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2023年4月に就任した静岡市・難波喬司 市長が当初から危機感を訴えていた市の人口減少問題。いまだ歯止めはかかっておらず、このまま何も対策を施さないでいると25年後には約49万人にまで減少すると推定されている。人口の減少は公共サービスの維持などに深刻な影響を及ぼし、市民生活にも直結する問題なだけに行政の対応が注目される。
政令市の中で最も厳しい状況

静岡市・難波喬司 市長:
静岡市の人口減少は他の政令市と比べ最も厳しい状況下にある。様々な原因があると思うが、根底には人口減少が厳しい状況にある現実を直視せず、その原因分析を行なわず、具体的対策を取ってこなかったことによるもの
静岡市の難波市長が就任当初から危機感を訴える人口減少。
静岡市の人口は1990年をピークに減少し続け、5年前には70万人を割り、政令指定都市の中で最下位となった。
このまま何も対策を施さないでいると2050年には約49万人にまで減少すると推定されている。
デジタル産業の可能性に期待

こうした中、静岡市が人口減少対策の1つとして目を付けたのがアニメやゲーム、CG ・コンピュータグラフィックスなどのデジタル産業だ。
関連する企業を静岡市に誘致して、学生やUターン希望者の就職の場を増やすのが主な狙いだ。
静岡市産業基盤強化本部・恒川文栄 次長補佐:
若者が就職で転出してしまうことは市長も話しているが、若者たちを留める施策としては、デジタル関係企業やゲーム・アニメ企業が若者に人気があり、世界的に成長産業になり得るという話も聞いていたので、これは可能性としてあると思って誘致の施策を考え始めたのがきっかけ
デジタル関連企業はわずか1%の現状

静岡市内にはデジタル関連のスキルを勉強できる大学や専門学校が8校あり、1学年に約800人が在籍している。
しかし、約4割は卒業後に静岡市を離れて主に首都圏で就職しているのが現状だ。
静岡市内でデジタル関連の仕事に就きたくても関連企業が全事業所の1%ほどと少ないためだ。
学生:
アニメとかたくさん企業があるのが東京や大阪と聞いているので、就職するとしたら東京になるかなと思っている
学生:
地元の企業があれば就職したいなとは思う。少ない
静岡デザイン専門学校・大川直樹 先生:
誰でもいいというわけではなく一定以上のスキルを持った人が欲しいというのが現場の声。1人でも多く即戦力の人材を求めているのが現状。特に人が集まるので、首都圏での奪い合いがすごく大きい
貴重な人材の流出を防ぐため

市はこうしたデジタル関連のスキルを身につけた学生たちに静岡市に残ってもらうため、就職の受け皿を拡大しようとゲームやアニメ、CGなどのデジタル関連企業が市外から初めて静岡市にオフィスを構える場合、オフィスの賃料や市内在住の人材の雇用に対し補助金を支給する。
2024年10月にはデジタル関連企業7社と連携協定を締結し、企業の進出や人材の育成面で連携することで企業側が進出しやすい環境づくりを進めている。
こちらは都内に本社を置くシャフトの静岡オフィス。
これまでテレビや劇場向けなどのアニメ作品を数多く手がけ、2022年6月には静岡市の中心部にオフィスを構えた。
進出当初、静岡オフィスの社員は5人だったが今では17人に増え、社員の多くが市内に住んでいる。
進出した企業は手応え

久保田光俊 社長はアニメ制作は長い時間をかけて技術を身に着ける環境が重要とした上で、静岡市への進出の可能性は今後広がると予想している。
シャフト・久保田光俊 社長:
学生に関しては、毎年興味を持って入ってくる人、志望する人がどんどん増えてきて手応えを感じている。おもしろいのは県外からも静岡市で働きたいという人たちが、毎年、何人か出てきているので、静岡市で働く環境として魅力があると考えているのかなという実感はある

市は今後5年間でシャフトのようなデジタル関連企業10社の誘致を目指している。
スキルを持った若者たちの就職の場の確保と人材を地方に求め進出を希望する企業、この両者がWin-Winの関係になるためには静岡市進出のメリットをいかに打ち出していくかがカギとなりそうだ。