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静岡・御前崎市を車で走っていると、茶畑が広がる道沿いに気になる看板を発見しました。その名も「塩ノ段鉱泉(しおんだんこうせん)」。調べてみると大正時代に持ち上がった温泉施設計画があったことが判明。現在、鉱泉はどんな様子なのか見に行ってみました。
【画像】記事中に掲載していない画像も! この記事のギャラリーページへ牧之原台地に人知れず湧きつづける鉱泉
塩ノ段鉱泉は御前崎市立浜岡北小学校から、南西に300mほど牧之原台地を下った新野地区にあります。
道路から中が見えないので、気にしていなければ通り過ぎてしまいそうですが、茶畑の中にあるお堂が目印になります。

「塩ノ段鉱泉」と書かれた木の看板が道路沿いにあります。
環境省の指針では、鉱泉とは地中から湧き出る水。その中にガス状物質、固形物質、特定の物質を含んでいるもの。またはその源泉周囲の平均気温よりも著しく温度が高いものをいいます。
こんな場所に鉱泉が湧いているのでしょうか。

駐車場はないため、注意してください。茶畑に囲まれた静かな場所に湧いているという鉱泉へ、いざ潜入です!
周囲に漂うケミカルチックな臭い
看板の奥からのぞいてみました。一見すると沼のような見た目です。
周辺にはヨウ素入りのうがい薬を水で薄めたものに微量のガソリンを混ぜたようなケミカルチックで甘い臭いが漂っていました。
一般的な温泉のような硫化水素の臭いは特に感じられず、初めて嗅ぐ臭いです。

足元は少しでも踏み外したら、沈んでいくような不安定な柔らかさで、鉱泉の内部には入れません。
同行していた筆者の家族は誤って足を滑らせてしまいましたが、まるで重油のような真っ黒な泥が付きました。
滑り止めのマットも敷いてありますが、近づく際には足元に細心の注意を払ってください。

わずかにブクブクという気泡が出る音がしています。
じっくり観察してみると、泥の中から気泡が出ている場所がありました。気泡は常に出ているわけではなく、勢いよく次々と出てきたかと思えば、しばらく静まるといったように不規則な動きを繰り返していました。

風向きのせいか、噴出口からは先ほどのような独特の臭いはしませんでした。
湧き出る鉱泉の温度を測ってみた
外側から一番近くの噴出口に温度計を差し込み、温度を測ってみました。
家庭用の温度計のため、正確な温度は分かりませんが約10度前後でした。恐るおそる手で触れてみても熱気は全く感じられず、例えるならば秋口に少し冷たく感じる水道水のようでした。

道路側には行政が設置した看板があり、歴史や成分表が記載されています。
それによると、塩化物イオンやナトリウムイオンが多量に検出されていて、「味は塩辛く」とも書かれています。

中でも目を引くのはここに温泉の保養施設をつくろうとしていた計画のこと。近くの塩ノ段池にはボートを浮かべる構想だったようです。頓挫したようですが、なかなかロマンを感じます。
更に詳しいことを知ろうと地域の人に尋ねてみましたが、存在は知っていても詳しくは分からないとのことでした。
周辺地域に詳しい専門家の見解は?
そこで、地学が専門の「ふじのくに地球環境史ミュージアム」客員教授・柴正博さんに教えてもらいました。
塩ノ段鉱泉は対象外でしたが、柴さんは過去にこの付近の地域を地質調査をしたことがあるそうです。

牧之原台地の鉱泉は珍しいのでしょうか。
ふじのくに地球環境史ミュージアム・柴正博客員教授:
この地域、特に牧之原台地の西側の新野は掛川層群の調査で何度も行きました。しかし調査中にも鉱泉については話を聞いたことはないので、珍しいかもしれません
柴さんの著書「駿河湾の形成」に掲載されている周辺地域の地質図で、塩ノ段鉱泉がある新野地区の地質を確認します。

ふじのくに地球環境史ミュージアム・柴客員教授:
塩ノ段鉱泉は、砂岩と泥岩が交互に積み重なった地層の上にあります。砂岩には水・油・ガスが砂の隙間にあり、泥岩は水を通しにくいので、それらを抑え込んでいます。隣の牧之原市では明治時代の始めには石油が湧き、それを採油していました。おそらく塩ノ段鉱泉も地層の境界や断層を伝わって砂岩の層の地下水が上がってきたものと思われます
塩ノ段鉱泉の東に分布するのは海底で堆積した地層なので、塩分や海藻起源のヨードも含んでいると考えられるそうです。
ナトリウム成分が多くうがい薬の臭いがするのは、そのためかもしれません。太古の昔に堆積した海藻由来のヨードの臭いが今も漂っているのですね。

アクセスにはスマホ地図やカーナビがマスト!
塩ノ段鉱泉へ向かう道中には、いくつかの案内看板があります。それでも迷いやすいアップダウンの坂道が続くので、スマホの地図やカーナビに住所を入れて訪れるのが確実です。
周辺の茶畑と民家には入らないよう気をつけながら、散策してみてください。

調べてみると、地学的な面からも好奇心をそそられる鉱泉です。この地域の大地の歴史を五感で楽しめるスポットでした!
■スポット名 塩ノ段鉱泉(しおんだんこうせん)
■住所 静岡県御前崎市新野5057
取材/ヤナギ・タリ
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