「令和のコメ騒動」と呼ばれ店頭での品薄状態や価格が高止まりしていた状況が一転、2026年は値下がりが続いています。消費者としてはありがたい状況ですが、生産者は乱高下する米価格に頭を悩ませています。
9月、静岡県袋井市で行われていた新米の収穫。
米農家・佐野文菜さん(37)は、2026年の収穫を複雑な心境で迎えていました。
米農家・佐野文菜さん:
無事に刈り取りを迎えられて嬉しい気持ちと、概算金の提示が低かったので、悲しいというか悔しいという気持ち
理由の一つが、JAが農家から米を集める際に前払いする概算金です。
8月にJAが佐野さんに示した金額は2025年に比べて、約4割下落していました。
米農家・佐野文菜さん:
儲けは正直出ていない。この概算金だと。生産コストも一生懸命努力して、とにかく下げられるようにしているけれど、経営努力の限界に近付いている印象がある
生産者は、米価格の乱高下に翻ろうされています。
袋井市で、夫の友幸さん(36)とともに米農家を営んでいる佐野文菜さん。
米価格の乱高下に翻ろうされています。
8月上旬にJAが佐野さんに示したコシヒカリ60kgあたりの概算金は、1万4040円。
2025年(2万4000円)に比べ、約1万円値下がりしました。
米農家・佐野文菜さん:
最初は、えっ!と思った。今の物価高がすごいことになっていて、燃料代・機械代・肥料代はすべてが1.5倍の価格になっている。このような中で米の価格だけが下がっているというのは、がんばっても難しい
農家から米を買い取る際に、JAなどが一時的に前払いする「概算金」。
農家の資金繰りを支える重要な収入源です。
その収入源が減る一方で、物価高が押し寄せています。
米農家・佐野文菜さん:
いま稲を刈っているコンバインという機械。すごく高いけど、買った7~8年前は1600万円くらいだったが、いまは2300~2400万円くらいする。他にも機械はたくさんあるので、どうやって更新していこうか悩んでいる
米の業界団体(米穀安定供給確保支援機構)が4月に公表した米のコスト指標(60kg当たり2万535円)はすでに概算金を上回っていて、厳しさは増しています。
米農家・佐野文菜さん:
いま米農家の平均年齢が70歳といわれているけれど、私たちのような30代の農家は数%しかいないといわれている中で、後継者が就かない産業になってしまっているのでは。37~38%の食料自給率がさらに今後下がってしまって、また米騒動や米不足を繰り返してしまうのではと懸念をもっている
一方で、スーパーでは現在3000円を下回る米が多く出回っています。
9月20日までの1週間で、全国のスーパーで販売された米5kg当たりの平均価格は、2934円。
2週連続で3000円を下回っています。
2025年とは一転、安値になった理由について専門家は備蓄米が多く出回ったことと、2026年の豊作を挙げます。
宮城大学・大泉一貫 名誉教授:
令和の米騒動の時に本来であれば備蓄米を放出しなければいけなかったが、去年にずれ込んでしまった。その量が非常に多かったということがひとつ。もうひとつは昨年の作柄が良くて増産になった
そのうえで、今後の価格の見通しについて聞くと・・・
宮城大学・大泉一貫 名誉教授:
需給バランスが大幅に崩れているので、供給過剰という状況の中では価格は下がっていくだろう。米の種類によっては(5kg)3000円を超えるもの、3000円を割る2000円代の米というところで、平均が3000円代で推移することになるのでは
米価格の下落は、作付面積の拡大にも冷や水を浴びせています。
米の作付面積と収穫量が県内1位の磐田市。
この日は、市の職員が50年以上の経験を持つ米農家・榊原茂さん(76)の元を訪れていました。
磐田市 農林水産課・河合高宏グループ長:
最近の米価格など、話題になっているけど大変ですよね?
米農家・榊原茂さん:
大変。たぶん今年の米価だと嫌気がさして、2年3年続くと大きな農家も採算割れになってくる
稲作を守り、荒れた農地を出さないために引退した農家の田んぼを引き継ぎながら、米作りを行っている榊原さん。
引き継ぐ田んぼは、条件の良い土地ばかりではなく手間や労力を考えると、採算が合わなくなっています。
米農家・榊原茂さん:
採算が合わないと、(面積が)大きいほどマイナスが大きい。豊作を喜べるような価格と周りの環境があれば
宮城大学・大泉一貫 名誉教授:
食糧法に基づく需給管理システムは、これまでも計画通りにいってこなかった。不足と過剰を繰り返すというのが現状だったし。令和の米騒動で、振れ幅が非常に大きくなって、そろそろ限界に近いというのは国民も分かり始めてきたと思う。新たなシステムに変えなければいけない
