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2024年3月、静岡・伊東市にオープンした絵本カフェが人気です。膨大な量の絵本を残しこの世を去った母。その思いを受け継ぎ、娘夫婦は絵本に囲まれたカフェで得意の洋菓子を提供しています。
【画像】種類豊富なケーキ! ドリンクメニューも この記事のギャラリーページへ亡き母が残した1万冊
店名の「PERi(ペリ)」には英語で「囲む」という意味があって「絵本と、ケーキと、そしてたくさんの人の笑顔に囲まれますように」という店主の願いが込められています。
カフェメニューを楽しみながら、絵本で童心に返るもよし、じっくり名作を読むもよし。
ペットを連れてくつろげる庭の席もあります。
ショーケースには華やかながら素朴さを感じさせるケーキやタルトが。どれもお手頃価格です。
店主は、木村祐太さんと詞子(のりこ)さん夫妻です。
祐太さんは元シェフ、詞子さんは趣味のお菓子作りを生かして、洋菓子店を開きたいと以前から思っていたそうです。
元々、同じ職場の同僚だったふたりが退職して絵本カフェを開きました。
そのきっかけとなったのは詞子さんの亡き母・斎藤克子(よしこ)さんとのお別れでした。
生前は図書館に勤務し、伊東市社会教育指導員でもあった克子さんは、絵本作家を招いて講演会やワークショップを数十回開いていました。
読み聞かせの会や、放課後子供教室の代表を務めるなど、活動は多岐にわたっていたそうです。
それらの内容は、有志によってファイルにまとめられています。
PERi・木村詞子さん:
母はいつか絵本の美術館をつくるのが夢だったんです。2年前に他界した後、実家には母が残した1万冊もの絵本たちが眠ったままになってしまいました。この絵本たちを多くの人に読んでもらいたい、母の夢を少しでも叶えたい、そういう思いもあって絵本カフェを開こうと思ったんです
「せっかく克子さんが紡いだ作家さんたちとのご縁も、途切れさせてはいけない」。
店内にぎっしりと並んだ読み切れないほどの絵本には、娘から母への思いが込められています。
その気持ちは、夫の祐太さんも同じです。
PERi・木村祐太さん:
亡くなる直前に食欲がないお義母さんに「これなら食べられるのでは?」とプリンを作ったんです。お義母さんが「一生のうちで一番おいしいプリンだった」と言っていたと、亡くなった後に看護師さんに知らされて、胸が熱くなりました
このエピソードが「克子さんの思いを受け継いで、絵本カフェをやろう」と考えていたふたりの背中を強く押してくれたと言います。
そのプリンは今も、この絵本カフェでたくさんの人を笑顔にしています。
初めてのDIYで店づくり
いざ絵本カフェをやると決めた後のふたりの行動は早かった!
亡き母も愛した伊東の地に中古物件を見つけると、DIY未経験ながら試行錯誤で家をリフォーム。丸1年かけて今の形になりました。
PERi・木村詞子さん:
大変だったのは解体作業です。真夏の暑い中だったので全身に汗をかき、埃だらけになりながらの作業でした。上手くいかず壁にもぶつかりましたが、少しずつ腕も上がり、夫婦で楽しみながらリフォームができたと思います
DIYの試行錯誤の様子は、インスタグラムで見られます。
さて、内装工事が終わったら、今度は1万冊にも及ぶ蔵書の整理です。
1万冊の中から6000冊を選別しました。
PERi・木村詞子さん:
母が手書きで残してある1冊1冊のデータをPCに入力し直すのですが、これが地道で大変な作業です。絵本の選び方にせよ並べ方にせよ、今となっては母に教えてもらいたいことばかりです
地元の人に喜んでもらえるメニューを
観光客も多く訪れる伊東市ですが、ふたりはむしろ地元客を意識しているとのこと。
PERi・木村詞子さん:
子供がお小遣いで食べに来られるように。そして、地域の方々が毎日でも来たいと思える値段設定にしています
詞子さん自身が甘すぎるお菓子が苦手ということで、ケーキは全体的に甘さ控えめになっています。
定番商品のほか、季節ごとに地元のフルーツを使ったタルトも見逃せません。
取材の日も「また来ちゃった」と笑顔で訪れる常連さんの姿がありました。
テイクアウトやイートインの客がひっきりなしに訪れ、賑わう店内。
絵本は子供のためだけではありません。大人だからこそ童心に返った気持ちでリラックスする時間が必要かもしれません。
そんな時におすすめの絵本カフェです。心優しいオーナー夫婦が、いつでもみなさんを待っています。
■店名 PERi えほんとケーキと
■住所 静岡県伊東市富戸707(スーパーうわみづじ先)
■営業時間 10:00~18:30
■定休 火・隔週水
■問合せ 0557-52-4131
■駐車場 3台
【もっと詳しく見る 】「PERi えほんとケーキと」のインスタグラム
取材/髙良綾乃
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