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静岡県内屈指の温泉地・熱海。かつては「新婚旅行の聖地」として多くの人が訪れ、古くから芸術家や文豪たちにも愛されてきた街です。
そんな熱海を楽しむなら、11月は街歩きにぴったりの季節。色づき始めた木々を眺めながら、歴史ある建築や文学ゆかりの場所、街角に残る彫刻などを巡れば、熱海の知られざる魅力に出会えます。
温泉やグルメだけではない、アートと物語の世界にひたる熱海旅を紹介します。
熱海の街歩きは小説のワンシーンから
熱海市内には、文学作品の舞台や歴史ある建築物、芸術作品などが数多く残されています。
熱海観光局によると、まず訪れたいのが、熱海サンビーチの目の前にある「お宮の松」と「貫一お宮の像」。尾崎紅葉の代表作「金色夜叉」に登場する主人公・貫一と婚約者・宮の別れの場面をモチーフにしたもので、作品を象徴する場所として知られています。

海沿いをさらに歩くと、熱海サンビーチ横のムーンテラスには、熱海市出身の彫刻家・澤田政廣が手がけた「釜鳴屋平七像」があります。
釜鳴屋平七は、200人以上の漁民を率いて韮山の代官所へ直訴した熱海ゆかりの人物。熱海梅園に隣接する澤田政廣記念美術館で作品を鑑賞したあと、こちらまで足を延ばしてみるのもおすすめです。
世界的建築家 ブルーノ・タウトの美意識に触れる
熱海駅から徒歩10分弱の高台にある「旧日向家熱海別邸」も、熱海の街歩きで訪れたいスポットの1つです。
ドイツ出身の世界的な建築家 ブルーノ・タウトが地下室部分の内装を設計した建物で、国内で唯一現存するタウトの建築作品とされています。
見どころは、伝統的な日本の様式美と現代的な建築美が調和した空間。大規模改修によって往時の雰囲気が再現され、洋間客室の赤い絹織物の壁など随所にこだわりを見ることができます。

入館は事前予約制。11月以降は午前9時30分、午後0時30分、午後2時30分からの3シフト制で、館内はガイドの案内を受けながら見学できます。
文豪たちに愛された起雲閣
明治以降、別荘地としても発展してきた熱海。多くの文人がこの街を訪れ、作品を生み出しました。
その歴史を今に伝える代表的な建築が「起雲閣」です。
大正8年に和館が築かれ、その後は旅館として利用された起雲閣は、太宰治、山本有三、谷崎潤一郎など多くの文豪たちに愛されました。

敷地内には、日本の伝統美を取り入れた和館と日本・中国・欧州の装飾や様式が融合した洋館が並び、当時の別荘建築の趣を感じることができます。
喫茶店もあり、緑豊かな庭園も見どころ。建物だけでなく、庭を眺めながらひと休みするのもおすすめです。
【街歩きの合間にはスイーツを!】
「終の棲家」として熱海を選んだ芸術家や文人
熱海には、晩年をこの街で過ごした芸術家や文人たちの足跡も残されています。
鮮やかな紅葉が楽しめる熱海梅園の園内にあるのが「中山晋平記念館」。「シャボン玉」や「ゴンドラの唄」など、数々の名曲を生み出した作曲家・中山晋平が、1944年に熱海へ移住してから亡くなるまで暮らした別荘を移築した建物です。

館内には愛用したピアノや直筆譜面、レコードなどが展示され、中山晋平の創作活動にまつわる資料を見ることができます。
また、古くからの別荘地である西山町には、国文学者・佐佐木信綱の旧居「凌寒荘」があります。
「寒さを凌ぐ」という意味を持つ名前は、友人だった徳富蘇峰が中国の詩の一節から名付けたもの。信綱は1944年、温暖な気候を求めて熱海に居を構え、晩年を過ごしました。

建物内部は公開されていませんが、庭園には万葉集に詠まれた草木が植えられており、文学の世界に思いを馳せながら散策できます。
さらに、明治の文豪・坪内逍遙が晩年の15年間を過ごしたのが「双柿舎」です。
逍遙は熱海でシェイクスピア劇の翻訳や戯曲「名残の星月夜」「義時の最後」などを執筆したほか、熱海市立図書館の設立にも尽力しました。

現在は、逍遙が暮らした書屋と庭園を見学することができます。
歩いて見つける熱海の「レトロアート」
熱海で出会える「アート」は、著名な芸術作品だけではありません。
レトロな建築物やネオンライトの看板、石畳の小道に風情ある坂道——
街を歩いていると、思わず写真に収めたくなるような「絵になる景色」に出会えます。
かつて「糸川花街」と呼ばれた熱海銀座近くの中央町周辺には、当時の面影を残す建物が点在。
その1つが「旧つたや」で、築70年ほどの建物1階にスナックが入る以外は長年空き家となっていましたが、地域の再生プロジェクトによってリノベーションされました。

現在は夜営業の雑貨店「ヨルノアタミ」が入居し、現代アートの展示なども開催されています。
温泉街のにぎわいから離れて石畳の道を歩く
海を望む海光町には、レトロな石畳の道が残されています。
かつては著名人の別荘やスパニッシュ様式の美しいホテルなどが立ち並んでいたエリアで、現在も野村證券・旧大和銀行の創業者として知られる野村徳七の別邸として建てられた「野村塵外荘」など、石畳の街並みに調和した近代建築を見ることができます。

温泉街のにぎわいから少し離れ、石畳をゆっくり歩いてみると、普段の熱海旅行では気づかなかった街の表情が見えてきます。
11月は「歩いて楽しむ熱海」へ
温泉や海、グルメなど、さまざまな魅力が詰まった熱海。
その一方で、文豪や芸術家が残した物語、歴史ある建築、街角の彫刻やレトロな街並みなど、歩いてこそ出会える魅力も数多くあります。

木々が色づき始める11月は、熱海の歴史や文化を感じながら街歩きを楽しむのにぴったりの季節。
次の熱海旅では、観光スポットを目的地にするだけでなく、街そのものを作品のように楽しみながら歩いてみてはいかがでしょうか。
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