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偏差値が高ければ幸せになるとは限りません。変化が早い時代、子供がやりたい事を見つけ自分らしく生きられるよう、親は「自分探し」を応援してあげてほしいと教育の専門家は語ります。
テレビ静岡で8月18日に放送されたテレビ寺子屋では、東京大学名誉教授の汐見稔幸さんが、子供が自分らしく生きていくために大切なことを教えてくれました。
偏差値で決まらない人生
東京大学名誉教授・汐見稔幸さん:
日本ではしばらく前まで受験システムががっちりできていて、その中でできるだけ上位を占める、つまり点数偏差値を上げて銘柄の学校に入ったらだいたい幸せになっていくだろうという、ある種のサクセスストーリーがわかりやすい形でありました。
しかし、社会は大きく変わってしまいました。変化がすごく早い時代には、そういう時代にふさわしい生き方をしていかないとうまくいきません。点数偏差値だけで人生を選ぶ時代はそろそろ終わります。
それよりも自分が本当にやりたいことを幼い頃からしっかりと見つけ、そのことにこだわって生活していくと、「将来こんなことをやったら自分らしく生きられるんじゃないか」ということのヒントが自分の中でたくさん得られます。そういう生き方を大事にしていただきたいのです。
新たな仕事がどんどん増える時代
なぜ点数偏差値だけではうまくいかなくなってきたのか。理由の一つは職種がものすごく増えてきたということです。
インターネットや情報関連など、名前を聞いただけではわからないような仕事がどんどん増えて、従来の仕事がなくなってきています。
「○○大学を出た」などではなく、「才覚やアイデアが大事」ということが増えてきます。どうしたら子供たちがたった一度しか生きられない人生を自分らしく生きていってくれるようになるのか? それを考えないといけません。
それを僕は、「子供たちの自分探しを大事にしてあげよう」と言っています。自分が本当にやりたいことって一体何なのだろうか? やりたいことなんて、簡単にはわからないのです。
人間は、赤ちゃんの時にはいろいろやりたいことをやる。でも、それがそのまま仕事になるわけではありません。
社会の中でさまざまな仕事を見て「ああ面白そう」、あるいは「ああいう仕事があるなら僕はこんなことやりたい」などとヒントにしていくわけです。
やりたいことの見つけ方
いろんな面白い生き方をしている人と出会わなければいけません。
「学校の勉強の中身がすごく面白かったからもうちょっとやってみたい」とか、「お母さんお父さんと出かけ、そこで見た風景が忘れられなくてああいうところで生活してみたい」とか、実際にいろんな体験をしていかないと自分がやりたいもの、こだわりたいものを見つけるということはそう簡単ではないのです。
子供たちにこんな面白い世界があるよと、いろんな体験をさせてあげてほしい。そして動き出すときに「自分だったらできるんじゃないか」と、自分に自信をもっていることが大事です。
その自信を育てるために一番良い方法は、子供たちの言うことをしっかりと聞き、豊かな対話をすることです。子供扱いしないで、「面白いことを考えているのね、ママはこう思うけど」などと親子で対等の対話をしていると、自分が認められていると感じ自信が出てきます。
そうやって自信を育てることによって、子供の「自分探し」をいろんな角度から応援してあげてほしいと思います。
汐見稔幸:1947年大阪府生まれ。日本保育学会会長や白梅学園大学学長などを歴任。ぐうたら村村長。専門は教育人間学、保育学、育児学。現代の父親、母親の育児の応援団長をめざしている。
※この記事は8月18日にテレビ静岡で放送された「テレビ寺子屋」をもとにしています。
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