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子供が失敗しそうになると、つい手出し口出しをしていませんか。子供の教育の専門家・高濱正伸さんは、愛情からくる過保護や過干渉は子供の自立を妨げてしまうと指摘します。強い心の子供を育てるのは試練という名の“予防注射”だからです。
12月8日にテレビ静岡で放送されたテレビ寺子屋では、思考力を重視する学習塾「花まる学習会」代表の高濱正伸さんが、強い心をもった子供の育て方について教えてくれました。
心を弱くしてしまう過保護や過干渉
花まる学習会 代表・高濱正伸さん:
今の日本では、頭はとても鍛えられても、「心が鍛えられていない」という問題があるように感じています。
一言で言えば「過保護」や「過干渉」。親が一生懸命愛情を注ぐ一方で、「そうすると転ぶよ」と手出し口出しをしてしまう。
そのことはいろんな教育者が指摘していますが、一番有名なのはジャン=ジャック・ルソーで、すでに250年前に著書「エミール」の中でこのようなことを記しています。
「母親は心配のあまり、子供が失敗しそうになると無事であるように失敗しないように怪我しないように、手出し口出しをしてしまう。それは愛情によって起こるのだが、子供の将来の自立を考えた時には、最も残忍な行為だ」と。
嫌な経験が子供の心を鍛える
では、どうやって心を鍛えたらいいのでしょうか。
まず「愛情に支えられている」ということはベースです。
嫌なことがあったときに立ち直るため、“無性に”愛してくれているお母さん、もちろんお父さんでもその代わりになる人でも、とにかく「たった一人のひいきしてくれる人」の存在がすごく重要です。
人間は「なんでこんなに、かわいがってくれるのかな」という人がいると、いろんな嫌なことがあっても頑張れちゃう。つまりそういう人の存在が土台だということです。
その上で、何回かちょこちょこ嫌なことが起こり、その度に乗り越えていくことで「心の筋肉」みたいなものがついてくる。
この嫌な経験、辛い経験を除去してしまったら、本人が本当にかわいそうです。
ずるのない「けんか」は子供任せに
例えば、「けんか」。夏休みに私が開催しているサマースクールを例に挙げると、8人班があって仲良くなり、そのうちけんかも始まる。
すると仲間内で仲裁に入ったりと子供たち同士で解決するので、基本的に放っておきます。
ところが、7対1の完全にいじめ状態になってきて「これはダメだな」と思ったら、自分たちのモラル感覚の基準で「それはずるいだろ」と、間に入ります。これは先生の役割です。
どこにも正解や唯一の解答などなくて、子供たちがそのような悪い状態になったら割って入ります。
“勝ち負け”どちらも大切な部活動
それから「部活」。試合に勝ったときの喜びの一方で、負けたときの悔しさや自分のエラーで負けたときの身の置き場のなさといったような経験が全部いい。予防注射になるんです。
「それでも先輩たちは優しかった。『次がんばろうぜ』と言ってくれて、この辛さを乗り越えた」みたいなことを、いくつも経験できます。
「子供が少し嫌な目にあったりしたけれど、たくましくなった」という機会をちゃんと積み上げていかなければいけないのに、それ自体を除去して「我が子に何も起こりませんように」というのは、もう「社会に出るな」と言っているような教育です。
常に嫌なことも起こり続けるのが社会で、それと渡り合わなければいけないのですから。
子供たちの心を強くするために、大人たちが「よし」と構えて、「試練よ来たれ」という気持ちをもって見守ってあげてほしいと思います。
高濱正伸:1959年熊本県生まれ。東京大学大学院修了。93年思考力などを重視した「花まる学習会」を設立。その後本格的な学習方法を伝授する「スクールFC」を設立。子供の「生き抜く力」を育てることを重視した教育が好評。
※この記事は12月8日にテレビ静岡で放送された「テレビ寺子屋」をもとにしています。
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