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気が付くと「3人が血を流して倒れていた…」解離性同一性症の元警察官 殺人事件当時の記憶は断片的#2

送検される元警察官の男(2022年3月)

浜松市の自宅で祖父母と長兄をハンマーで殴るなどして殺害した罪に問われている元警察官の男の裁判員裁判が10月末から続いている。元警察官はPTSDや解離性同一性症に悩まされていて、事件当時の記憶も途切れ途切れだと話す。

激しいPTSDと解離性同一性症

被告がPTSDや解離性同一性症に悩まされるようになったのは警察学校に入校してからのこと。

授業で虐待に関する犯罪が取り上げられると、幼少期に受けた虐待の記憶がよみがえり頭痛が続いた。

頭痛や吐き気、不眠といった症状は下田警察署に配属されて以降も解消されることはなく、上司からは「ボーっとしている」「結構怒るね」などと言われたが、いずれの記憶もない。

体調が上向くことはなく、このため配属から1年が経つ前の2019年6月に警察官を辞めた。

その後、実家に戻るとさらに激しいフラッシュバックに襲われるようになり、この時から“亮くん”と”ボウイ”という自身に潜む2つの別の人格を認識。

“亮くん”は次兄が小学生だった頃の姿をしていて、被告が幼少期に虐待を受けた時の記憶を肩代わりしてくれた。

一方、“ボウイ”は30代~40代の頃の父親にそっくりな容姿をしていて、被告に対して祖父母・父・長兄のことを「人の皮をかぶった悪魔」「自分の痛みを知らないからあいつらには遠慮がない。今度は俺が痛みを教えてやる」と話していたという。

被告には”ボウイ”が本来の人格とは別のところで体を自由に動かすことができ、何をするのかわからない怖さがあったため、昼夜逆転の生活を送ることで家族との接触を極力避けたが、記憶がないにも関わらず自室がめちゃくちゃになっていたり、気が付くと別の場所にいたり、用意した覚えのないハンマーや酒が車のトランクに積まれていたりすることがあったそうだ。

“過去の清算”のため家族会議を計画

警察を退職してから2年あまりが経った頃、今回の事件の遠因とも言える出来事があった。

それはかつての同僚と会って話をした時のこと。

志の高さに圧倒され、自らも頑張る気力を得たが、現実には精神的にも体調的にも仕事を始めるのは難しい状況で、解決させるためには“過去の清算”が必要だと考えた。

そのためには、自身が味わった苦痛を父や長兄に認識させた上で、警察などによる然るべき処分を受けさせるのが最適だと思い至り、家族会議の開催を発案。

家族会議の終了後に事件が…

そして2022年3月7日、被告は県外に住む次兄を呼び出し、両親を加えた4人が席に着いた。

ところが、いざ話を始めようと心が苦しくなり、フラッシュバックが起こると共に頭痛が被告を襲う。

それでも意を決して「父と長兄には警察へ行き然るべき罰を受けてほしい」「このままでは結婚もできない」と話すと再びフラッシュバックが起き、号泣してしまった。

このため、話し合いは自然と終わりを告げ、長兄が実家へ来る翌日に改めて家族会議を実施することが決まる。

翌8日、予定通り長兄も加えた5人が顔を合わせ、被告の現在の精神状態も踏まえて父と長兄は警察に行くことを約束。被告は警察を呼ぶために自室へと戻ったが、そこからの記憶は無いそうだ。

ふと気が付くと家の前の道路の真ん中に立っていることを認識した被告。

その時、父の叫び声が聞こえ、その手にはハンマーが握られていたため、自宅2階の居間へと逃げると母と次兄もそこにいた。

父が追って来たのは覚えているが、その先の記憶は再び途切れている。

次の瞬間、今度は1階に下りていて、そこで祖父母と長兄の3人が血を流して倒れているのを目の当たりにし、被告は「衝撃を受けた」と振り返る。

事件のあと、被告は警察から事情を聞かれたもののパニック状態にあり、さらに”ボウイ”から「3人を殺したのは父親だ。安心しろ」と言われたため、当初の取り調べでは「父が殺した」と話したという。

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