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静岡・森町にある小國神社に新しい展示館ができると聞いてさっそく調査へ。それは「土鈴(どれい)」と呼ばれる、土でできた鈴の超膨大なコレクションでした。想像以上に深い土鈴の世界をオープン前に見せてもらいました。
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遠江国一宮の小國神社は、国の重要無形民俗文化財に指定されている「古式十二段舞楽」など、長い伝統と格式で知られています。十二段舞楽は1000年以上続けられているそうです。

そんな歴史ある神社にできる新たな展示館を目指して、社殿の方へと向かいます。
案内してくれるのは、権禰宜の豊田蒼空さんです。
取材させてもらったのは、まだオープン前。いち早く新たな施設を見せてもらいました。

真っすぐに参道を歩いていくと、二つ目の鳥居の手前、右手に休憩室があります。
休憩室に向かって右手にある平屋の建物が、新たにできた展示館「土鈴(どれい)館」です。

中は広々と1室になっていて、壁にそってガラスの展示ケースがあります。
にむらあつとリポーター:
なんだかいろんな置物がずらっと並んでいます。七福神があったり、昔のおもちゃのようなものもあります

土鈴とは? ちゃんと音も鳴ります
土鈴とはどんなものなのでしょうか。
神社のお守りなどと一緒に、みなさんも見たことがあるかもしれません。
例えば正月に干支の土鈴が神社で配られることもあります。土鈴は縁起物です。

土の鈴と書いて「どれい」と読み、文字通り土を焼いて作られます。
豊田さんが土鈴の一つを手に持って優しく振ると、カラコロと涼やかな音が響きました。
もちろん鈴なので、振れば音もちゃんと鳴るのです。

土鈴のバリエーションはさまざま。小さなものから、大きなものまで。小型犬の形をした、小型犬サイズの土鈴までありました。
許可をもらって振ってみると、カラカラとちゃんと音も鳴りました。

展示品の中には触れられるものもあるそうなので、ぜひ音色を聞いてみてください。
土鈴は縁起物だけでなくお土産としても作られるようになり、全国各地に大小さまざまな種類の土鈴が存在します。
音で穢れを払うという考え方から、神社でよく使われる「鈴」。土鈴は、そんな鈴の音を手軽に聞くことができる日本独特のアイテムなのです。

土鈴の原型 音色を聞いてみましょう
その歴史は古く、約800年以上続くと言われているんです。
展示の中には、土鈴の原型とも言われる特別なものがありました。
小國神社 権禰宜・豊田蒼空さん:
「英彦山(ひこさん)がらがら」という土鈴です。神社や仏閣で授与する土鈴の最も古いものという言い伝えがあります

英彦山がらがらは、福岡県の英彦山神社でいまも授与されている土鈴です。伝承や記録から800年以上、ほぼ形が変わっていないとされています。
鈴がたくさんついているような形状で、豊田さんに音を鳴らしてもらいましたが、「クュルクュル」といった感じの、とてもいい音色でした。
大量の土鈴はどこから来たの?
2017年、土鈴の収集家として知られる民俗学者の鈴木正彦さんが、約1万3000点の土鈴を小國神社へ寄贈しました。

しかし展示できるのは500点余りです。残りの1万点以上は、今なお調査中だといいます。
その調査の現場も見せてもらうと、約80畳の大広間を土鈴が埋め尽くしていました。これは大変だ!
研究者たちの検証で、歴史的に貴重な土鈴が数多く見つかっています。

その一つを見せてもらいました。
形の違う12個の土鈴セットは、大阪・堺市にある、鈴の宮として知られる蜂田神社の土鈴です。
神戸 土鈴友の会・鈴木博久さん:
12個あって、鈴占いに使われていました。素焼きで柔らかい音がします

蜂田神社の鈴占いとは、節分の未明に宮司が暗闇で12の鈴を鳴らして、一番いい音の土鈴がその年の占いの結果となるというものです。
音で吉凶を占う鈴占いの神事。 一般の人の目にはほとんど触れない土鈴でした。
神戸 土鈴友の会・鈴木博久さん:
本来役目が終わったら鈴塚という土の中に埋めます

土の中に埋めてしまうので、本当だったら世には出てこない貴重なものだと言えます。
まだまだ未調査の土鈴が山のようにあり、小國神社では急ピッチで歴史と文化的価値の高さを検証しています。
小國神社 権禰宜・豊田蒼空さん:
土鈴はもともと「祈り」から発生したものなので、音を楽しんでもらいながら、土鈴に何を託し祈ってきたか想像できる展示館にしたいと思います
土鈴館の入館は無料です。
人々の祈りの思いがこもった、珍しい土鈴の展示館は、新たな注目スポットになりそうです。
■施設名 鈴木正彦記念土鈴館
■住所 小國神社 静岡県森町一宮3956-1
■開館時間 9:00~16:00
■休館日 未定
■入館料 無料
■問合せ 0538-89-7302
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