8月27日、石川県や富山県で大雨特別警報が発表されるなど、大雨による水害が頻発し激甚化するなか、静岡県内では水田を生かした治水の取り組みが広がっています。川の急激な水位上昇を抑える「田んぼダム」とは。
伊豆の国市 原木(ばらき)の水田。
一見 普通の水田に見えますが、水を貯める能力を高めた「田んぼダム」と呼ばれる水田です。
伊豆の国市がモデル事業として530万円をかけて整備しました。
伊豆の国市 農林課・小川彰弘さん:
通常の畦畔に比べて約10cm高くして、30cmの高さを畦畔として、水がたくさん貯留できるよう整備した
広さは約4000平方メートル。
周囲を囲む畔をかさ上げしたことで、一般的な25mプール約3杯分の水を貯えることができます。
また、水の量を調節できる排水桝も設置しました。
伊豆の国市 農林課・水口俊平さん:
雨が降ると田んぼにたまった雨水がここのスリットからゆっくり落ちる。排水路や河川の水位の抑制につながるような効果を期待している
この「田んぼダム」は大雨の際、水田にたまった水を少しずつ排水し、水路や河川の急激な水位上昇を抑えることで住宅などの浸水被害を軽減することが期待されています。
各地で頻発するゲリラ豪雨。
県内でも大雨による被害は毎年のように起きています。
東部農林事務所 農山村整備部・石田敦志 部長:
近年 豪雨災害・大きな雨がひん発、しかも激甚化している。まず流域治水、流域関係者がみんなで取り組む形の治水対策が2021年から始まっている
堤防の整備など、河川そのものの治水対策に加えて、流域全体で取り組む「流域治水」の一環として注目されているのが「田んぼダム」です。
県内の「田んぼダム」は西部地区を中心に増えていますが、東部では県全体の5%ほどにとどまっています。
東部農林事務所 農山村整備部・石田敦志 部長:
東部地域 特に狩野川の中流は非常に水害が歴史的にも多い。このあたりでこれからは取り組みを増やしていきたい
三島市の安久(やすひさ)地区。
7.2haの水田が「田んぼダム」の機能を持ちます。
農家・山田俊一さん:
このうしろがで御園という地区だが、この地区で(狩野川まで)一番最後のところなのでよく水がついてしまった
中心となって取り組んでいるのは、農家の山田俊一さん。
子供のころの記憶が防災への強い思いにつながっています。
農家・山田俊一さん:
子供の頃 狩野川台風など大水がついた時、この安久地区もよく水がついた。子供の頃は公民館に小船があった。いざという時には公民館から小船を下ろして助けに行くという記憶がある。(下流の地区のために)必死に取り組まなくてはいけない
この「田んぼダム」によって水害のリスクが減らせるのは、「田んぼダム」よりも下流の地域。
水害で困っている地域ではなく、その上流の地域で「田んぼダム」を増やす必要があります。
この日、田んぼダムに集まったのは沼津高専の学生たち。
沼津高専 電子制御工学科(5年)・大澤宗太朗さん:
ここにセンサーがあって水面との距離を常に測っている。センサーで取ったデータをコンピューターで解析して、ここにあるアンテナで親機に向かって送るというデータの流れになっている
「田んぼダム」の効果を「見える化」するため、水位の観測機器を卒業研究として開発しています。
沼津高専 電子制御工学科(5年)・山田凰嘉さん:
センサーから数値を出し、実際の効力がどれくらいあるか数字で示すことで、田んぼを作ってくれる人の協力を仰いだり、同じ雨量でも「田んぼダム」を増やしていけば大丈夫かも、川が氾濫しないかもしれないという安心材料にもなる
2026年度から「田んぼダム」のモデル事業をスタートさせた伊豆の国市。
防災だけではない、もう一つの狙いがあります。
伊豆の国市 農林課・小川彰弘さん:
3区画あった田んぼを1つにした。ひとつにしたといっても地権者・所有者が変わったのでなく、3つの田んぼの間を仕切っていた畦畔を取り除いて大区画化することによる生産性の向上も期待している
農家の高齢化や地権者の代替わりで使われなくなった水田も多く、目指すのは「地域防災」と「農業の効率化」の両立です。
農家・野田勇二さん:
(水田)3枚が1枚になれば仕事が1回で済むという面で、耕作者としてはやりやすくなった。それはもう今までとは全然違う。(田んぼダムとしては)正直1枚だけだとやっぱりまだまだだと思うので、その考え方が広まってくれればいい
元々ある水田の能力を活用した治水対策「田んぼダム」。
「流域全体で地域を守る」という意識と共に、今後の広がりが期待されます。
