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「内閣総理大臣としての進退をかける」。高市首相が衆議院を電撃解散したことに伴う第51回衆議院議員総選挙は自民党が戦後最多となる316議席を獲得し、大勝に終わった。一方で、衆院の解散直前に立憲民主党と公明党が立ち上げた中道改革連合は大惨敗を喫し、早くも党の存続すら危ぶまれる事態となっている。
比例上位を捨ててまで立憲がすがった”学会票”
永田町に“解散風”が吹き荒れていた1月15日。
立憲民主党と公明党は党首会談を経て、衆院選に向け新党を立ち上げることで合意した。
これを前に、立憲の両院議員総会で「チャンスととらえて、中道の旗のもとにみんなで力をあわせて頑張っていこう」と気勢を上げたのは野田代表(当時)だ。
両党首は翌16日に会見を開き、新党の名前を「中道改革連合」とすることを発表。
野田代表は「中道は右にも左にも傾かず、対立点はあるかもしれないが熟議を通して解を見いだしていく」と来るべき決戦に向け自信をのぞかせた。
衆院選に臨むにあたっては公明出身者が小選挙区から“撤退”。全員が比例代表に回り、新党の票の掘り起こしに“専念”することになった。
ただ、関係者に衝撃を与えたのは、その“優遇”ぶりだ。
中道の比例代表名簿は、全国11ブロックいずれも公明出身者が上位を”独占”。
これには、ある野党の幹部も「完全に公明に乗っ取られている。立憲出身者の比例復活の可能性が激減じゃないか」と驚きの声をあげた。
立憲出身の中道幹部からすれば、比例の上位を捨ててでも公明の支持母体・創価学会の”学会票”が欲しかったということの現れであるし、小選挙区で学会票が立憲出身者に”乗れば”接戦区も勝ち抜けるという打算があったのだろう。
学会は”反高市”で結束か…”裏切り”の形跡なし
しかし、結果はご承知の通り大惨敗。
小選挙区を勝ち抜いたのは全国でわずか7人しかおらず、前職4人を含む5人が立候補した静岡県はゼロだった。
県内のある自民候補の選挙事務所には、創価学会の学会員を名乗る人物から「私は応援しているから」「中道候補には入れたくない」といった内容の電話が複数回あったという。
陣営関係者は「電話だから本当に学会員かわからない…」と言うが、当該の選挙区に立候補した中道候補について創価学会は従前から”良いイメージ”を抱いておらず、新党の結成が発表された際に関係者が「地元の反発がすごい」とこぼしていたことから、実在する学会員による本音と捉えるのが妥当だろう。
事実、この自民候補の演説会や集会には創価学会や機関紙である聖教新聞の関係者の姿があった。
とはいえ、こうした事例はごく一部に過ぎず、当初、政治関係者の間で噂されたように”長年の付き合いから学会票が一定数、自民候補に残る”といったことはほぼなかったと推定される。
それを裏付けるように、FNNが県内240カ所で実施した出口調査によれば、中道の前職がいる選挙区の場合、いずれも比例代表で中道に票を投じた人の9割前後は小選挙区で中道候補に票を投じたと回答した。
1+1=2どころか力を削がれる結果に
一方で気になるデータもある。
旧立憲と旧国民民主党の合流により、現在の立憲となった2020年9月以降に行われた国政選挙の立憲及び公明の県内比例票を見てみると、以下の通りとなる。
第49回衆院選(2021年)
立憲:34万184.725票
公明:18万4221票
合計:52万4405.725票
第26回参院選(2022年)
立憲:15万7665.052票
公明:17万5382.108票
合計:33万3047.16票
第50回衆院選(2024年)
立憲:38万3270.320票
公明:17万7829票
合計:56万1099.32票
第27回参院選(2025年)
立憲:18万7651.406票
公明:14万1493.551票
合計:32万9144.957票
これに対して、今回の衆院選において中道が静岡県で獲得した比例票は28万8323票。
第26回参院選と第27回参院選はいずれも立憲が静岡県選挙区に公認候補を擁立しなかったこともあり、第49回衆院選や第50回衆院選と比べると比例票の出方が鈍いが、中道の比例票は得票がイマイチだった参院選の立憲と公明の合計をも下回り、第50回衆院選との比較においてはほぼ半減している。
そもそもで言えば、強固な支持者であれば公認候補がいようがいまいが、比例の選択肢が衆院選より多い参院選であろうがなかろうが、立憲に投票するだろう。
それが候補者のいない参院選と、いずれも8選挙区中7選挙区で候補者を擁立した2回の衆院選とで20万票前後も得票に差が出ている。
加えて、今回の選挙では中道として5人を擁立しながらも前回選の立憲と公明の得票合計の約半分で、昨夏の参院選における両党の得票合計をも下回ったということはコアな立憲支持層に見限られた上に、これまで特に衆院選で立憲の得票を支えていた支持政党を持たない、いわゆる無党派層にも浸透しなかったと言える。
その証左に、今回の出口調査からすると無党派層は中道候補よりも自民候補に票を投じたようだ。
無党派層の投票動向を選挙区順に見ていくと静岡2区は61%が自民候補で39%が中道候補、静岡3区は53%が自民候補で34%が中道候補、静岡5区は72%が自民候補で16%が中道候補、静岡6区は60%が自民候補で32%が中道候補、静岡8区は32%が自民候補で49%が中道候補と、自民候補を上回っているのは5選挙区中1つしかない。
“学会票”の本当の力はいかに
また、同時に”学会票”の本当の力という部分でも疑問が生じる。
公明党は2021年から2024年にかけての3回の国政選で安定して18万票前後の比例票を獲得していたが、2025年に突如として14万台の前半にまで票を減らした。
この時はまだ連立を離脱する前で、それまでの国政選同様に自民候補が「比例は公明」と呼びかけていたにもかかわらず、だ。
県内の自民関係者は衆院選で1つの小選挙区あたり、“学会票”を2万票と仮定して“票読み”をすることが多い。
だが、2万票に8つの小選挙区を掛ければ16万票と第27回参院選の公明比例票を優に超えてしまうし、前述の通り、これまでは自民候補の呼びかけにより自民支持層の票が一定程度は乗っていた。
各選挙区にどの程度、学会員がいるのかについては創価学会のみぞ知るところであり、それに付随して学会員による友人・知人への声掛けによって獲得できる得票見通しを計算できるのも創価学会だけだ。
ただ、外形的事実から自民関係者がこれまで”学会票”を過大評価してきた可能性は十分にあり得る。
