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【浜名区・宝林寺】武帝や関羽がなぜ浜松に? 中国様式の寺で金運アップ 

浜名湖の北、浜松市浜名区にある宝林寺は、中国の雰囲気漂い、金運がアップすると有名な寺です。武帝や関羽がまつられているのですが、なぜ浜松に中国の英雄が? ナゾに迫ります。

珍しい“黄檗宗”の寺に残る中国様式の建築

新東名・浜松SAスマートICから車で西に10分。天竜浜名湖鉄道・金指駅から歩いて15分。

山や田園に囲まれた、浜名湖の北側に宝林寺があります。

この地域で初めて開かれた黄檗宗(おうばくしゅう)の寺として、初山(しょさん)の山号が付きました。

国の重要文化財に指定されている仏殿(浜松市浜名区細江町中川)

特徴的なのは、中国風の建物、お経も中国語、まつられているのは武帝や関羽といった中国の英雄です。

国指定重要文化財の仏殿には幾何学的な窓枠や、斜めに敷かれた中国明朝様式の瓦敷の床があり、中国の雰囲気が漂っています。

仏殿の床と窓枠

また中国様式の建物の特徴の一つが左右対称の建築ですが、仏殿は外も中も、左右対称の造りになっています。

京都にある黄檗宗の大本山・萬福寺の執事も務めている、宝林寺の住職・関塚哲心さんに、なぜ宝林寺は中国様式なのか聞きました。

宝林寺・関塚哲心 住職

宝林寺・関塚哲心 住職:
宝林寺は黄檗宗の開祖・隠元禅師と共に日本へ来た独湛禅師(どくたんぜんじ)が1664年に開創したお寺です。黄檗宗のお寺は他の宗派に比べると珍しいかもしれませんが、国の重要文化財に指定された建物が2棟もあります

関塚住職によると、中国も時代によって様式が異なりますが、宝林寺は明の時代に伝来したので、その頃の特徴を残す建物や仏像が文化財となっているそうです。

「報恩堂」 左右対称で幾何学模様の窓枠など明朝様式

武帝や関羽 仏殿には中国の英雄たち

珍しいのは、建築様式だけでなく仏殿に安置された中国の英雄たちの像です。

本尊の隣には梁の武帝の像があります。武帝は皇帝でありながら僧となり、仏教を厚く信仰しました。

本尊右手の厨子に安置されている武帝の像

宝林寺・関塚 住職:
武帝は達磨大師を招いて仏教について問答したと伝わっています。仏殿では武帝の対になる本尊の左側の厨子には達磨大師がまつられています

さらに、三国志の赤壁の戦いで有名な武将の関羽が、二十四諸天像の中にいます。

二十四諸天像の一体である関羽の像

関羽をまつる関帝廟は、黄檗宗の総本山・萬福寺や、横浜や神戸のチャイナタウンなどにもあります。

宝林寺・関塚 住職:
中国で関羽は財運、商売や学問の神様として崇められています。今でも国家の守護神として人々の信仰が厚く、日本を含め世界各地のチャイナタウンでも関帝廟として多くまつられています

本堂右側に並ぶ二十四諸天像 一番右に関羽

しかし、宝林寺の関羽は二十四諸天像の一つとしてまつられ、関羽の他に、韋駄天や閻魔など仏教界ではおなじみの顔ぶれがそろっています。また、興味深いことに天照大神も入っています。

二十四諸天像の天照大神

宝林寺・関塚 住職:
天照大御神は日本特有の神様なので、中国には同じ二十四諸天像はありません。京都の天皇家の菩提寺である泉涌寺の二十四諸天像の図像は、宝林寺の天像が基となっていると言われています

中国の仏教様式が日本に入ってきた後、どう受け入れられたかが、よくわかる像と言えます。

開創のきっかけは徳川家旗本の近藤貞用

宝林寺の開創のきっかけは、4代目将軍・徳川家綱の時代、この地域を治めていた旗本・近藤貞用にありました。

近藤はどのように中国から来た隠元禅師や独湛禅師と出会ったのでしょうか。

独湛禅師の等身大の木像がまつられる国指定重要文化財の「方丈」

宝林寺・関塚 住職:
近藤貞用の江戸の邸宅と隠元禅師たちが滞在していたのが、同じ湯島でした。隠元禅師は単に黄檗宗の普及に来たのではなく、治水などの公共整備や医学、建築、絵画や詩などを伝えました。貞用も公共整備に尽力していたため、知識や技術に引かれたのかもしれません

近藤家の位牌が安置されている報恩堂

黄檗宗という新しい宗派の寺が、初めて浜松の地で建てられたことはもちろん、中国の英雄たちがまつられたことも、当時は革新的だったことでしょう。

金運が上がる「金鳴石」

宝林寺は、金運が上がる「金鳴石(きんめいせき)」があることでも知られています。

金鳴石は、独湛禅師が中国から持ってきたと言われ、仏殿と方丈の間にある「龍文堂」の前に置かれています。

大きな平らな石に、小さな石が乗っているので、その小さな石で平らな石を叩いてみてください。

石とは思えない高い金属音のような透き通った音が鳴ります。

いい音が鳴り響けば金運が上がるそうです。もし鳴らなかったら、あちこちを叩いてみてくださいね。どこか鳴るかもしれません。

龍文堂

金鳴石は、龍文堂にお参りしてから叩くと願いが叶うとされているので、叩く前には参拝をお忘れなく。

お守りや御朱印は拝観案内所で

宝林寺の拝観には、拝観料400円が必要です。駐車場から階段を上ると案内所があるので、拝観料を払いましょう。

案内所では、お守りや御朱印の授与も行っています。

拝観案内所

金鳴石のご利益を受けられる天然石入りの「金鳴石お守り(700円~1500円)」は、10種類の天然石から好きな石を選べます。

他にも「金運開運お守り」など、金運が上がるお守りがあります。

金鳴石お守り

最後に、階段を上った先にある山門からの景色は必見です。山門も重要文化財で、山門のフレーム越しに見るシンメトリーの境内の風景は、息を呑む美しさです。

「初山」の扁額は、元禄6年(1693年)に隠元禅師によって書かれたと伝わっているので、こちらもお見逃しなく。

山門(静岡県指定有形文化財)

9月20日は入場無料の「えんの市」が午後4時から午後8時まで開催されます。盆踊りや竹灯籠など、秋の宵を楽しめます。

浜松で時代を超えて、国を越えて息づく仏の教え。大陸の風を宝林寺で感じてみてはいかがでしょうか。

■施設名 初山 宝林寺
■住所 浜松市浜名区細江町中川65-2
■電話 053-542-1473
■拝観時間 10:00~16:00
■拝観料 400円

【詳しく見る】宝林寺のホームページ

取材/麻衣子

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静岡生まれ静岡育ち。 神社仏閣伝承研究家。伝承にまつわる記事や地元で見つけたおいしいお店の紹介を書いています。 好物は和歌と本とコーヒー。著書にノンフィクション/エッセイ「CHASE」、「前を向いて」。 好きな歌は 君ならで誰にか見せむ梅の花 色をも香をもしる人ぞしる  
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