
静岡県小山町にある道の駅で、前の指定管理者が町と協定を結んだ期間を満了した後も施設の明け渡しに応じず、“居座り”営業を続けている問題で、前指定管理者が厨房等の改修に要した費用の負担を求めていることがわかった。
小山町にある「道の駅 すばしり」の管理・運営をめぐっては、町が観光開発株式会社(小山町)と2026年3月31日までの5年間を指定管理期間とする協定を結んでいたが、プロポーザル方式による審査を経て同年4月1日からは株式会社名鉄ミライート(愛知県一宮市)が新たな指定管理者となることが決まっている。
公募には観光開発も手を挙げていたが、関係者によれば名鉄ミライートと観光開発とでは審査結果が165点満点で18点の開きがあったと言い、2025年11月28日に行われた小山町議会の定例会で、同町の経済産業部長は名鉄ミライートを選定した理由について、「道の駅『すばしり』を富士山観光の重要拠点と位置づけ、観光案内機能の強化、物販・飲食の充実、富士登山と連動した企画、地元団体と連携した共同イベントの実施、さらに電動自転車レンタル事業、日本野鳥の会発祥の地としてのPRなどに加え、名鉄グループのノウハウとネットワークを活かした管理運営体制により、施設の適正な管理運営と観光交流及び地域振興の両立が十分に期待できる内容」と述べている。
ただ、観光開発は現在に至るまで施設の明け渡しに応じておらず、小山町は暫定的に町が直営で施設の管理・運営することにしたが、実態としては管理権限のない観光開発による営業が続いている。
このため、もちろん名鉄ミライートは「道の駅 すばしり」での営業が開始できていない。
観光開発が「道の駅 すばしり」のホームページ上で公表した声明によれば、同社は小山町と名鉄ミライートに対して「指定期間が満了する日以降、速やかに原状回復工事を行った上で次期指定管理者に引き継ぐ意向であることを1月から伝えていた」という。
しかし、小山町側は人手不足などが影響して原状回復工事の工期が長引き、長期間にわたって道の駅が営業できなくなることを懸念し、観光開発側に対して原状回復義務を免除する考えを伝えた。
小山町が制定している「小山町道の駅『すばしり』観光交流センターの設置及び管理に関する条例」の第16条【原状回復の義務】の項目では「指定管理者は、指定を外れた場合、センターを原状に回復しなければならない」と規定されているが、但し書きがあり、「町長の承認を得たときは、この限りではない」となっていて、同町としてはこれを適用した形だ。
このため、観光開発も声明において「協定で定められた原状回復に依らずして、当社が指定管理者となっていた際に小山町の承認の下で当社の費用負担にて価値向上を図った現状の設備も含めて次期指定管理者に引き継ぐことに向けた協議を行っている段階」との認識を示しつつ、「本年1月から協議を開始していたものの現在も協議中であり、原状回復工事を実施するか、あるいは実施せずして次期指定管理者への引き継ぎのいずれとなるかが定まっていない状況」とも述べている。
一体どういうことなのか?
背景には観光開発が実施した設備投資があると見られている。
観光開発の代理人弁護士や関係者の話を総合すると、観光開発は「道の駅 すばしり」の指定管理者となった2021年4月1日以降、小山町の了承を得た上で約5100万円を投じて厨房の設備更新や床の張り替えなど施設改修を行った。
ところが、投資費用を回収する前に指定管理を外れることになったため、原状回復をしない場合、小山町に費用の一部を負担するよう求めている。
これが観光開発の言う「小山町の承認の下で当社の費用負担にて価値向上を図った現状の設備も含めて次期指定管理者に引き継ぐことに向けた協議を行っている段階」にあたる。
一方、小山町としては工事を了承したとは言え、自費での施設改修を条件として承諾した経緯がある上、町が依頼して実施した工事でもないという立場のため、言うまでもなく込山正秀 町長は支払いを拒否した。
観光開発側は「当社としては、従前の経緯、現状及び今後の協議も踏まえ、本件の協議を依頼している弁護士と相談の上、道の駅としての機能を維持し、地域経済への影響を最小限とすべく、その趣旨を示した上で、本年4月1日以降も暫定的に本道の駅の営業を継続している」と主張しているが、小山町は一刻も早い施設の明け渡しを求めていて、法的措置も辞さない構えでいる。
そもそもで言えば、一連の問題は基本協定書の解釈が大きく乖離していることに起因する。
協定では指定管理期間が満了した場合、速やかに原状回復した上で物件を明け渡すことを約束している上、町が求めた場合は物件を明け渡さなければならないという条項も設定されていることから、小山町としては日付こそ明記されていないものの3月31日までに明け渡すのが当然というスタンスでいる。
そうでなければ、名鉄ミライートが指定管理の開始日である4月1日から営業できないからだ。
だが、観光開発は物件明け渡しの時期について「原状回復工事を4月1日から実施し、その工事が完了した後となるので、4月1日に明け渡さなければならないものではない」と強調していて、両者との間に生じた溝は現時点で埋まる気配がない。
