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静岡・菊川市のお茶販売所跡にオープンした「パン工房 ふくふく堂」。店主が大切にするのは、パンを通じた“幸せの交換”です。人気の「天使のおしりぱん」など、日常に溶け込む優しい味と店主の思いをお伝えします。
【画像】記事中に掲載していない画像も! この記事のギャラリーページへ30年続いたお茶販売所の跡に生まれたパン店

静岡・菊川市嶺田。30年もの間、地域に親しまれたお茶の販売所「小笠農園」がありました。
その思い出深い建物を受け継ぎ、2022年8月にオープンしたのが「パン工房 ふくふく堂」です。

一歩足を踏み入れると広がる、焼きたてパンの香りと店主・鈴木麻希さんの柔らかな笑顔。
そこは、単なるパン工房以上の「温もり」が満ちている場所でした。

迷いの中で見つけた「今」というタイミング
店主の鈴木さんは、もともと専門学校でパン作りを学んでいた大のパン好き。
けれど、子育てという大切な時間のために一度はパンの道から離れ、全く違う仕事をした時期もあったそうです。

パートとしてベーカリーコーナーで働いていた頃、コロナ禍でお茶の販売所「小笠農園」が閉店することに。その土地の所有者だった鈴木さんの両親から、建物を活用できないかと持ちかけられます。
子供がまだ中高生だったので迷いがありましたが、鈴木さんの背中を押したのは「今やらなければ、いつやるのか」という自分自身の真っ直ぐな思いでした。
その決断が、今ある地域に愛される「ふくふく堂」の始まりとなりました。

店名に込められた「幸せの交換」
「ふくふく堂」という名前、口にするだけでなんだか口角が上がってしまいそうな、優しい響きですよね。
ふくふく堂・鈴木麻希さん:
パンを焼いて「おいしいもの」という幸せを用意して待つ私と、ワクワクした「幸せな気持ち」で買いに来てくださるお客さま。その幸せ同士を交換する場所にしたいんです
鈴木さんは、店名に込めた思いをそう語ってくれました。

お店のこだわりは、背伸びをしない「日常に溶け込むパン」であること。
食卓の主役を奪うような特別なパンではなく、毎日食べても飽きない、そっと家族の会話の脇役となるパン。
高級な材料にこだわることよりも、誰もが安心して買いに来られるよう、なじみのある材料で丁寧に焼き上げることを大切にしています。
1日100個売れる「天使のおしりぱん」
お店に並ぶ約25種類のパンの中でも、特に人気なパンが2つあります。
「ふくふく食パン(1斤420円)」は、午前11時頃には売り切れてしまうことも多い看板メニュー。

「天使のおしりぱん(150円)」は、1日100個ほど売れるという驚きの人気商品。
名前からして愛らしい「天使のおしりぱん」は、その名の通り驚くほどふわふわです。

手に取ると指が沈むほどやわらかく、思わず頬がゆるんでしまうような優しい食感です。
ほんのり甘さのあるシンプルなパンで、菓子パンというよりは、ふわふわ食感を楽しめるプレーンタイプのパンになります。

自家製カスタード入りの「ふくふくちゃんのくりーむほっぺ(220円)」も、人気のパンです。
ふんわりとしたパン生地の中にカスタードクリームが入っており、優しい甘さがパンとよく合います。

パンと一緒に小さな“ふく”を持ち帰る
店内には、焼き立てのパンの香りが優しく漂っています。
土曜日は午後1時頃には完売してしまうこともあるほどの人気です。

取材中、あるエピソードが心に残りました。
値上げを検討し、申し訳なさを感じていた鈴木さんに、ひとりの年配の男性客がこう声をかけたそうです。
「いつも笑顔で迎えてくれて、おいしそうなパンがある。こういうものにお金を出せることが、私にとっての幸せなんだよ」。
その言葉は、鈴木さんが大切にしている「お客さまも、従業員も、自分も笑顔でいられる場所」という理想が、しっかり形になっている証拠なのだと感じました。

お仕事帰りや、家事の合間のひとり時間。ふらりと立ち寄って、鈴木さんの笑顔と柔らかなパンに触れるだけで、ささくれ立っていた心が少しだけ丸くなるような気がします。
特別な日じゃないけれど、なんだか良い一日だった。そんな小さな“ふく”を、「ふくふく堂」のパンと一緒に持ち帰ってみてはいかがでしょうか。
■店名 パン工房 ふくふく堂
■住所 静岡県菊川市嶺田286-1
■営業時間 10:00~売り切れ次第終了
■定休 月・火・金・日
取材/くるみ
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