目次
静岡・伊東市に全16席の小さな映画館「金星シネマ」があります。心が温まる作品や、現代社会が抱える課題を取り上げた作品などを毎日上映しており、2024年のオープン以来、映画館がなかった伊東の人にとって貴重な場となっています。他の映画館にはない、金星シネマの魅力を紹介します。
【画像】記事中に掲載していない画像も! この記事のギャラリーページへ靴を脱いで入る小さな映画館

金星シネマは伊東市吉田にあり、国道135号線のガソリンスタンドがある交差点から少し入った住宅地にあります。薬局の駐車場と隣り合っているため、金星シネマのマークがついた場所に止めましょう。
金星シネマは2024年9月にオープンし、約1年2カ月で100本の映画を上映しました。
靴を脱いで入るため、まるで家でくつろいでいるかのように快適です。

座席は全部で16席。
すべての座席が座り心地がよいフカフカのイスで、隣や前後との幅が広いため、窮屈さがなくゆったり座れます。

金星シネマには、地元の人だけでなく伊東市へ観光に訪れた人も利用するとのこと。60歳代以上のシニア層や、20~30代の若者も訪れます。
館長が厳選した、素晴らしい作品をぜひ映画館でお楽しみください。
金星シネマの楽しみ方
靴を脱いで中に入ったら、まずは受付でチケットを購入しましょう。

チケット料金は、一般が1800円(会員:1500円)、60歳以上のシニアが1400円(会員:1200円)、高校生以下は1000円(会員:同額)です。
チケット購入時に年会費2000円(高校生以下は1000円)を支払って会員になれば、お得な料金で映画鑑賞ができます。ほかにも無料招待券が2枚もらえるなど、特典が満載です。
同時に、映画を鑑賞しながら食べるスイーツやドリンクの購入もおすすめです。※飲食の持ち込みはできません。

座席の準備ができ開場の時間になるまでは、併設されているギャラリーで時間をつぶしましょう。
壁には金星シネマで過去に上映した作品や、日本全国で大ヒットした作品のポスターが貼られています。さらに机上には、映画に関する興味深い資料などが置かれており、自由に読むことができます。

140インチの大型スクリーンの前に、ゆったりと座れるよう間隔が確保された、16席の座席。
ほどよい広さのため、どの列に座っても映画が見やすいようになっています。

館内にはカフェも併設されており、お目当ての映画が始まるまで時間をつぶしたり、上映後、友人や知り合いと映画について感想を語りあったりして楽しめます。映画を見ずカフェのみの利用も可能です。

かつて伊東市は映画館の街だった!?
伊東市にある伊東駅近くには「キネマ通り」という商店街があります。
名前の通り、かつてたくさんの映画館がありロケ地にもなっていたため、地元の人や観光客で賑わっていました。

しかし1987年に「銀英オリオン」が閉館してから伊東市内の映画館はゼロに。
映画を見るには、車で1時間以上離れた小田原市・三島市・沼津市まで行かなければなりません。

カルチャーに触れられる場所を失った伊東市を見て、金星シネマの館長である梅澤舞佳さんは、ミニシアター文化を根付かせるべく金星シネマをつくりました。
館長厳選! 過去の上映作品
金星シネマでは、大きな街にある大型の映画館ではお目にかかれない作品を多く上映しています。上映する作品を選ぶ基準を聞きました。

金星シネマ・梅澤舞佳館長:
伊東市はあまりミニシアター文化が根付いていない街だと思うので、多くの方に楽しんでいただけるよう、幅広い製作国・年代・ジャンルの作品を選ぶようにしています。また実際に映画を見て、話の内容が複雑ではないかどうかも重視しています
ミニシアターですが、人種差別を題材とした「グリーンブック」やドナルド・トランプ大統領を描いた映画「アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方」など、話題になった映画も上映することがあるそうです。
過去に金星シネマで筆者が鑑賞した作品の一部を紹介します。
「ファースト・カウ」

19世紀初頭のアメリカ西部。料理の腕はあるが貧しい料理人クッキーと、逃亡中の中国系移民キング・ルーが偶然出会い、友情を育みながらささやかな商売を始めます。
初めてやってきた一頭の乳牛から夜中にこっそり牛乳を盗み、ドーナツのようなお菓子を作って販売したところ大人気に。
しかし成功の影には、いつかバレるかもしれないといった不安と緊張が潜んでいます。荒野のなかで寄り添うふたりの静かな絆、上映後にじんわりと余韻が残る物語です。
「ウナイ 透明な闇 PFAS汚染に立ち向かう」

沖縄県の水道水に含まれていた「PFAS」と呼ばれる有害化学物質。PFASは米国ですでに、がんや低体重出生といった健康への悪影響が報告されています。しかし汚染発覚から時が経ったにもかかわらず、いまだ汚染源は不明のまま。女性を中心とした住民や専門家が声を上げ、真実を追い求める姿を追ったドキュメンタリー。
水や土に見えない形で広がる透明な闇に対し、誰かが動かなければ変わらないという切実さが胸に迫ります。身近な生活から地球規模の環境問題までつながる今、私たち一人ひとりに問いを投げかける作品です。
「教皇選挙」

ローマ教皇が突然崩御し、次の教皇を選ぶコンクラーベ(教皇選挙)が開かれることに。枢機卿たちはバチカンに集まり、政治的思惑、信仰、秘密が入り乱れるなかで票を投じます。
主人公は選挙の運営責任者。選挙を公平に進める役目を担いながら、亡き教皇が残したある極秘情報を知り、選挙の行方は予想外の方向へ。閉ざされた空間で進む心理戦と、教会の裏側に潜む権力の影がスリリングに描かれる、緊迫の政治宗教サスペンスです。
「金星シネマ」で心が豊かになる体験を

金星シネマは、最新設備が搭載された大型の映画館とは違い、どこか懐かしく温かな時間が流れる町の映画館です。派手さはなくても、スクリーンの前に座ると不思議と落ち着き、映画そのものとじっくり向き合える心地よさがあります。
名画から話題作まで幅広いラインナップを上映し、地域の人はもちろん、旅先で静かに映画を楽しみたいという方にもぴったり。
旅の途中にふらりと立ち寄りたい貴重な映画館へ、ぜひ訪れてはいかがでしょうか。
■店名 金星シネマ
■住所 静岡県伊東市吉田573-1
■上映開始時間 10:00~、13:00~、16:00~、19:00~
■定休 月・火
■駐車場 6台
取材/奥村奈央
【もっと見る! 伊東市のお出かけ記事】
