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静岡・長泉町の住宅地にある変わった地名「鮎壺(あゆつぼ)」。今は車が行き来する交差点で面影はありませんが、文字通り、かつては魚のアユと関係がある地名でした。
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そこは県道が交わる大きな交差点。交差点の名前は「鮎壺」です。なぜこんな住宅地の交差点に魚の名前が付いているのでしょうか。
ヒントを求めて、まずは近くの公園へ。
公園に向かって歩いていると、穏やかに水が流れる小川を発見。その水は、アユが生息していてもおかしくないほど透明度が高くきれいです。
鮎壺公園と書かれた看板に向かって公園に入ると、どこからか水の音が聞こえてきます。
看板をみると、近くに滝があることが判明。
住宅地にある鮎壺の滝
音のする方へ進むと、目の前に立派な滝が現れました。
長泉町と沼津市の境界となっている黄瀬川の滝、その名も「鮎壺の滝」です。
高さは約10m、幅は約65m。激しく水が打ちつけています。
こんな激しい滝がある場所にアユが生息しているのでしょうか。
「鮎」と「壺」にはどんな歴史があるのか、地元の方に話を聞いてみましたが、「有名なスポットですが、歴史はあまり詳しくない」とのこと。由来はわかりませんでした。
観光交流協会で聞き込み
地元の方に教えてもらったお散歩マップを眺めていると、「ながいずみ観光交流協会 長泉ビジターセンター」の文字が。
長泉町のガイドや情報発信もしている、ながいずみ観光交流協会で聞き込みをします。ながいずみ観光ガイドの佐久間千佳さんが対応してくれました。
ながいずみ観光交流協会・佐久間千佳さん:
1万年くらい前に噴火した富士山の溶岩が流れてきて、鮎壺の滝あたりで止まってできた段差が滝になっているんです
富士山の溶岩でできている鮎壺の滝。
下は元々あった柔らかい地層でできており、黄瀬川の流れによって削られ硬い溶岩部分が残った結果、滝ができたそうです。
約1万年の歴史があるという鮎壺の滝。この滝の名前から周辺の地名が鮎壷になったと考えられています。
遡上したアユが集まった滝つぼ
では、なぜそもそもこの滝が「鮎壺」と呼ばれるようになったかです。
アユの生息地として有名な狩野川とつながっている黄瀬川。
佐久間さんによると、昔は狩野川から黄瀬川にアユが遡上してきていたという話があるそうです。
ながいずみ観光交流協会・佐久間さん:
滝に当たるとそれ以上登れなくて、滝つぼの中にたくさんアユがたまっていたから「鮎壺」と呼ばれるようになったと言われています
激しく打ちつける滝のそばに、昔はたくさんアユがいたという驚きの情報です。
現在はあまりいなくなってしまったアユですが、最近「鮎壺の滝でアユを見た」と話すガイド仲間もいるそうです。
もしかしたらアユが戻ってきて、地名通りの鮎壺になる日がくるかもしれません。
長泉町の地名「鮎壺」は、かつて滝つぼにアユが集まっていたことに由来していました。滝の景色だけでなく歴史を感じながら見るのも面白そうですね。
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