目次
今回チャレンジしたのは、静岡・島田市と掛川市の境にある八高山(はっこうさん)です。標高は832mと、この低山登山シリーズでは初の800m超えとなります。不摂生、運動不足、加齢の3拍子がそろう筆者ががんばった“ごほうび”か、特別天然記念物のあの動物に遭遇しました。
【画像】記事中に掲載していない画像も! この記事のギャラリーページへ八高山ってどんな山?
八高山は島田市と掛川市にまたがる山で、両市の最高峰となります。最高峰とはいえ日帰りでの登山が可能で、冬でも積雪はほとんどなく1年中楽しめる山です。頂上からは富士山も見えるそう。
山頂へは大井川鉄道・福用駅からスタートするコースのほか、掛川市井尻方面から登るルートがあります。掛川市井尻方面からのルートは標高約600mの馬王平(まおうだいら)近くまで車でアクセスできるとのこと。
どちらのコースにするのか、かなり悩みました。低山登山シリーズで登ってきた山のうち、もっとも高い山は標高561mのダイラボウです。対する八高山は標高832m。平地なら271mの差はそれほど気になりませんが、山ではあなどれない距離です。
ただ、そろそろ標高600m以上にもチャレンジしていきたいなと思っていたところだったので、思い切って福用駅からスタートするコースを選びました。
●今回の低山登山DATA
登った山:八高山
標高:832m
タイム:約5時間30分
距離:約9.7km
「急斜面コース」の名はだてじゃなかった
いざ島田市と掛川市の最高峰、八高山へと向かいましょう! 大井川鉄道・福用駅からスタートです。
なお、この先にトイレはありません。こちらで済ませておきましょう。
福用駅の前の道を北に少し進むと、「八高山」と書かれた標識がありました。
標識にしたがって進んだ先には「白光神社」があります。読み方は山と同じ「はっこう」です。境内にあった説明板によると、6世紀に八高山に白光神社が造営され、こちらはその遙拝殿として建てられたとのこと。
遙拝殿とはここでは、八高山に建つ白光神社を拝むための建物という意味です。現地に行くのが大変な人のために設けられたのでしょう。
ちなみに、同一の神社が山とふもとの両方にある場合、山に建つほうを「奥宮」や「奥社」「奥院」、ふもとに建つほうを「里宮」と呼んだりします。
では、白光神社の境内から登山道に入りましょう。こちらは「急斜面コース」と呼ばれるコースです。
その名に恥じない、なかなかの急登です。
この段階で息が完全に上がってしまうと体力的に厳しいので、息が上がらないペースを守って粛々と進みます。
急斜面コースを進むこと15分。以前は茶葉の運搬に使われていたのでしょうか。農作業用運搬機のレールをくぐります。
45分ほど歩くと、もう一つの「なだらかコース」の合流地点にやってきました。このあたりは「五輪の段」と呼ばれているようです。
名前の由来はわかりませんが、ここからしばらくは、アップダウンの少ない道のりが続きます。
八高山の山頂が見えました!「え、遠くない?」と思わずぼやいてしまいましたが、足は止めません。
修験者の不思議体験に由来「馬王平」
福用駅から約1時間30分、開けた場所に出ました。 やったー! ゴール…ではありません。こちらは「馬王平」。不思議な名前ですが、今度は由来を記した標識が立っていました。
それによると八高山にある日、一人の修験者がふもとから登ってきました。疲れていた修験者は山頂に着く前にウトウトしてしまいます。すると、夢枕に白馬にまたがった王子様が現れ、「怠らず精進せよ」と言いつけたそうです。
我に返った修験者は、「聖なる山(つまり八高山)を仰ぎ見るこの場所を馬王平と名づけよう」と決め、以降この地は馬王平と呼ばれるようになったとか。
馬王平からは晴れていれば富士山が見えるようです。残念ながらこの日は天候と元気よく伸びた草木のせいで富士山は拝めませんでした。
スタートから2時間30分!ついに山頂へ
馬王平から先は再び上りです。15分ほど進むと、巨大な「電波中継施設」があります。
さらに20分ほど進むと、丸太でつくられた鳥居がありました。その奥には社殿が。白光神社の奥宮です。
境内にはベンチもありました。お参りして少し休憩したら、山頂を目指します。
ここまで来ればあと少し。奥宮から5分ほどで、すぐ山頂に到着です。
福用駅スタートからかかった時間は約2時間30分。遠かった!
書籍やインターネットなどの情報によれば、天気がよければ東に富士山、西に浜松市のアクトタワーが見渡せるようです。
あいにくのお天気で見晴らしはいまひとつでしたが、心の眼でしかと富士山の絶景を見ました。
三角点もありました。ちなみに三角点は、緯度経度の基準となる場所に設置されています。
明治時代に全国の地図を作成するために設置されたのが始まりだそう。山頂付近や見晴らしのよいところに設置されることが多いそうです。
山の神様からのごほうび? 特別天然記念物に遭遇
持参したおにぎりとデザート、休憩でしっかりと回復できたところで、下りスタートです。
まずは五輪の段を目指し、五輪の段からは往路では通らなかった「なだらかコース」へ。
「木立の道」と名づけられた平坦な道を過ぎて再び下ると、なんと、特別天然記念物のニホンカモシカに遭遇!
撮影はできませんでしたが、このあと、7~8分歩いた所でもう一度ニホンカモシカを見かけました。大きさが違っていたのでおそらく別の個体なのでしょう。
こういう思わぬ出会いがあると、体力も気力も満ちるというものです。
その後、「茶の木の道」と命名された道を進みます。下りはじめて1時間半、そろそろひざがつらくなってきました。
30分後、舗装道路に出ると福用駅までは0.6km。登山を終えた身にはなかなかこたえる距離です。でもあと少し。
スタート地点の福用駅に戻ってきました。自分、よくやった! ゴールです。
登山アプリの記録によると、今回の低山登山の所要時間は5時間30分(休憩1時間)。これまでチャレンジしてきた低山登山のなかで、もっとも時間がかかった登山となりました。
一般に、標高1000m未満の山を「低山」と呼ぶようです。標高832mの八高山も低山と言えますが、今回のコースはスタート地点から頂上までの累積標高が約800mあるので疲れは段違い。時間もそれなりにかかりました。
これからは日が暮れるのがどんどん早くなります。挑戦される方はぜひ、時間に余裕をもって早発早着でお出かけください。運がよければ富士山の絶景やニホンカモシカに会えるかもしれません!
!CAUTION!
◎各所に案内看板がありますが、道迷いの可能性がまったくないわけではありません。特に分岐では、地図や登山アプリなどでルートを確認するのを忘れないようにしてください。
◎低山とはいえ、山は山です。適切な服装と装備で楽しんでください。
◎時期や天候によってコースの状況が変わっている可能性があります。インターネットなどでできるだけ最新の状況を確認するようにしてください。
◎静岡県内でもクマが目撃されています。低山でも油断せず、クマ鈴、クマ撃退スプレーを携帯しましょう。
【もっと見る! 低山登山の記事】