープを注ぐと一気に白い湯気が立ちのぼります。

この焼き目が香ばしく、歯ごたえのあるフカヒレは絶品です。私のフカヒレ料理史上、最高と言っても過言ではありません。
そして、だしが十分に溶け出したこのスープにはさらに重要な役割があります。

お米です! 既にリゾットに調理されたお米を途中で投入してくれるのです。フカヒレの食感とスープを十分に堪能してから、リゾットとして一滴も余すことなく味わえる一品です。

「帆立の春巻きキャビア添え」は一見シンプルな料理に感じましたが、肉厚でジューシーな帆立が春巻きになることでパリパリ食感と融合し、さらに添えられたキャビアで一気にフレンチとしての頭角を現します。

単品でオーダーできる「トリュフ炒飯(3000円)」は、インパクト抜群です。トリュフの旬である冬から春先にしか食べられない季節限定メニューです。
目の前でトリュフを削ってくれるので、その香りに驚きます。お米が見えなくなるほどのボリュームで周囲からの視線がくぎ付けになる一品です。

メインダイニングの他にも個室空間があります。大事な食事会や家族のアニバーサリーなどで使用したい方は、ミニマムチャージが設定されているので、事前の問い合わせと予約が必須です。

宿泊しなくてもレストランの利用は可能です。
ランチは「ショートランチコース(5750円~)」と「茶亭ランチコース(8625円~)」、そしてディナーと同様の「季節のおまかせモダンチャイニーズコース(1万7250円~)」が注文できます。
ディナータイムにも、少しボリュームを抑えたい方にはうれしい「ショートディナーコース(1万1500円~)」があります。

食後はバーでのんびりと過ごすのもお勧めです。和空間のバーは宿泊者専用で畳に座布団の落ち着いた雰囲気です。カウンターはうれしい掘りごたつ式になっています。
星空を眺める露天風呂・心やすらぐ極上スパ

各部屋におしゃれな内風呂もありますが、さらに極上スパも利用できます。
オーストリアの温泉地・バドガシュタイン周辺で産出される天然鉱石が敷き詰められた浴槽でラドン浴をすれば、温熱効果で体がポカポカです。その他にもサウナや、岩盤浴があり汗を流した後は水風呂やリラクゼーションスペースもあるので疲れた体のリセットに最適です。

体が整う豪華朝食
朝のメインダイニングは清々しく、庭の古松を眺めながらまずは飲み物をオーダー。地元で採れる西浦のミカン「寿太郎」100%のジュースです。

テーブルに運ばれた数々の料理は新鮮な地元食材が多く、シンプルな味付けで素材の味を重視した朝食です。
ディナーで大満足した翌朝ですから、胃に優しいお粥がうれしいです。しかし、お粥のお供の副菜が豪華です。

さらに、追加でボリューム感のあるシューマイと麺が運ばれてきました。どれも上品な薄味で体が整う健康的な朝食でした。

鎌倉の名店「イチリン ハナレ」の齋藤宏文シェフ監修のもと、厨房で腕を振るうのは瀬戸克幸料理長です。繊細さとワイルド感が融合したコース料理はお見事です!
1ミシュランキーを獲得
ミシュランガイドのホテルの格付け「ミシュランキー」で、2年連続、1ミシュランキーを獲得した沼津倶楽部。特別な滞在を提供しているホテルに贈られる栄光です。

大正時代の茶人でもあった三輪善兵衛は、千人茶会を開催したいとこの地に別邸を築きました。その夢舞台が沼津倶楽部です。
令和になった今も当時の姿で客人の訪問を心待ちにしています。
大切な記念日に、大切な人と訪れたい。そんな特別な宿にすっかり魅了されました。
■施設名 沼津倶楽部
■住所 静岡県沼津市千本郷林1907-8
■問合せ 055-954-6611
■駐車場 あり
取材/髙橋麻子
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