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親が絵本を読んであげると、絵本の世界を一緒に体験できた幸せを子供は感じます。どんな絵本を読んであげましょうか。雨の日に出かけたくなる本、困難を乗り越える勇気が湧く本、教育の専門家がオススメする絵本とその理由を紹介します。
テレビ静岡で8月25日に放送されたテレビ寺子屋では、玉川大学教授の大豆生田(おおまめうだ)啓友さんが、子供の世界を広げるおすすめの絵本を紹介してくれました。
絵本を通じたコミュニケーション
玉川大学教授・大豆生田啓友:
子供との絵本を読みながらのやりとりは、「こんなことを言うんだ」「そんなふうに面白がるんだ」といったことも含めてコミュニケーションツールとしてすごく面白く、僕は子供から「絵本って面白いんだ」ということを教えてもらったと思っています。
そんな絵本の中から、僕のおすすめを紹介します。
雨の魅力を知る「雨、あめ」
「雨、あめ」作:ピーター・スピアー(評論社)
雨の日は、大人は憂うつ、残念と思ってしまいがちですが、子供からすると本来はすごくすてきだと思えるものなんですよね。
この絵本は、雨の日の外がどれほど魅力的かということが絵だけでつづられています。見慣れたクモの巣も、ついた雨粒がピカピカ光り美しいダイヤモンドのように見えたり、普段見ないような動物が雨の日は出てきたりします。いいことばかりじゃなくて、車が通るとジャーっと水をかぶるだとか、豊かな環境が満載です。
私たちが日常当たり前に見ている環境、景色が、ちょっと雨が降るだけでこんなに魅力的なのだとしたら、やっぱりこの世界は魅力的にできているんだということを子供たちに知ってもらいたい。
きっとこの本を見た親子は雨の日に外に行きたくなると思います。そんなきっかけになる絵本です。
勇気を与えてくれる「エルマーのぼうけん」
「エルマーのぼうけん」作:ルース・スタイルス・ガネット 絵:ルース・クリスマン・ガネット 訳:渡辺茂男(福音館書店)
正確に言うと「幼年童話」と言われる本です。5歳くらいになり自分で言葉を聞いて理解できるようになってくると、長編の話が面白くなります。
「エルマーのぼうけん」は、エルマーエレベーターという男の子が、どうぶつ島という島にかわいそうな竜を助けるために旅に出るお話です。
島に行くといろんな動物が出てきて、トラもライオンも「お前を食べる」と言います。読んでいると、子供たちはもうドキドキでいっぱいです。
でも、エルマーはいろんな知恵を使って乗り越え、最後は竜に出会えます。
幼児期の子供たちも楽しいことばかりではなく、悩みやうまくいかないことや、「他の子と比べて僕できない」などと、親に言わないかもしれませんがみんな考えています。
でも、その困難をまさにこの物語、冒険を通して乗り越えるという勇気をもらっているんですよね。
しかもエルマーがいろんなアイデア、知恵を出すところも魅力的で、「僕もできる、乗り越えていけるんだ」ということを、ファンタジーの世界から知ることができるのだと思います。
自分とエルマーを重ね合わせ、一緒に冒険し、現実世界に力を与えてもらえるのです。
世界を広げるきっかけに
絵本を通して自分の世界をより広げていく。「世界って魅力にあふれている。もっと自分から歩み出したい」と思うような、絵本にはそんな良さもあるのだと思っています。
そして、読んであげることもすごく大事です。親からお話の世界を伝えてもらったことで感じる、一緒に困難を乗り越えたりすごく愛情を受けたりした感覚のようなものは、後々の幸せな感覚、ウェルビーイングにつながるのだと思います。
ぜひ絵本を開いて、楽しい時間を過ごしてください。
大豆生田啓友:1965年生まれ。青山学院大学大学院を修了後、青山学院幼稚園教諭などを経て現職。専門は乳幼児教育学、保育学、子育て支援。2男1女の父。子育て本を中心に著書多数。
※この記事は8月25日にテレビ静岡で放送された「テレビ寺子屋」をもとにしています。
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