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「木育」が子供の感性を育てる。そう話すのは東京おもちゃ美術館元館長の多田千尋さんです。木の積み木や木の楽器など、赤ちゃんから始める木育が、なぜ大切なのでしょうか。

テレビ静岡で2026年3月22日に放送されたテレビ寺子屋では、東京おもちゃ美術館・元館長の多田千尋さんが、木育おもちゃを通じた感性を豊かにする子育てについて語りました。
五感で勝負する赤ちゃんに「木育」
東京おもちゃ美術館 元館長・多田千尋さん:
「木育(もくいく)」とは、木に親しみ、木をいかし、木と共に生きていく取り組みのことで、「おもちゃ美術館」は赤ちゃんから始める生涯木育を提唱しています。五感で勝負する赤ちゃんが小さいころから木に触れていることは、とても大切なことなのです。

私たちはよく「感性豊かな子供に育てたい」と言いますが、そもそも感性とは一体なんでしょうか。私が考える「感性」とは「感じる力」と「表現する力」の結晶体です。どちらか片方ではなく、両方とも豊かな子供こそが「感性豊かな子供」だと私は思います。
その「感性豊かな子供」を育てるために、この「木育」は大きな役割を果たしてくれます。
積み木と音楽が育む芸術的感性

子供を育てるにあたって、江戸時代には「読み書きそろばん」が主流でした。でも明治に入り、読み書きそろばんだけでは足りないということで、「感性」を育てる「芸術」という分野が入ってきました。
芸術で子供を育てようと考えたときに、「木育」と特に相性が良いのは「建築」と「音楽」の2つの分野です。

子供が「建築」を身につけるには、「積み木」がうってつけです。家を作ったり、ビルを作ったり、お城やロケットなど、子供はあらゆるものを積み木で作ります。全神経を集中させて楽しみながら、建築学を身につけているわけです。
心が動けば体が動く 木琴の奇跡
次に、「音楽」の分野で紹介したいのが、どれだけ適当に叩いても琉球民謡になる木琴です。適当に叩くだけで、沖縄の方なら踊りたくなるような琉球音楽が奏でられます。
種を明かすと、これは「レ」と「ラ」の2音階を抜いてある「レラ抜き木琴」なんです。琉球音階は「レ」と「ラ」を除いた5音で構成されているので、この木琴は楽譜を読めない子供でも簡単に琉球民謡の雰囲気を醸し出すことができます。

この木琴は子供たちを“とりこ”にしただけではありませんでした。
沖縄の老人ホームに持って行って叩いたところ、90歳近いおばあちゃんが駆け寄ってきて「私にもやらせて」と言うので渡すと、ずっと叩き続けるのです。すると、隣に座っていた90歳のおじいちゃんが立ち上がって、両手を上げて踊り出しました。

僕の横にいた新人の作業療法士さんが「自分はあのおじいさんのリハビリをしていますが、両手が肩より上に上がったのを初めて見ました」と言います。不思議なことが起きるなと思いました。
心が動けば体が動く、ということなのかもしれません。木のおもちゃで遊ぶことによって、そもそも人間が持っている「感性」がよみがえってくるようです。
木育の輪を広げる
子供の「木育」の初めの一歩として、ぜひ木のおもちゃで遊び、木と親しんでみてください。
そこから、森林へ出かけてみたり、山に登ってみたり、どんどん木育の輪を広げて、子供の「感じる力」と「表現する力」を養って、「感性」を育てていただきたいと思います。

多田千尋:東京都生まれ。NPO法人 芸術と遊び創造協会 理事長。2008年に東京おもちゃ美術館を開設し、長年館長を務めた。木のおもちゃを子育てに取り入れる「木育」を推進。全国の姉妹おもちゃ美術館の総合監修を務める。
※この記事は2026年3月22日にテレビ静岡で放送された「テレビ寺子屋」をもとにしています。
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