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発がん性物質を扱った工場で勤務 「住民をバカにするのもいい加減にしろ」舌を一部切除した元工員の叫び

市民団体を設立した鈴木さん

発がん性が疑われる化学物質”PFAS”。産業用として長年使用されてきたが、全国各地で工場周辺の河川などから国の目標値を超える値が検出され問題となっている。

こうした中、静岡市清水区ではかつてPFASを使用していた化学メーカーの工場で働いていた元従業員の男性が、生まれ育った地域の環境と周辺住民の健康を守ろうと立ち上がった。

工場周辺でPFOAが検出

三井・ケマーズフロロプロダクツ清水工場(静岡市)

自然界で分解されず永遠の化学物質とも言われる”PFAS”。

静岡市の調査結果(2023年調査)

静岡市清水区にある三井・ケマーズフロロプロダクツ清水工場では、2013年頃までテフロンと呼ばれるフッ素樹脂を作る際にPFASの一種「PFOA」が使われていて、市が2023年に行った調査では工場周辺の水路や地下水から最も高い時には目標値の54倍ものPFOAが検出された。

また、工場から少し離れた地域でも目標値を超える値が確認されている。

薬剤で除去成功の一報も

青山慧 代表

こうした中、2024年8月21日、PFASをめぐる問題の解決に向け一筋の光が…。

山梨県の事業者と静岡市が連携して実証実験を進めたところ、薬剤を使う方法で最大80%の除去に成功したとの結果が示された。

ウォーターアリンテック・青山慧 代表:
基軸薬剤が確定した後、平均除去率は約82%となっており目標として80%を超えたため
弊社としてこの実証実験第1フェーズは成功と今回定義しました

これにより大量の汚染水を低コストで処理することへの期待が膨らんでいる。

人体に蓄積されていく化学物質

三井・ケマーズフロロプロダクツ清水工場(静岡市)

一方、PFASには自然界だけでなく人の体でも分解されず蓄積されるという特徴がある。

鈴木孝雄さん:
あの長い避雷針がある下で働いていました。あそこでPFOAを扱っていました

かつて10年以上にわたり三井・ケマーズフロロプロダクツ清水工場でPFOAを扱う仕事をしていたという鈴木孝雄さん。

鈴木さんの診断書

2024年2月、工場が元従業員を対象に行った血液検査ではアメリカの学術機関が健康に悪影響を及ぼすとして示した指標値の1.5倍のPFOAが検出されている。

鈴木孝雄さん:
「これを扱ったら体に良くないよ」という説明も当然なければ、私たちも知らないで、毎日毎日扱っていました

因果関係はわかっていないものの、10年ほど前には前がん病変として知られる白板症(はくばんしょう)を発症し舌を部分的に切除したものの、数年後に再発したという。

鈴木孝雄さん:
「このままほっとくとがんになるよ」って言われたので「じゃあ切ってください」っていって 切ってそれから数年して今度左側にもできたので再発、再再発の危険性がないわけではないからそこはちょっと不安ですよね

会社側の対応に業を煮やす

鈴木孝雄さん

この工場に関連したPFOAの問題が発覚して間もなく1年となるが、会社側は周辺の住民に対して細かい説明を行っておらず、このため鈴木さんは2024年5月に市民団体を設立し、誠意ある説明会の開催を求めている。

PFAS全国の市民団体とのオンライン会議

鈴木孝雄さん:
住民説明会をして住民からの意見を聞く、感想を聞くことによって会社の人たちも
「こんな考え方持ってらっしゃるんだ」と認識できると思うんですけどね。そういった点ではちょっといま、逃げ回っているという感じがしますよね

8月17日にはPFASの問題に関わる全国の市民団体とのオンライン会議に参加。約20の団体が現状や活動内容について報告した。

鈴木孝雄さん:
三井ケマーズは住民への説明はしていると話しています。住民への口頭での説明は一度も開かれていません。瓦版一枚で住民説明をしていると言えるのか、「住民を馬鹿にするのもいい加減にしろ」と言いたいです

安心・安全な環境を取り戻す

鈴木さんと齊藤記者

鈴木さんの願い、それは生まれ育った三保の地が安心・安全な環境を取り戻すことだ。

鈴木孝雄さん:
三保半島の環境を大事にしてもらいたいということです。それは強いては、これから育ってく子供たちのためにもなるし、それは会社のためにもなると思うんですよね 

そのためにも専門家を招いての勉強会を開くなど、まずは多くの住民にこの問題への関心を持ってもらえるよう取り組んでいく方針でいる。

国際的に 製造・輸入などが禁止

PFASについて

PFASは「有機フッ素化合物」と呼ばれる化学物質の総称です。
これまで、日本では、PFASの水や油をはじく効果を生かして、フライパンや包装紙などに使われてきました。

しかし、人体への有害性を指摘されていることから現在PFOA、PFOS、PFHxSの3つが国際的に、製造・輸入などが禁止されています。

PFASに関する発がん性の評価

2023年、WHO=世界保健機関はPFASに関して発がん性の評価の引き上げを行い、特に、PFOAについては4段階ある分類のうち最も高い「発がん性がある」に2段階引き上げられました。

この分類には、タバコやアスベストなども含まれています。

日本では、水質について、暫定目標値として50ng/Lと定められていますが、人体への影響は研究が進んでおらず、健康に被害を及ぼす具体的な数値が定められていません。
 
食品安全委員会は2024年6月、PFASの健康評価をまとめましたが、人体へ害を及ぼす証拠が不十分として、評価が定まっていません。

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