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音楽教育家の樹原涼子さんはある日、「ねこふんじゃった」ではなく「ねこふまないで」という曲を思いつきました。それをきっかけに曲集が完成するまでの経験から、“好き”という気持ちは自分だけでなく、人をも動かす大きな原動力となることを語りました。

テレビ静岡で9月28日に放送されたテレビ寺子屋では、音楽教育家の樹原涼子さんが、「好き」という気持ちが行動力に変わり、夢を実現させた経験を紹介しました。
「ねこふまないで」偶然のひらめきが生み出した音楽
音楽教育家・樹原涼子さん:
今日は五味太郎さん(絵本作家)と作った宝物についてお話します。
ある日、お風呂の中で「ねこふんじゃった」を口ずさんでいました。口ずさんでいるうちにふと「ねこは踏んじゃダメでしょう」と思ったんです。そこから「ねこふまないで、ねこふまないで」とメロディーが浮かび、お風呂から出た時には「そうだ、黒鍵だけで誰でも楽しく弾ける曲集を作ろう!」と決めました。

私はこの曲集の挿絵を、大好きな五味太郎先生に描いてほしいと思いました。でも、五味先生と面識があったわけでもなく、出版社に提案した際には、良い反応は返ってきませんでした。
それでも諦めきれなかった私は、思い切って五味先生に直接、長い長いメールを書いて送りました。すると驚いたことに、すぐに「引き受けます」とのお返事をいただき、この曲集ができることになったんです。

情熱が伝わる「好き」の力
その後、五味先生と対談する機会がありました。引き受けた理由について五味先生は「すごい熱量のメールが来た。黒鍵を使った遊びがどういう絵になるか面白そうだと思ったし、自分が仕事をしているところがすぐに想像できたから引き受けた」と話してくれました。
五味先生が世界的な画家であることは承知の上で、それでも自分と自分の作品に誇りをもってアプローチしたわけですが、振り返ってみれば、それは自分の音楽への愛、つまり「好き」という気持ちが行動に移させて、それが五味先生にも伝わったのだと思います。

五味先生はこんな話もしてくれました。「得意な人が得意なことをやっていれば、何の問題もなく世の中はうまくいく。努力はいいことのように言われているけど、本当に好きなことには自然と集中ができるから、努力と言わずに、ただ上達するんだよ」。
この話を聞いて、「好きなことで幸せになること」が大切なんだと思いました。好きなことがあると人生を楽しめますし、卓越していけば職業になる可能性だってあります。自分らしくいられて幸せであれば、人にも優しくできます。つまり、「好き」から「生きる才能」も生まれるんですね。

一歩踏み出す勇気が未来を切り開く
また、五味先生は「面白そう!」と感じたところから作品作りにつながっていくそうです。「面白そう!」、というサインを見逃さず、まずはやってみること。私自身も今回の「ねこふんじゃダメ!」が、まさにそうであったと思います。
人は何かを始めようとするとき、先にできないことを並べて諦めてしまうことが多いですが、考える前に一歩踏み出してみることが大事です。できない言い訳ではなく、できる方法だけを考える。

「好き」をチカラに変えて踏み出した一歩が、今回のような素晴らしい機会を与えてくれたと私は思います。
自分が「好き」なことを大切にする大人になって、自分が「好き」なことができる子供たちを育てる。そんなすてきな未来を見つめたいなと思います。

樹原涼子:熊本市生まれ。武蔵野音楽大学卒業。1991年より順次出版されたメソッド「ピアノランド」がベスト&ロングセラーに。作曲、執筆のかたわらセミナー、コンサートや音大での特別講義などを通じ、ピアノ教育界に新しい提案と実践を続けている。
※この記事は9月28日にテレビ静岡で放送された「テレビ寺子屋」をもとにしています。
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