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静岡県の伊豆半島、伊東市にある八幡野港のすぐそばに、本格ジビエ料理が楽しめるお店があります。オーナーが自ら猟で動物をとり、料理の提供までこなす、県内でも数少ないお店です。
【画像】記事中にないメニュー画像も! この記事のギャラリーページへ民宿を改装したアットホームなお店
伊豆高原駅から車で約5分、徒歩で約20分のところにある一軒家。八幡野港の手前に「伊豆のジビエ屋 Bistro KEN(ビストロ ケン)」があります。
駐車場は3台分。周辺は民家が多く、とても静かです。
ときおり八幡野港から波の音が聞こえてきます。
店に入ると、心地よい音楽が流れる温かい空間でホッと癒されます。もともと民宿だった建物を改装して店舗にしたとのこと。
オーナーの川島健さんは厨房にいることが多く、入り口からだと来客に気づきにくいため、来店したらテーブルの上にあるインターホンで呼びましょう。
お店には4人掛けのテーブル席が1つ、4人用のお座敷が1つ、カウンター席が3つ。
とくに週末のお昼は混んでいることが多いため、あらかじめ電話で予約するか、席の状況について聞いておくことをおすすめします。
店内は、こじんまりとしています。騒がしくないため、アットホームな雰囲気で食事を楽しみたい方にぴったりです。
お座敷の席では座布団が4つ敷かれています。
広いため、荷物を置いてゆっくりできますよ。床の間にはこけしのほか、カボチャの仲間「スイートタックル」という野菜が置かれており実際に料理でも使用します。
季節により置かれる野菜が違うのだとか。
ふと、顔を上げるとシカの壁飾りと目が合いました。
1月に撮影したため、正月飾りとしておめかししてお客様をお出迎え。
12月はクリスマス仕様になるなど、季節ごとに姿を変えて楽しませてくれます。
カウンター席には、お店のメニューのほか、猟に関する資料や動物の置物など、見ていて楽しくなるものばかり置かれています。
とくにカウンターの左側にある「狩猟読本」(著:一般社団法人 大日本猟友会)は、国内で狩猟が可能な動物や罠の種類、猟の仕方などが細かく記載されており、オーナーの川島さんいわく「全部覚えたら猟の免許が取れますよ」とのこと。
料理を待つ間、いろいろと見たり読んだりして観察してみると面白いです。
伊豆の恵みが堪能できるメニューの数々
「伊豆のジビエ屋 Bistro KEN」のメニューを見てみましょう。
主にシカ・イノシシ・熱川ポーク・チキンをふんだんに使ったカレーですが、いろいろなお肉を食べてみたいと思ったら、後述するお肉の盛り合わせもあわせて注文するのがおすすめです。
まれに、タヌキやアナグマがとれることもあり、運がよければカレーにのせて提供してくれることも!
「スイートタックル」のポタージュ
メインのカレーを食べる前に、いくつか前菜を注文しました。
まずは、地元の野菜を使った「本日のポタージュハーフサイズ(400円)」です。季節ごとに使用する野菜が異なり、今回(1月)はスイートタックルというカボチャのポタージュでした。
スイートタックルは別名スイーツカボチャとも呼ばれており、通常のカボチャよりも甘みがあるため、スイーツ作りなどによく利用されます。
Bistro KENでは、スイートタックルを約3カ月間熟成させてからポタージュに使用します。
そのため、カボチャ本来の甘みがしっかりと凝縮されており、こってりとした濃厚さと非常にやさしい甘味がしました。ポタージュは冷製と温製のどちらでも楽しめます。
ジビエシャルキュトリー盛り合わせ
せっかく本格ジビエ料理店に来たのですから、いろいろなお肉が食べたい。そんなときは「ジビエシャルキュトリー盛り合わせ(1600円)」がおすすめです。
シャルキュトリーとはフランス語で、ハムやソーセージなどの食肉加工品全般を表す言葉です。また、食肉加工を行う人のことをシャルキュティエと呼ぶのだそうです。
お肉が大好きな方なら、見たことのないお肉ばかりでワクワクするでしょう。
今回食べたお肉の種類は、下記のとおりです。
・シカのハム
・イノシシのベーコン
・鴨のハム
・タヌキのお肉
・チキンソーセージ
・骨付きシカのベーコン
料理と一緒にマスタードが付いてきて、お好みでお肉につけて楽しめます。
そして今回は運がいいことにタヌキがとれたとのことで、料理に加えてもらいました。 タヌキ肉は、クセが全くなく甘みがありました!
ほかにも、猟の結果によっては珍しいお肉が食べられることもあり、その場合はイノシシのハムかベーコンの代わりに提供してくれるそうです。
鹿茸酒(ろくじょうしゅ)
せっかくならばお酒も飲みたいと思ったとき、カウンターに置かれている変わったお酒に目が留まりました。
「鹿茸酒(ろくじょうしゅ・400円)」といい、シカの角をお酒に漬け込んだめずらしいお酒だそうで、主に下記の症状の改善などに効果があるとされています。
・精力減退
・虚弱体質
・貧血
・病後衰弱 など
シカの角は薬としても重宝されており、昔から漢方薬や薬膳スープの材料として使用されてきました。
鹿茸酒に使用するシカの角は、ツノの生え替わりから約2~3カ月の状態で切り落としたもののみ使用できるため、鹿茸酒が飲めるお店は少なく、貴重なのだそうです。
非常に強いお酒なので、一気に飲まずにちびちびと少量ずつ楽しみましょう。
今まで味わったことがないややクセがある味で、ツーンとする刺激と舌のビリビリ感がたまりません! 少量でも十分に楽しめるお酒です。
同じジビエの食べ物だからでしょうか? ジビエシャルキュトリー盛り合わせと非常によく合います。
もちろん、ジビエにぴったりなワインやそのほかのアルコールメニューも豊富です。
赤ワイン・白ワインや、リキュール、日本酒から中国のお酒など、なかには見たこともないお酒が盛りだくさん
豊富過ぎて、お酒好きな方なら迷ってしまうことも。もし迷ったら、オーナーの川島さんにおすすめを聞いてみましょう。
骨付きシカカレー
メインの「骨付きシカカレー(2700円)」です。
まずシカのスネの骨が目に飛び込んできます。大きすぎて、写真に収めるのが少々大変でした。
お肉は骨からツルンと簡単に取れます。長時間煮込んであるためか、とにかくお肉がとても柔らかくて、クセがありません。
カレーは甘口・中辛から選ぶことができ、今回は中辛を選びました。中辛ですが、主張が激しい辛さではなく、お肉の味が楽しめるくらいにバランスがよい辛さです。
さらに、初めて食べた方は野菜の甘さに驚くでしょう。味付けを聞いたところ塩のみで、特別な調味料やタレは使用していないとのこと。塩と伊豆の野菜本来の甘みで、これほどまでに甘くなるのかと驚きです。
気になるカレーの味は、お肉や野菜の味を引き立たせるためか、非常にまろやかでBistro KENでしか味わえない味でした!
移住して「猟利人(りょうりにん)」になるまで
「伊豆のジビエ屋 Bistro KEN」の猟利人ことオーナーの川島さんは、2019年に伊東市八幡野へ移住して、2021年にお店をオープンしました。
移住する前は、東京都の日比谷ペニンシュラ東京や神楽坂のフランス料理店などで料理の修業をしており、自身も将来は神楽坂でフランス料理店を開きたいと考えていたそうです。
にもかかわらず、なぜ伊東市八幡野でお店を開こうと考えたのか聞いてみました。
Bistro KEN オーナー・川島 健さん:
都会で働いているうちに、次第に地方での暮らしに憧れるようになりました。北から南まで、いろいろな物件を見て回ったり検討したりしていました。そんなとき、たまたま八幡野にあるこの物件が目に留まり、購入を即決したのがきっかけです
川島さんは伊豆に移住してから猟を始めました。猟に興味を持ったきっかけはフランス料理だったそうです。
Bistro KEN オーナー・川島 健さん:
長年修行していたフランス料理でジビエが頻繁に使用されることから、狩猟とフランス料理店を同時にやってみたいと何となく考えてはいました。のちに伊豆へ移住してから狩猟免許を取りました。はじめはほかの仕事と狩猟をして生活しようと考えていましたが、今の物件が見つかったため、想像よりも早くお店がオープンできたのです
穏やかで温かい雰囲気のなか、お客様一人ひとりに精いっぱいおもてなしができる今の環境は、川島さんがずっとやりたかったことのひとつ。伊豆への移住をきっかけに叶ったそうです。
八幡野でお店をはじめて本当によかったと、オーナーの川島さんは語ってくれました。
普段は、月に一度ほど河津の山で狩りをするそうです。狩りをするときは、一人ではなく複数の猟仲間と猟犬と一緒にでかけます。
野生動物は非常に足が速く、よほどのベテランでない限りは人間一人では追いつけず、狩るのが難しいそうです。
さらに、狩りは体力勝負! 野生動物を探して数時間も山中を歩き回ることも。
また複数人の猟師で山の周りを囲い、山の中心へ向かって歩いて野生動物を追い込み、仕留める方法もあるそうです。
狩りに成功した動物は、仲間と協力しながらトラックがある場所まで運びます。動物は大きなもので約100~130kgもあるため、狩りのあともまた一苦労ですね。
2021年に「伊豆のジビエ屋 Bistro KEN」をオープンしてから、4年目をむかえます。
伊豆への移住がきっかけで猟と料理店のオープンが叶った、オーナー・川島 健さんが手がけるジビエ料理は、クセがなく苦手な人でもあっという間に完食してしまったと評判です。
伊豆高原へお越しの際は、ぜひ伊豆の恵みをふんだんに使ったジビエ料理をご堪能ください。
■店名 伊豆のジビエ屋 BistroKEN(ビストロ ケン)
■住所 静岡県伊東市八幡野764
■営業時間 11:00~21:00
■定休 水・木
■問合せ 080-7332-6214
■駐車場 3台有り
■テイクアウト 可 ※事前にお電話で要問合せ
■支払い 現金・クレジットカード・PayPay
取材/奥村奈央
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