“袴田事件”の再審判決迫る…釈放から10年 「弟・巖に真の自由をお与えください」　姉と弟の歩み

今から58年前の1966年に起きた、いわゆる袴田事件のやり直しの裁判はいよいよ9月26日に判決が言い渡されます。判決を前に3回のシリーズでこの袴田事件について特集します。第2回は釈放から10年間の袴田さんと姉・ひで子さんの歩みを見つめます。

10年に亘る姉と弟の生活

2024年3月10日。88歳の誕生日を迎えた袴田巖さん。

姉と弟の2人で暮らすようになってもう10年になります。

2014年3月27日。静岡地裁は、いわゆる袴田事件をめぐって裁判のやり直しを決定するとともに袴田さんの釈放を認めました。

袴田ひで子さん（2014年）：
巌がやっと帰ってきました

48年に及ぶ拘留生活の影響が

しかし48年にも及ぶ拘留は袴田さんの心を蝕み、釈放後初めて公の場に姿を現した際には…。

袴田巌さん（2014年4月）：
世界は完全平和。戦争もいらない。悪はない。戦国時代はない。これで完全に平和は保証された

それでも、ひで子さんはありのままの袴田さんを受け止めました。

袴田ひで子さん（2014年）：
10時間くらいここをずっと歩いている、表現が無い。あれが凄いとかこれがどうとか表現がない

“裁判のやり直し決定”が覆る

ところが4年後、2人の生活に暗雲が立ち込めます。

検察側の不服申し立てを受け審理を続けてきた東京高裁が、静岡地裁の決定を取り消したのです。

袴田ひで子さん（2018年）：
残念です。何をかいわんやです。次に向かって進みます

袴田さんが再収監されることはありませんでしたが、再審の扉がまた遠のいてしまいました。

袴田巌さん（2018年）：
うそ言っているだけ。事件がないんだから、死んだ人はいないんだ

その後2020年12月になり、最高裁は「有罪の証拠となった犯行時に着用したとする
衣類についた血痕の色の変化について専門的な調査が必要なのに審理を尽くさなかった」として舞台は再び東京高裁に。

再審の扉がついに開く

そして、2023年3月。裁判のやり直しを認める決定が示され、検察が特別抗告を断念したことからついに再審開始が確定しました。

袴田ひで子さん（2023年）：
よかった本当に。あなたの言う通りになった。57年間闘ってきたからね、いわちゃん

2023年10月には、ついにやり直しの裁判が始まり、出廷を事実上免除された袴田さんに代わってひで子さんは補佐人としてこれまで15回の審理すべてに参加しています。

袴田ひで子さん（2024年）：
9月26日になったら巖に説明しようと思っています、いろいろと。巌は妄想の世界にいるのでわかるか、わからないかどうかわかりませんがこういう風だよと説明したいと思っています。ともかく一安心でございます

釈放から10年「真の自由を！」

釈放から2024年でちょうど10年。

ただ、ひで子さんの言葉の通り袴田さんの精神状態は今も不安定なままです。

袴田ひで子さん：
刑務所では1日何枚使っていいって、ティッシュでもね、決まっているんだって。だから鼻かんだのを大事にとっていて、乾いた頃また使うってことをしてる。それを今でもやってる。48年の長年のしきたりというか、癖で

とはいえ、無罪という二文字を聞くまではこの闘いに終止符を打つことはできません。

ひで子さんは再審が始まった際、法廷で裁判官に訴えるように言いました。

「弟・巖に真の自由をお与えください」と。