海に入る車イスの人
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【伊東】障がいを持った人を海へ招待!「みんなで一緒に海あそび」

夏本番、海遊びが気持ちいい季節。障がいを持った人や同行者14人を招き、伊東の海でマリンアクティビティを満喫してもらうイベントが開催されました。スタッフ側としてボランティア参加し、障がいを持った人が海を楽しむ様子を間近で見た体験をリポートします。

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ダイビングやカヤックを無料で体験

(画像提供:非営利活動団体 TRY)
「みんなで一緒に海あそび」の会場(画像提供:非営利活動団体 TRY)

2025年7月26日、障がいをもった人に海のすばらしさや気持ちよさを満喫してもらうため、「みんなで一緒に海あそび」というイベントが開催されました。

主催は障がい者ダイビングの指導・サービスを提供している非営利活動団体「TRY(トライ)」です。

体験ダイビングのフィンを試着

参加したのは身体障がいがある3人と、知的障がいがある3人。同行者も一緒にシュノーケリングやカヤックなど、マリンアクティビティ3種類を無料で体験できます。

・体験ダイビング
・カヤック
・シュノーケリング

また、有料でドルフィンスイムも選択できます。

(画像提供:水中写真家 三宅健史)
間近でイルカがジャンプするドルフィンスイム(画像提供:水中写真家 三宅健史)

参加者のなかには、車イスで生活している人や、知的障がいがありコミュニケーションをとるのが苦手な人がいました。しかし、スタッフの上手なサポートにより、ストレスなく海遊びを楽しんでいました。

「20年ぶりの海!」という人も

普段は車イスで生活している人は、体験ダイビングを楽しみました。水中はクリアな水色で、いろいろなお魚に出会えたようです。

(画像提供:水中写真家 三宅健史)
車イスの人が体験ダイビング(画像提供:水中写真家 三宅健史)

スキューバダイビングは通常、水中では口のみで呼吸をします。

しかし、お客さんの負担やストレスを和らげるため、今回は「フルフェイスマスク」という、口と鼻で呼吸ができる特別なマスクを使用しました。

(画像提供:水中写真家 三宅健史)
車イスの人が体験ダイビング(画像提供:水中写真家 三宅健史)

今回、体験ダイビングをしたお客さんは2人。海の中でずっと目が輝いていました。

体験ダイビングに参加・坂下 哲也さん:
20年ぶりに海に入りました。思ったよりもお魚がたくさんいて楽しかったです。呼吸も全然苦しくありませんでした

(画像提供:水中写真家 三宅健史)
水に浮くポールにつかまりシュノーケリング(画像提供:水中写真家 三宅健史)

シュノーケリングでは水面に浮くタイプのポールにつかまって、浅瀬をパシャパシャ。

子供たちはみんな、はしゃいで思わず遠くまで行こうとします。親子ともに、海中の魚の多さにビックリしていました。

カヤックに3人で乗る(画像提供:水中写真家 三宅健史)
(画像提供:水中写真家 三宅健史)

右半身に麻痺を抱えた参加者も、カヤックに挑戦。

自分でもパドルを持って、海上の移動と潮風を楽しんでもらいました。

(画像提供:水中写真家 三宅健史)
(画像提供:水中写真家 三宅健史)

ドルフィンスイムではイルカショーを間近で楽しんだあと、イルカに触れたり、ジャンプの指示を出したり、貴重な体験ができました。

高校生もサポートに参加

海上保安庁のスタッフが注意事項を説明

今回のイベントは、静岡県立焼津水産高校や多くの協賛企業、団体など、さまざまな人がかかわって開催されました。

焼津水産高校の海洋部ダイビング班からは、生徒12人と教師3人がボランティアスタッフとして参加しました。

焼津水産高等学校 海洋部ダイビング班
左)近藤碧 副部長 右)小林みのり 部長

焼津水産高校 海洋部ダイビング班・小林みのり 部長:
顧問の先生から誘われ参加しました。お客さんをサポートするという体験は、とても新鮮ですごく勉強になりました。参加して本当によかったと思います

焼津水産高校 海洋部ダイビング班・近藤碧 副部長:
いろいろな人をサポートして、楽しんでくれているのを見て、海は本当に誰でも楽しめるんだとわかりました。もっと多くの人に、海で遊んで潜って、海の魅力を知ってほしいです

(画像提供:非営利活動団体 TRY)
廃棄されたルアーに着色してストラップをつくる(画像提供:非営利活動団体 TRY)

海洋部ダイビング班は、海中のルアーを拾って磨き、着色してストラップへアップサイクルするワークショップを行いました。

海の魅力を伝えると同時に、環境保護の大切さも伝えることができました。

協賛している伊東市川奈の「手打ちうどん ゆみうさ」が昼食にうどんを提供

こうした多くのサポーターや協賛企業・団体の協力により、参加者は大きな金銭的負担なしで海を満喫できました。

「みんなで一緒に海あそび」開催のきっかけ

今回「みんなで一緒に海あそび」を伊東で開催しようと思ったきっかけについて、主催するTRY代表の吉野聡さんに聞きました。

左)非営利活動団体 TRY・吉野聡代表

TRY・吉野聡代表:
1人でも多くの人に水中世界を体験してもらいたいと思ったのです。新しいことにチャレンジをするには「きっかけ」や「背中を押してくれる人」が必要です。障がいの有無にかかわらず、だれでも水中世界へ飛び込めるということを知ってもらうための第一歩です

代表の吉野さんは東京都内で、ダイビングショップ「ダイビングハウス トラウムスクーバ」を運営していて、普段から障がいを持った人の予約を受け付けています。

【詳しく見る】ダイビングハウス トラウムスクーバのHPを見る
(画像提供:非営利活動団体 TRY)
体験ダイビング後、同行者へ楽しそうに感想を伝える参加者(画像提供:非営利活動団体 TRY)

障がいを持った人が海あそびをしようと思った場合、特別な機材の準備や多くのサポートが必要なので、通常よりも高額になります。挑戦するにはハードルが高いのが現状です。

吉野さんはイベントを通して、障がいの有無にかかわらず、だれでも海が楽しめるということを知ってもらおうとしています。

そして、障がいがある人も変わらない料金で楽しめるよう、企業や団体の支援を得たいと考えています。障がい者と健常者の間でどうしても生じてしまう差額を寄付や支援などで補える環境を目指すそうです。

次の夏も開催予定

TRYは障がいを持った人に海を体験してもらうイベントを次の夏も開催し、2回目、3回目と続けていく予定です。

参加者スタッフで集合写真(画像提供:非営利活動団体 TRY)
(画像提供:非営利活動団体 TRY)

お客さんからは「家族そろって一緒に遊ぶ機会がなかなかないため、本当にありがたかった」との声をもらったそうです。

TRYの活動を手伝いたい、協賛したいと思った人・企業はぜひ連絡してみてください。

■イベント主催団体 TRY
■住所 東京都武蔵野市中町3-25-5
■問合せ 0422-39-8757

【詳しく見る】TRYのHP

取材/奥村奈央

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伊豆とダイビングが好きすぎて東京から伊豆へ移住。伊豆の魅力を伝えつつ47都道府県のダイビング制覇と世界中の秘境を潜りつくすことを夢見ているさすらいのダイバー!