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【御前崎・かめや本店】ド迫力「 巨大亀まんじゅう」 酔っ払いのおかげで75年続く縁起物に

静岡・御前崎市の和菓子の老舗「かめや本店」には、75年にわたり愛され続ける看板商品の「亀まんじゅう」があります。この亀まんじゅう、人気のひとつに“大きさ”があります。最も大きな特大サイズは誰もが驚くド迫力! 奇想天外な誕生秘話を取材しました。

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特大から手のひらサイズまで5種類

御前崎市役所から車で約2~3分。遠州灘沿いを走る国道150号線からは北へ車で約5分。御前崎市池新田にある「かめや本店」。

現在は和菓子を中心とする菓子店ですが、1948年「かめやパン店」というパン店として開業しました。

1948年創業 かめや本店

かめやのロングセラーで看板商品でもある「亀まんじゅう」。5つのサイズを展開しています。

 ・特大  1404円 
 ・大   972円 
 ・中   648円 
 ・子がめ 378円 
 ・ミニ  108円 

「亀まんじゅう」(特大1404円・大972円・中648円・子亀378円・ミニ108円) ※箱は別料金

中でもインパクトが大きいのが特大サイズ。 顔が隠れるのでは?と思うほどの大きさです。

縦20cm×横16cm程、全体で約500gもあり、両手でしっかり支えないと持つことが出来ないほどの重量感。あまりの大きさと重さに、感動すら覚えます。

特大サイズの亀まんじゅうは縦20cm×横16cm、重さ500g 感動の大きさ

どのサイズの亀まんじゅうも材料は同じ。

ただ、どうしても特大とミニ両方を食べたいと思い、まずは特大サイズから。

大きい亀まんじゅうは切り分けて食べるのがおすすめ ※特別に店内で試食

大きい亀まんじゅうは複数の人たちで食べることが多いそうで、切り分けて食べました。

食べてみると、あんこのなめらかさ、生地のしっとり感、そして昔懐かしいコッペパンを食べているような優しさを感じました。

胴体から頭の部分まであんこがぎっしり

ふっくらとした生地は、あんこと良くなじんで軽い口当たり。全体にまんべんなく、ぎっしりとあんこが詰まっていますが甘さは控えめ。

むしろ、あんこが生地のほのかな甘さを引き立てているようにも感じました。

そして、一番小さい「ミニ亀まんじゅう」もいただきました。手のひらに収まるほどのかわいらしいサイズ感です。

ミニ亀まんじゅうは手のひらサイズ

どの大きさも材料は同じはずなのに、ミニの方がモチモチッとした食感を楽しめたのが不思議でした。

私も御前崎を含む遠州地域の出身ですが、実は私の周辺では好みが分かれていまして“大きい亀まんじゅう派”と“小さい亀まんじゅう派”がいます。

食べ比べて好みの亀まんじゅうを見つけるのも、おもしろいかもしれません。

「ミニ亀まんじゅう」(108円) オーブンで温めて牛乳と一緒に食べるのもおすすめ

亀まんじゅうに宿るパン店の歴史

今回は特別に製造現場を見せてもらいました。この日は2番目に大きい亀まんじゅうを作っていました。

まずは亀の頭の部分。亀まんじゅうはミニサイズ以外、すべて手作りです。

頭、胴体とパーツを徐々に組み立てていく、かなり手間のかかる作り方をしています。

亀まんじゅうの頭部 十勝産小豆で目を表現 

生地の中には、北海道の十勝産小豆を使用した自家製あんを詰めていきます。小豆の風味が残るよう、甘さ控えめのあん作りを心掛けているということ。

またお客さんのニーズに合わせ、昔と比べると甘さが抑えられているそうです。

かめや本店 3代目・笠原俊哉さん

かめや本店 3代目・笠原俊哉さん:
この作り方は手間もかかるし効率も悪いけどあえて型抜きにしないで、ひとつひとつ手作りするようにしています。手作りには、作る人によって微妙に違う形や厚さ・焼き具合などの面白さや温かさがあると思います。そんな手作りの良さを感じてもらいたいです

頭部と胴体を組み合わせ、ここに足や尾を加えていきます。

頭部と胴体を組み合わせると亀らしくなる

そして驚いたのが、甲羅の模様や絶妙な湾曲具合いも手作業で表現しているということ。昔ながらの道具を使い、立体感をつけていきます。

模様や湾曲具合も手作業で表現

卵黄を塗り、オーブンで焼いていきます。

数分経つと香ばしくも甘いパンのような柔和な香りが広がります。ホットミルクを連想する優しい良いにおい。

昔ながらのオーブンで亀まんじゅうが焼き上がる

それもそのはず。かめやにはパン店として創業した歴史があります。

亀まんじゅうにもパン作りの技術を生かし、材料には乳製品を取り入れ、特製の生地を作っています。これが味や食感、香りに「パン」や「ミルク」を感じさせる理由なのですね。

誕生のきっかけは近所の酔っ払い!?

この亀まんじゅうには愉快な誕生秘話があります。

パン店として創業した1948年の年末、初代店主は作ったパンがうまく膨らまず、どうしたものかと考えていました。

右向きと左向きの亀 向き合うと仲が良さそう

そこで、この日はパンではなく、正月の縁起物であり店名にも入っている「亀」を模したまんじゅうを作り、店頭に飾ることにしました。

そこに現れたのが、酔っ払った近所の男性。飾ってある亀のまんじゅうが欲しいと言って聞きません。

あまりのしつこさに、初代店主は渋々譲ることにしました。すると近所にそのウワサが広がり、翌日から毎日のように亀まんじゅうを求め、お客さんが訪れます。「それならば」と正式な商品を作り、販売を始めたということです。

「ミニ亀まんじゅう 10個入り」(1080円)

その後しばらくはパンも販売していましたが、徐々に「亀まんじゅう」が人気となり菓子店に移行。

当時は現在の大サイズのみでしたが、1960年~70年代にサイズを増やし、2000年頃に最も小さいミニ亀まんじゅうを発売、現在のラインナップとなりました。

「鶴亀まんじゅう」も販売中 ※要予約 写真はレプリカ

縁起の良い「鶴亀まんじゅう」も販売中で、結婚式や上棟式などおめでたい席に注文する人もいるそうです。なお、鶴まんじゅうもミニサイズから販売していますが、大きさによっては予約が必要です。

ちなみに、亀まんじゅうが誕生するきっかけとなった酔っ払いのご近所さんは当時20代。その後90代まで長生きしたそうです。やはり、亀まんじゅうは縁起が良いのかもしれませんね。

レトロ感漂う洋菓子あれこれ

かめやには、亀まんじゅう以外にも人気の商品があります。

マドレーヌ(130円)」は昭和感漂うレトロな風貌。食べてみると口溶けの良さに驚きました。サッとなじんでフワッと消える。パンケーキのようなふかふかとした食感です。

かめや本店の人気商品「マドレーヌ」(130円)

そして和風のカステラ「銀の砂(130円)」も、かめやを代表する定番商品です。

アルミ箔に包まれたカステラからは、濃厚なバターの香りがします。中にはこしあん、もしくは白あんが入っていて、コーヒー・紅茶、そして牛乳との相性も抜群です。

バターの風味がおいしい「銀の砂」(白あん・こしあん 各130円)

亀まんじゅうはじめ、いずれも材料はシンプル。余計な物は入れず素材本来の味を引き出しているのがかめやの菓子の特長です。

全国に末永く届け 亀まんじゅうの魅力

近所の人との愉快なやり取りから75年。「亀まんじゅう」は各地に知られるようになり、お正月や敬老の日には、県内のみならず全国から注文が入るようになりました。

元気でおもしろい! かめや本店3代目・笠原俊哉さん

かめや本店 3代目・笠原俊哉さん:
縁起の良い亀まんじゅうのおかげで、ここまでやってこられました。これからも元気に、まだまだ頑張るよ!

亀のように一歩ずつ着実に積み重ねてきた、かめやの歴史。「鶴は千年、亀は万年」ということわざのように、亀まんじゅうを手にした人の幸せが末永く続くことを祈っています。

■店名 かめや本店
■住所 静岡県御前崎市池新田4110-4
■営業時間 8:00~18:00 ※年中無休
■駐車場 あり
■問合せ 0537-86-2125

【もっと詳しく見る】かめや本店 公式ホームページ

取材/鈴木美花

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フリーアナウンサー 10年間長野県で局アナとして働いたのち、2024年夏、静岡県に戻ってきました。 久しぶりに過ごす静岡県は新鮮で魅力的です。再発見した地域の魅力を発信します。 静岡県掛川市出身。フリーアナウンサー事務所「舎鐘」提携アナウンサー。
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