大日向雅美
健やか

「孫はかわいいけれど」 祖父母の“不安”と子育て世代の“つらさ” 【テレビ寺子屋】

子育て支援で注目される「祖父母力」。孫の世話や経済的支援など期待が大きい一方で、祖父母世代とママ・パパ世代、それぞれに葛藤があります。お互いをリスペクトし、地域全体で支え合う社会のあり方とは。

左)テレビ静岡・北村花絵アナウンサー 右)恵泉女学園大学学長の大日向雅美さん

テレビ静岡で2025年12月7日に放送されたテレビ寺子屋では、恵泉女学園大学の学長・大日向雅美さんが、祖父母の力と地域の力について語りました。

「祖父母力」への期待と現実

恵泉女学院大学 学長・大日向雅美さん:
「祖父母力」という言葉を聞いたことはありますか?

いま子育て支援の一環として、「祖父母の子育ての力」が注目されています。期待されていることは、子供を預かることや、子育てに対する助言に相談、家事の援助など。さらに、最近よく言われるのは経済的な支援。祖父母に孫の教育費などを出してもらいたい、という要求もあるようです。

このような「祖父母力」が求められる背景には社会的な通念があり、そこには事実とは違う思い込みも含まれているように思います。

例えば「孫は、目に入れても痛くないほどかわいい」「孫の世話は祖父母の至福」「祖父母には経験知も経済力もある」。本当にそうでしょうか?

イメージ画像 祖父母

それぞれが抱える思いと葛藤

まず、祖父母たちはどう感じているのか。確かに孫はかわいいです。でも、聞き分けがなければ感情的にもなります。また、昔と比べて子育ての常識は大きく変化しており、自分の経験が否定されることもあります。

それから、経済力や体力の不安。仕事や子育てなどが一段落して過ごすはずの老後の人生設計が崩れる、という声も聞かれます。

イメージ画像 不安

それでは、ママ・パパ世代の思いはどうでしょうか。「祖父母力」には確かに助けられています。でも、孫がかわいくて心配だからと過干渉されるのはつらい。

また、「自分たちがしてきた子育てが絶対に正しい」と思っていて譲ってくれない。良かれと思って意見を言ってくれるのは分かるけれど、自分たちのやり方で子育てをさせてほしい。こんな思いを抱えています。

イメージ画像 親世代

このように、お互いの言い分はありますが、違っていて当たり前です。大切なのは、お互いの葛藤をしっかりと見つめ、乗り越えることです。

祖父母の力を大事にしながら、どちらかにしわ寄せがいかないような、そんな地域のあり方、社会のあり方を一緒に考えていけたらと思います。

リスペクトと地域共生の好循環

まず、ママ・パパ世代に伝えたいのは、祖父母に頼る前に、パートナーや地域支援、ママ友・パパ友と助け合えることはないか考えてみる。子供を預かってほしい時には、事前に相手のスケジュールを確認する。

そして、預かってもらったら感謝の気持ちをきちんと伝える。祖父母は自分、あるいはパートナーの親ですが、人生の先輩としてリスペクトを持って接することが大切です。

イメージ画像 リスペクト

次に、祖父母世代に伝えたいのは、自分の孫だけでなく、地域の子供たちの祖父母になってほしいということです。

私が代表理事を務めるNPO法人「あい・ぽーとステーション」では、地域の方々を「子育て家族の支援者」となっていただけるよう養成しています。

最近はシニア世代の男性もたくさん来ていて、子育て中の親と一緒に楽しく過ごしています。皆さん「支援者になることで、今のママ・パパ世代の大変さが理解でき、命が育つことへのリスペクトが生まれた」と言います。

イメージ画像 地域共生

そして、ママ・パパ世代も支援者から話を聞くことで、「自分の父親、母親のことをより大切に思えるようになった」、そんな好循環も芽生えています。

このような「地域共生社会」は特別なことではありません。それぞれが自分の役割をもって支え合い、助け合うことで、結果的に自分らしく生きられることにつながるのです。

経験豊かな祖父母ができることをして、それが子育て世代の助けとなる。そうやって「人生はお互いさまで循環していく」ということを、一人一人が心の中に思えた時、誰もが生きやすく育てやすい社会が作られると思います。

左)テレビ静岡・北村花絵アナウンサー 右)恵泉女学園大学学長の大日向雅美さん

大日向雅美:1950年生まれ。お茶の水女子大学大学院修士課程修了。2016年、恵泉女学院大学学長に。専門は発達心理学。母親の育児ストレスや育児不安を研究。子育てひろばの施設長も務める。

※この記事は2025年12月7日にテレビ静岡で放送された「テレビ寺子屋」をもとにしています。

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