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「最適解」を探す旅 清水エスパルス・秋葉体制でリーグ7戦負けなし

清水エスパルス・クラブハウス

サッカーJ2・清水エスパルスはリーグ第14節にホーム・IAIスタジアム日本平でいわきFCと対戦し、9対1で大勝した。秋葉新体制ではリーグ7戦で5勝2分けと負けなし。監督就任前に19位に沈んでいた順位は第14節終了時点で7位まで上昇。チームの現在地と今後を考察する。

◆クラブ新記録の1試合9得点

いわき戦で清水は最初のチャンスをものにした。前半2分、ピッチをいっぱいに使い最終ラインの井林から、右サイドの北爪を経由して、中山のクロスに乾が右足で合わせた。まるでパス練習のようにきれいにつながっていた。そして前半16分の2点目は、中央でルーズボールになったところから乾が右アウトサイドでスルーパスを送り、走り込んだ中山が豪快に右足を振り抜いた。3点目は前半45分過ぎ、カルリーニョスが左サイドからクロスをおくり、ファーサイドの北爪が折り返して最後は中山が落ち着いて合わせてゴール。

その後も得点を重ね、奪ったゴールは9。中山とチアゴ・サンタナはそろってハットトリックを達成。1試合9得点、2人のハットトリックはともにクラブ新記録だった。チアゴ・サンタナはリーグ6得点で得点ランキング3位タイに浮上している。

◆“ホール・アイスタ”の指揮者と化した乾

大量得点の中でも出色の活躍をしたのは乾だ。この試合で1得点3アシストを記録したからだけではない。

サイドや中盤でパスの出しどころが詰まってくると、乾がパスコースに入り、ターンあるいはリターンパスで選手同士の距離感やボールの運び先など“チームのリズム”を整える。するとこのリズムに合わせて周囲の選手が反応し、スペースへと走り出す。

音響が完全にコントロールされたホールの中で、優れた指揮者がタクトを振るう。そして躍動感を得た奏者たちがメロディーを奏でる。そんな関係ができていたかのようだった。

この日のアイスタは大雨の影響で、ピッチ上のボールは普段よりかなり速く動く。いつも以上にボールコントロールやキックの正確性が求められる。相手選手以上にホームチームの選手たちが意識し、さらに、乾はJ屈指のテクニシャンでもある。こうした条件も乾が指揮者と化し、ホーム・アイスタを“コンサートホール”にしたことも無関係ではないと思える。

◆“秋葉語録”で注目したい「最適解」

清水は第14節を終えて、勝ち点22の7位、得点28・失点11で得失点差は17となった。首位を走るFC町田ゼルビアの13を上回っている。今後、勝ち点で並ぶチームを恐れる必要もなくなりそうだ。

これまでに秋葉監督からさまざまな言葉を耳にしている。「超攻撃的サッカー」「超アグレッシブ」「勝者・強者のメンタリティー」「勝つことが当たり前ということを植えつける」「公平なポジション競争」「選手起用に忖度はしない」「エスパルスファミリーを大事にする」「常にJ1を見ている」など。

「秋葉語録」ともいえるワードが飛び出す中で、最近注目しているのは「最適解を見つける」という言葉だ。

◆静岡三国決戦第二弾 「最適解」は見つかるか

これは「公平なポジション競争」をした上で、どんな選手を起用していくかに関する答えの一つだと思う。そしてその最適解が指すのは、「スタメン11人の」ではなく「チームとしての」とも感じている。

そもそもエスパルスは攻撃的なポジションの選手はやや過剰だ。例えばコロリは秋葉体制以降、リーグ戦の出場機会がない。一方で、ボランチやディフェンスなど守備陣の層は攻撃陣に比べ薄く、攻撃的な選手を含めてポリバレントな起用が目立っている。もっとも、完全なバランスのチームなどないにひとしいが。

次節・藤枝MYFC戦は、そこから続く5連戦、夏場の選手起用、ケガ人への対応・対策などという今後を見据えた試合にもなる。何人かの選手にとっては、長期戦をにらんだ「最適解」を探す試金石となるのではないか。

藤枝は昨シーズンに須藤監督のもと「エンターテインメントサッカー」「超攻撃的サッカー」を掲げて昇格し、J2でもそのスタイルを貫きJ2のトピックスの1つとなっている。攻撃的なサッカーを掲げる両チームの意地がぶつかる一戦に注目したい。

テレビ静岡の取材に応じるファン・ニステルローイ選手(1999年)

※4月25日のコラム「秋葉体制でリーグ4戦負けなしの3勝1分け ~清水エスパルスは何が変ったのか~【前編】」での“ケチャップの栓”について

複数の知人から「ケチャップの栓」の表現が分からないという指摘があり、少しだけ説明させていただく。

2012年のW杯アジア最終予選のイラク戦で得点できなかった本田圭佑が、試合後に「名ストライカーが言っていたが、ゴールはケチャップみたいなもの。出ないときは出ないし、出るときはドバドバ出る」と語った。

この名ストライカーとは、ファン・ニステルローイ(元オランダ代表)のことだ。レアルマドリードの同僚のイグアイン(元アルゼンチン代表)がスペインのテレビ局のインタビューで「ゴールというのはケチャップみたいなものだと言っていた。いくら頑張っても出ないと思ったら、一気にたくさん出たりする」とアドバイスをもらったと語っていた。

「ケチャップの栓がようやく開いた」とした表現は、ようやく待望のゴールラッシュが生まれた。という意味を込めていた。

テレビ静岡報道部スポーツ班 外岡哲

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